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“パンクな怪物花嫁”はなぜ生まれた?ギレンホール監督とジェシー・バックリーが明かす『ザ・ブライド』制作秘話

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ライター:#佐藤久理子
“パンクな怪物花嫁”はなぜ生まれた?ギレンホール監督とジェシー・バックリーが明かす『ザ・ブライド』制作秘話
撮影メイキング ©Niko Tavernise
『ザ・ブライド!』©2026 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

マギー・ギレンホール監督×ジェシー・バックリー
映画『ザ・ブライド!』インタビュー

フランケンシュタイン博士が蘇らせた怪物は有名だが、“怪物の花嫁”とはいったいどんな存在だったのか。それを描いたのが、アカデミー賞3部門にノミネートされた『ロスト・ドーター』(2021年)で長編監督デビューを果たした俳優マギー・ギレンホールの新作『ザ・ブライド!』だ。

『ザ・ブライド!』Ⓒ2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

1930年代のアメリカを舞台に花嫁ブライド(ジェシー・バックリー)の視点から描いた本作は、怪物(クリスチャン・ベール)と彼女の激情的なラブストーリーと、フェミニスト的なテーマが融合したユニークな作品。パンクで破壊的なスタイルと音楽はエネルギーに満ちあふれ、なによりバックリーの終始電流が振り切れたような圧倒的な演技に瞠目させられる。

『ロスト・ドーター』から始まったギレンホール監督とバックリーの、「長く続く愛の始まり」(バックリー)のようなコラボレーションについて、ふたりにその思いの丈を語ってもらった。

メイキング写真
『ザ・ブライド!』Ⓒ2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

「崖っぷちから飛び降りるようなスリルがあった」

――もともとは『フランケンシュタインの花嫁』(1935年)からインスパイアされたとのことですが、どのようにしてこの独創的でエネルギッシュな作品が生まれたのか教えてください。

マギー・ギレンホール(以下M):エルザ・ランチェスターが演じたオリジナル版を観て驚いたのが、彼女はたったの2分ぐらいしか出てこなかったことなんです。セリフも一言もなかった。それで、彼女はいったいどんなことを考え、どんなことを感じたのだろうと興味を持ったのが始まりです。物事を彼女の視点から見たらどうなるだろうと。だって彼女は勝手に蘇らされて、会ったこともない相手の妻になるというとんでもない状況に置かれるわけですから。それを考え始めたらすっかりハマってしまったんです。

『ザ・ブライド!』Ⓒ2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

ジェシー・バックリー(以下J):これまで喋る機会のなかった者に自己表現する機会を与えるのは素晴らしいことだと思いました。1935年のジェイムズ・ホエール監督のバージョンでさえすでにインパクトがあったのに、今度は彼女を真の主役に据える。それは崖っぷちから飛び降りるようなスリルがあったし、そこに多くの可能性を感じてわくわくしました。

でもわたしたちが伝えようとしていたことは、むしろ言葉にできない曖昧な部分だったと思います。つまり彼女は自分自身を定義するはっきりとしたものがあるわけではなく、疑問だらけで蘇るわけです。彼女の探究はわたしたちに生き残ることについて語りかける。マギーとわたしにとって興味深かったのは、彼女の問いかけでした。「わたしはどこにいるの? この世界は何? 愛って何? 結婚って何? この世界に対して、わたしは何を言うべきなの?」と。

M:わたしは、人間誰しもが心のなかに、時に恐ろしいと感じるようなものを持っていると思います。それは許されないと言われているもの、あるいは許されているはずなのに、やがて恐ろしく感じられ、排除しなければならないと思えるもの。この映画は実際、わたしたちひとりひとりの型にはまらない、けれど型に収めるべきだと教えられてきた、あらゆる面を称える作品なのです。

『ザ・ブライド!』©2026 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

「ソニック・ユースとニューヨーク・フィルハーモニーのメンバーに演奏してもらった」

――(ギレンホールへ)あなた自身、俳優でもいらっしゃいますが、あなたにとってジェシーはどのような俳優ですか。

M:わたしがつねづね思っていることは、優れた俳優は沢山いるけれど、本当に輝いている俳優はほんの一握りしかいないということ。それは自分自身、俳優活動をしてきて痛感していました。たとえうまくできた作品でも、演技が下手な俳優の作品は個人的に耐えられません。わたしにとって演技はとても大切なものなんです。

そしてアーティストとして、これらの役を演じることで自分自身について、人間について深く考えてくれる人が必要でした。わたしと一緒に何かを学んでくれるような俳優たちと仕事がしたかったんです。ジェシーはわたしにとって間違いなくそんな存在です。

