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掲載日:2026年10月8日(2026年10月8日時点の情報)文=BANGER!!!編集部
※本記事の情報は2026年10月8日時点の情報です。最新情報は公式サイトにてご確認ください。
時代劇のメロドラマは、戦が終われば恋人たちが再会して幕になる。『恋人~あの日聞いた花の咲く音~』は、その約束を守らない。
2023年に韓国MBCで放送され、その年のMBC演技大賞で8冠を獲った。主演はナムグン・ミンとアン・ウンジン。舞台は1636年、丙子の乱に呑まれていく朝鮮だ。U-NEXTの独占配信で、見放題の対象になっている。テレビ大阪でも10月7日(水)の朝8時から放送が始まった。地上波の進み方に合わせて待つか、配信で先へ行くか。3連休は後者を選ぶのに都合がいい。初回登録の人は31日間の無料トライアルで観られる。
ナムグン・ミンが軽口の裏に隠したもの
イ・ジャンヒョンという男は、最初、どうにも信用できない顔で現れる。どこから来たのか誰も知らない。金回りがよく、口が達者で、結婚はしないと公言してはばからない。一方のユ・ギルチェは両班の娘で、村の男たちの視線を集めることに慣れきっている。その彼女が、初めて思いどおりにならない相手に出会う。
ここまでなら軽い恋の駆け引きだ。実際、序盤の調子は明るい。ところが清の軍勢が国境を越えたあたりから、ジャンヒョンの軽口の意味が変わっていく。真っ先に逃げそうに見えた男が、危ないほうへ歩いていく。なぜそうするのかを、彼は説明しない。
ナムグン・ミンは『ストーブリーグ』『黒い太陽』『千ウォンの弁護士』と、現代劇で主演作を当て続けてきた俳優だ。腹の底を見せない男をやらせると、この人は強い。『恋人』ではその持ち味が、時代劇の衣装をまとってさらに効いている。冗談を言う口元と、冗談を言っていない目。その落差だけで一場面が持つ。彼はこの役で2023年のMBC演技大賞の大賞を受けた。8冠という数字の真ん中に、この演技がある。
守られる娘のままでは終わらないギルチェ
このドラマを人に勧めるとき、私がいちばん時間を使うのはアン・ウンジンの話だ。
ギルチェは登場したとき、正直に言って好きになりにくい。わがままで、自分の可愛さを知っていて、片思いの相手しか見えていない。けれど戦で家も暮らしも失ったところから、彼女は自分の手で稼ぎ、周りの人間を食べさせる側に回っていく。恋を夢見ていた娘が、生活を背負う人になる。『賢い医師生活』で彼女を覚えた人は、同じ俳優かと驚くと思う。
二人の関係を見ていると、私には『風と共に去りぬ』が重なる。戦争に暮らしを奪われる勝ち気な娘と、世間の外側に立つ皮肉屋の男。ただ『恋人』は、その構図を朝鮮の歴史の中でもとりわけ苦い時期に置いた。そこが効いている。
丙子の乱の「あと」まで行く
史実を少しだけ書く。1636年の冬、清の皇帝ホンタイジが自ら軍を率いて朝鮮に攻め込んだ。国王の仁祖は南漢山城に籠もるが、年が明けて降伏し、三田渡で清の皇帝に頭を下げる。世子は人質として瀋陽へ送られ、おびただしい数の民が捕虜として連れ去られた。
この降伏を悲劇の頂点に置く時代劇は多い。『恋人』が踏み込むのはその先だ。連れ去られた人々はどうなったのか。金を積んで買い戻されるのを待つ者がいて、逃げて捕まる者がいる。そして、やっとの思いで故郷に戻った女たちを、故郷はどう迎えたのか。朝鮮の歴史には「還郷女」という言葉が残っている。清から帰った女性たちが貞節を疑われ、家から退けられた。その冷たさを、このドラマは恋物語の真ん中に持ち込む。
だからジャンヒョンとギルチェのすれ違いは、ただの行き違いに見えない。二人を引き離しているのは、戦に負けた国が弱い者に押しつけた理不尽そのものだ。メロドラマの形を借りて、歴史の後始末を描いている。私はそう読んだ。
題名の「恋人」という言葉も、観ていくうちに重さが変わる。序盤では娘たちが夢見る甘い響きだったものが、戦をくぐるうちに、生きていてくれればそれでいいと願う相手を指す言葉になっていく。
長い。そして序盤は軽い
勧めにくい点も書いておく。
長丁場だ。韓国では前半と後半に分けて放送されたほどで、3連休を丸ごと使っても最後までは届かないだろう。序盤の数話は村の恋のさや当てが続くので、戦記ものを期待した人は調子が狂うかもしれない。逆に、明るい恋愛劇のつもりで観始めた人には、中盤以降の捕虜の描写がこたえる。すれ違いの長さに苛立つ人もいると思う。何度も「いま言え」と画面に向かって言いたくなる。合戦の迫力を目当てにする人にも、少し違うと言っておく。カメラが長く留まるのは戦場より、逃げる民の側だ。
それでも私は、この長さに意味があると考えている。ギルチェが変わるのに時間がかかり、ジャンヒョンが本心を口にするのにはもっと時間がかかる。その遅さに付き合うから、再会の一場面の重みが違ってくる。短くまとめていたら、よくできた悲恋の一本で終わっていたはずだ。
連休で、戦が村に届くところまで
ナムグン・ミンを現代劇でしか知らない人に、まず勧めたい。時代劇の彼が何を見せたのかを確かめてほしい。恋愛ものは好きだが、甘いだけでは物足りない人にも合う。歴史の教科書で「丙子胡乱」の四文字を素通りした人にも向いている。年号の向こうに、帰れなかった人と、帰っても居場所のなかった人がいた。そのことが物語として体に入ってくる。
テレビ大阪の放送で第1話に触れ、続きが気になった人には、この連休がちょうどいい。地上波は始まったばかりだが、U-NEXTなら自分の速度で先へ進める。3日間あれば、序盤の明るい日々が終わり、戦が村に届くあたりまでは行けると思う。そこまで観たら、残りを観ずに済ませるのは難しくなる。
U-NEXTの月額は2,189円(税込)。初回登録の人は31日間の無料トライアルが使え、期間内に解約すれば料金は発生しない。連休で入口を越え、残りは平日の夜に少しずつ。長い物語には、そのくらいの付き合い方が合っている。
花の咲く音など、聞こえるはずがない。それを聞いたという題を持つ恋の話に、秋の夜を何日か渡してみてほしい。
※本記事は2026年10月8日時点の情報です。配信状況・料金・配信期間は変更される場合があります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。