『この世界の片隅に』8/3にNHKで放送 優しく強く生きるすずが、日本人の心をわしづかみした異例のロングラン作品

  • Facebook
  • Twitter
  • LINE
ライター:BANGER!!! 編集部
『この世界の片隅に』8/3にNHKで放送 優しく強く生きるすずが、日本人の心をわしづかみした異例のロングラン作品
『この世界の片隅に』ⓒ こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

 

ミニシアター系作品として小規模公開されながら、約3年がたった今も異例のロングラン上映を続けている『この世界の片隅に』(2016年)。こうの史代による同名漫画を『マイマイ新子と千年の魔法』(2009年)などで知られる片渕須直がアニメーション化し、多くの映画賞を受賞した傑作が、2019年8月3日(土)NHK総合にて地上波初放送される!

狂っていく世界で「普通に生きる」ことの尊さ

物語の舞台は第二次世界大戦下の広島。天真爛漫で絵を描くことが大好きなおっとりとした少女、浦野すず(声:のん)は18歳で生まれ育った広島市を離れ、自分を見初めた優しい夫、北條周作(声:細谷佳正)が暮らす軍港の街・呉へ嫁ぐことに。見知らぬ街での新生活ながら夫の両親は温かく、嫁ぎ先から戻った義姉は時々厳しいけれど、かわいらしい姪との交流に癒されていく。すずは持ち前の明るさと少し天然な性格で周囲を巻き込み、笑顔あふれる日々を紡いでいくが……。

『この世界の片隅に』ⓒ こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

戦時が舞台の作品だが、物語の中心はその時代を生きる人々の姿。戦争は日常生活に暗い影を落としているものの、配給食糧が少なくなると裏技を使いつつ食卓を整え、皆たくましくしなやかに生きている。多少遠くても安いスーパーに出かけ、節約レシピを駆使してやりくりする現代の家庭にも通じる光景だ。教科書や資料集で見るような切り取られた一部分ではなく、その時代に暮らしていた人々の息づかいをリアルに感じさせてくれるところが、多くの人々に受け入れられた所以だろう。干していた洗濯物が空襲で巻き上がった灰で汚れてしまい、再び洗わなければならないと漏らすため息など、現代人にも共感できるシーンが多い。

『この世界の片隅に』ⓒ こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

徐々に狂っていく世界の中で、普通の人々が普通に生活し、私たちと同じように当たり前のことで怒り、笑い、涙する。微笑ましい日常の描写がこのまま続けばいいのにと願ってしまうが、それが許されないことも私たちは知っている。そして昭和20年(1945年)、呉は大規模な空襲に何度も襲われ、あの“8月6日”がやってくる。

打ち切られども屈せず! 監督のアツい想いに触れたファンの署名活動でリバイバル上映も

本作のヒットまでその名前が大きく取り上げられることはなかった片渕監督だが、『魔女の宅急便』(1989年)で演出補佐を務め、以降も数々のテレビアニメの監督を担当した業界を代表する人物。制作費をまかなうため、時には自身の貯金を切り崩してでも作品を作り上げるなど、非常にアツい魂を持った監督でもある。

『この世界の片隅に』ⓒ こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

丁寧に描かれたノスタルジックで美しい背景を舞台に、登場人物たちが生き生きと躍動する片渕監督の作風には熱心なファンも多い。昭和30年代の山口県に暮らす少女を描いた『マイマイ新子と千年の魔法』は観客動員数の低迷により早々に劇場公開が打ち切られてしまったが、ファンの署名活動などによってリバイバル上映が実現し、その後2年以上にわたって日本各地で上映会が行われるまでになった。監督自身も各地の上映会に参加してファンとの交流を深めており、その地道な活動スタイルが『この世界の片隅に』の完成に貢献した部分が大きいだろう。

『この世界の片隅に』
Blu-ray&DVD 発売中
発売・販売元:バンダイナムコアーツ
ⓒ こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

実際『マイマイ新子~』リバイバル上映時の舞台挨拶に登壇した片渕監督自身が「次回作が資金難」と明かしていたが、その後クラウドファンディングなどで資金を集め、多くのアニメ/映画ファンの協力によって完成にたどり着いたのが『この世界の片隅に』である。このたびの地上波放送によって、さらに多くの人の目に触れることを喜ばしく思う。

『この世界の片隅に』ⓒ こうの史代・双葉社 / 「この世界の片隅に」製作委員会

戦後70年以上が経過した今、戦時中の映画というだけで「自分には関係のない映画」と思う人も少なくないだろう。しかし、当然ながら戦争は教科書や小説の中だけの出来事ではない。本作で描かれているように、市井の人々が実際に体験してきたことなのだ。登場人物の中にも、私たちの家族や親戚がいたことだろう。目を覆いたくなるような惨劇や理不尽さを乗り越え、再び立ち上がった人々。その並々ならぬ苦労と努力の果てに今を生きる私たちがある、そのことを改めて噛みしめる機会になればと願う。

映画『この世界の片隅に』は2019年8月3日(土)NHK総合にて放送

2019年12月20日(金)には、映画『この世界の片隅に』に原作の魅力的なエピソードを描き出した新作、映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』 が全国公開となる。

『この世界の片隅に』

昭和19年、広島県呉に嫁いだすずは、夫・周作とその家族に囲まれて新たな生活を始める。戦況が悪化し生活が困難を極める中、軍港のあった呉は大規模な空襲に見舞われる。その日から空襲はたび重なり、すずも大切なものを失ってしまう。そして昭和20年の夏がやってくる。

制作年: 2016
監督:
声の出演:
  • BANGER!!!
  • 映画
  • 祝・ゴジラ65周年! 限定グッズがもらえる「ゴジラ検定」応募締切せまる!!