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掲載日:2026年10月10日(2026年10月10日時点の情報)文=BANGER!!!編集部
※本記事の情報は2026年10月10日時点の情報です。最新情報は公式サイトにてご確認ください。
溺愛ものだと聞いて身構えた人に、先に言っておく。『ホタルの嫁入り』で最初に相手を選ぶのは、女のほうだ。それも、自分を殺しに来た男を。
TVアニメ『ホタルの嫁入り』は、フジテレビ系“ノイタミナ”で10月9日(金)23時30分に放送が始まった。U-NEXTでは10月10日(土)0時に第1話が見放題で配信され、以降は毎週土曜0時に更新される。3連休の初日、日付が変わったところに第1話が届いたことになる。初回登録の人は31日間の無料トライアルで観られる。
取引として始まる結婚
舞台は明治時代。桐ヶ谷紗都子は名家の令嬢で、良家に嫁いで父の誇りになることを夢見ている。そして、余命はわずかだと告げられている。彼女にとって結婚は、残された時間でやり遂げるべき仕事に近い。
その紗都子が命を狙われる。目の前に現れた殺し屋が、後藤進平だ。追い詰められた彼女は、泣いて命乞いをする代わりに結婚を持ちかける。生き延びるための取引として。
橘オレコの原作漫画(小学館「マンガワン」)でまず掴まれるのは、この出だしだと思う。誰かが助けに来るのを待たない。いちばん危険な相手を、自分の頭で味方に変えようとする。令嬢の気位と、死を数えている人間の腹の据わり方が、一つの決断に同時に出ている。
困るのは、進平がその申し出を本気で受け取ってしまうことだ。契約のつもりの紗都子と、契約では済まなくなる進平。公式が彼を「紗都子を溺愛する殺し屋」と紹介しているとおり、この男の愛情は量も向きも普通ではない。原作は累計500万部を超え、「電子コミック大賞2024」で大賞を獲った。それだけ読まれた理由は、甘さよりも、この釣り合わなさが生む緊張にあると私は考えている。
明治という時代の選び方も効いている。家の格と縁組が人の一生を左右し、娘の値打ちが嫁ぎ先で測られた時代だ。紗都子が「父の誇りになる」ことを夢と呼ぶのは、その物差しの中で育ったからで、彼女の気位はそのまま檻でもある。そこへ、家も身分も関係のない世界の男が入ってくる。恋の話であると同時に、令嬢が自分の物差しを作り直していく話として、私は原作を読んでいる。
david productionと、声の布陣
アニメーション制作はdavid production。『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズを長く手がけ、『はたらく細胞』や2022年版の『うる星やつら』も作ってきたスタジオだ。癖の強い原作の絵を、薄めずに動かすことで信用を積んできた。橘オレコの絵は、着物の柄や瞳の光に独特の湿り気がある。あれをアニメの線に置き換える仕事の預け先として、納得のいく名前だ。『ジョジョ』で磨いた、止めた一枚で人物の気迫を伝える画づくりが、紗都子の啖呵に生きれば面白い。
監督は亀井隆広、シリーズ構成と脚本は柿原優子、キャラクターデザインは愛敬由紀子。柿原優子はこの秋、『アオのハコ Season2』でもシリーズ構成・脚本を務め、『薬屋のひとりごと』第3期にも脚本で参加している。人と人の距離を会話で運ぶ作品を続けて任されている書き手で、紗都子と進平の噛み合わないやりとりをどう組むのか、期待している。
声は、紗都子にLynn、進平に内山昂輝。小川康太郎に伊東健人、三枝に津田健次郎。内山昂輝の声には、温度の低いところから急に熱を帯びる瞬間がある。穏やかに話しているのに、次の一言で何をするかわからない。進平という役に要るのはその不穏さで、配役を知ったとき膝を打った。オープニングはiriの「Period」、エンディングはTOOBOEの「夢心地」。
合わない人には、はっきり合わない
正直に書く。この記事の時点で、配信されているのは第1話だけだ。アニメとしての出来を、私はまだ請け合えない。ここまで書いた期待は、原作と、公式が明かした布陣から組み立てたものになる。
そのうえで、向かない人がいる。進平の執着を「怖い」と感じたら、その感覚はたぶん最後まで消えない。相手を想うあまり行動が度を越す男を、物語の中であっても受け入れにくい人には勧めない。彼は殺し屋で、その手は汚れている。そこを恋の飾りとして流さず、引っかかりとして抱えたまま観られるかどうか。分かれ目はそこだと思う。
余命という設定も、軽い気持ちで触れるには重い。ただ、私が原作を推す理由もそこにある。紗都子は残り時間が少ないから、迷っている暇がない。決断が早く、言葉がまっすぐだ。死が近いことが、彼女を弱くするより先に、速くしている。守られるヒロインの話だと思って開くと、いい意味で当てが外れる。
連休初日の0時に届く
原作を読んできた人には、説明はいらないだろう。紗都子が最初に口を開く瞬間を、Lynnの声で確かめる週末だ。
明治ものや和装の恋愛劇が好きな人にも勧めたい。それから、ノイタミナという枠を信頼してきた人。『ハチミツとクローバー』から20年あまり、この枠は恋愛を少し苦い側から描く作品を何本も送り出してきた。『ホタルの嫁入り』がそこに並ぶのは、自然な流れに見える。
秋アニメを何本追うか決めかねている人にも、この連休は向いている。新番組の第1話が出揃う時期で、試すにはいちばんいい。『ホタルの嫁入り』は10日の0時に第1話、次は17日(土)の0時。連休中に1話を観て、合うかどうかを自分で決められる。金曜の深夜にテレビで観た人も、確かめたい場面があれば土曜の0時から見返せる。その先は毎週土曜の0時に1本ずつ、という付き合いになる。
U-NEXTでは見放題の対象で、月額は2,189円(税込)。初回登録の人は31日間の無料トライアルが使え、期間内に解約すれば料金は発生しない。連休に登録すれば、トライアルのあいだに土曜が何度か巡ってくる。序盤の数話まで追ってから、続けるかどうかを判断すればいい。
蛍の光は、短いから目で追ってしまう。紗都子という人も、たぶんそういうふうに描かれる。
※本記事は2026年10月10日時点の情報です。配信状況・料金・配信期間は変更される場合があります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。