懐かしくて新しい“号泣”SFアニメ『ARCO アルコ』はファミリー鑑賞も「大推奨」の超・傑作【見どころ紹介】
手塚も宮崎も飲み込んだ必見の仏アニメ『ARCO アルコ』
フランス産アニメーション映画『ARCO アルコ』が4月24日(金)より全国公開中だ。第98回アカデミー賞の長編アニメーション映画賞にノミネートされた超話題作だが、まるで昭和の子ども番組のようにクラシカルなビジュアルにいまいち食指が動かず……という人もいるかもしれない。
しかし、そのビジュアルを含めた数々の設定が、地域や世代を問わず普遍性を届けるためのものであることが、観はじめてから割とすぐに理解できる。そして手塚治虫、宮崎駿ら日本アニメの巨匠からの影響をビタイチ隠さないあたりに親近感をおぼえつつ、ジブリ作品にも通じる「初めてなのに懐かしい」「いつか見たノスタルジー」をSF視点から新たな形で提供してくれる。
『ARCO/アルコ』©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA
気候変動により荒廃が進んだ2075年の地球。10歳の少女イリスは、ある日、空から虹色の光を放ちながら降ってきた不思議な少年を助ける。その少年アルコは、虹色マントの力によりタイムトラベルが可能になった遥か未来から不時着したのだった。そしてその不思議なマントを手に入れようと、謎の3人組が迫ってくる。イリスとアルコは、追っ手を振り切りながら、元の時代に戻る方法を探す旅に出る。冒険の果て、二人が目撃する衝撃の未来とは――。
『ARCO/アルコ』©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA
SF的背景からキャラクター、音楽までツッコミどころ皆無のクオリティ
主人公の一人であるアルコがまとう全身タイツに虹色マントという強烈コスチュームは、正直まったくノイズにならない。どこか既視感のあるキャラクターを含め登場人物も皆すこぶる魅力的で、シチュエーションをある程度飲み込めるという点でもメリットだらけ。むしろストーリー自体がキャラクターありきで構成されているようにも感じられるほどで、実際それらがSF的な背景ディテールを含め物語全体を効率よく補強している。
『ARCO/アルコ』©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA
観客が主に感情移入するのは“語り部”となるべき少女イリスだが、彼女とアルコを尾け狙うドゥギー、ストゥイー、フランキーの怪しい3人組は、『ラピュタ』で言えばドーラの息子たち、あるいは「タイムボカン」シリーズの三悪のようなドタバタぶりで(※つまり『三ばか大将』)、彼らがバカをやるだけのスピンオフを作ってほしいほど魅力的だ。
『ARCO/アルコ』©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA
そして手塚作品におけるロビタも想起させる家事ロボットのミッキは、仏アニメ界の巨匠ルネ・ラルーの『ガンダーラ』(1987年)に登場するメタルマン、そして同じく仏アニメーターのジェレミー・ペランによる『マーズ・エクスプレス』(2023年)の黒い暴走ロボットとも重複する。ミッキは終盤で観客の涙をむしり取る重要キャラでもあるのだが、“ロボ泣き”とか言っていられないくらいの超号泣シーンなのでハンカチ必携である。
『ARCO/アルコ』©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA
また、アルノー・トゥーロンによる劇伴も“久石譲み”が強く、流れるたびに胸がギュッと詰まるような、ジブリ作品の記憶が蘇ってくるオーケストラルな名曲揃い。同時に現代的なアンビエント曲が緩急の隙間をみっちりと埋めていて、かたやノーベンバー・ウルトラをフィーチャーしたエンディング曲「Clouds Away」は60~70年代の既成曲かと聴き紛う名曲だったりと、音楽面でも抜かりない。
ファミリー鑑賞OK! 堕ち込んだ世界をやさしい光で照らす普遍的傑作
アカデミー賞ノミネートだけでなく、アヌシー最高賞、アニー賞、ヨーロッパ映画賞、セザール賞ほか名だたる映画賞を席巻した本作。過去の欧州アニメと同じく日本の観客だからこそ秒で理解できるであろう設定も散りばめられていて、もちろんポール・グリモーら先達の影響もふんだんに感じさせる、言ってしまえば「観なけりゃ損」な作品である。
『ARCO/アルコ』©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA
そしてウーゴ・ビアンヴニュ監督自身がインスピレーション源として『E.T.』、『ピーター・パン』、『となりのトトロ』、『天空の城ラピュタ』を挙げるとおり、完全なファミリー対応作品であることも劇場鑑賞への後押しとなるだろう(※製作面については「東京アニメアワードフェスティバル」公式による監督インタビューを見れば理解がより深まる)。
『ARCO/アルコ』©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA
深刻な環境汚染が背景にあることをサラリと語らせたり、逆に“悪い人間”が出てこないあたりは、深い闇に堕ちた世界への抵抗というか、せめてもの希望をというセラピーのようにも受け取れる。思わず某ノーラン監督の某SF映画が頭をよぎる衝撃の展開は最後の最後でびっくり仰天かつ涙腺が決壊するレベルなので、盛大に期待しつつ劇場に足を運んでほしい。
『ARCO/アルコ』©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA
『ARCO アルコ』は4月24日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中