『ザ・ブライド!』Ⓒ2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

――音楽もよくある紋切り型ではなく、とても独創的でした。音楽のコンセプトについて教えてください。

M:この映画を作るのに4年かかりました。音楽は自分自身で選びましたが、映画の全体像が出来上がるまでは、どんな音楽にすべきかわからなかった。それは制作の過程を通してずっと試行錯誤していました。

わたしはティム・バートンの映画が好きですが、これはバートンの映画ではないし、みんながすでに知っているジャンルに収まるような音楽にはしたくありませんでした。それでヒドゥル・グドナドッティルに頼みました。またソニック・ユースのメンバー(リー・ラナルドとスティーヴ・シェリー)と、ニューヨーク・フィルハーモニーのメンバーに演奏してもらい、音楽的にまったく新しいものができたと思います。ザ・ナイフのメンバーであるフィーバー・レイ(カリン・ドレイヤー)も参加してくれましたし、彼女は映画に出演もしています。

「マギーはわたしのマーティン・スコセッシなんです(笑)」

――本作と『ハムネット』と、2025年はあなたにとってまったく異なるタイプの素晴らしい作品が並びました。あまりに作風が異なるゆえに、気持ちの切り替えが難しいように感じられますが、いかがでしたか。

J:じつは『ハムネット』より、撮影は『ザ・ブライド!』のほうが先だったんです。しかも『ハムネット』を終えてから2週間しかインターバルがありませんでした。でも、ふたりのヒロインはわたしにとって共通点があり、どちらも独自の言葉を持ち、深く自己を表現することができ、情熱的に愛する準備ができていることでした。それは彼女たち自身のやり方で、真の愛だと思います。

たとえば『ハムネット』でアグネスが、ウィリアム(・シェイクスピア)が家族を置いて旅立つのを許したのは、まさに彼女が確固たる愛を持っていたからだと思います。また『ザ・ブライド!』でわたしが探究した愛は、まるで心が大きく開かれるような感覚がありました。電流が体を駆け巡っているような。彼女たちはまさにわたしのなかに芽生え、根を張ったんです。それは本当に信じられないような経験で、素晴らしいギフトでした。わたしは彼女たちを決して手放さないようにしようと思っています。

『ザ・ブライド!』Ⓒ2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

――『ロスト・ドーター」』から『ザ・ブライド!』と、あなた方おふたりのコラボレーションが続いたわけですが、おふたりはお互いにとってどんな存在だと思いますか。

J:こういう関係は本当に稀で、かけがえのないものだと思います。『ロスト・ドーター』でマギーと出会ったとき、わたしたちの心と魂が通じ合ったような気がしました。まるでお互いに言葉を交わしているようでした。それがどんなものなのか、うまく言葉で説明できないのですが。

たとえば誰かがあなたの目を見つめて、「わたしはあなたを見ている。まだ知らないかもしれない場所へ、思い切って足を踏み入れよう。わたしがあなたを導いてあげる」と言ってくれるような感覚なんです。『ロスト・ドーター』はその始まりに過ぎませんでした。

こうして再びタッグを組んで、さらに深く、さらに大胆にお互いの想像力を駆使して、その心の強さを感じながら自由に手足を伸ばし合うことができるなんて、本当に素晴らしいことです。これはわたしたちにとって長く続く愛の始まりだと、私は確信していますし、そう願っています。彼女はわたしのマーティン・スコセッシなんです(笑)。

メイキング写真
『ザ・ブライド!』Ⓒ2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

M:たしかにこれほどお互いに理解し合い、エネルギーを注ぎ合える関係は稀だと思います。もちろん、わたしにとってもとても貴重な経験でした。じつはこの脚本を書いていたとき、できるだけ特定の俳優を念頭に置かないように心がけたんです。でもジェシーのことはずっと頭にありました。

彼女がどう演じるのか想像もつきませんでした。そもそも誰がどう演じるべきか、明確なイメージは最初からなかったんです。ジェシーも、「初めて脚本を読んだとき、どう演じたらいいのかまったくわからなかった」と言っていました。でも彼女とは、お互いの手を取り合って一緒に旅に出て、「さあ、この旅の終わりにわたしたちはどんな人間になっているだろう?」と問いかける感じでした。結果的に映画は、旅の始まりの頃とはまったく違う姿になりました。

『ザ・ブライド!』Ⓒ2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

「ゴージャスで怪物的で美しいものを作り出そう」

――最後に、ぜひブライドのメークについてお訊きしたいと思います。美しいだけではなく、パンクで強烈な印象を残すものなので。あれはどのようなところから思いつかれたのでしょうか。

M:私たちは物語に突き動かされ、この女性の現実に突き動かされ、さらにまたゴージャスで怪物的で美しいものを作り出そうとしていました。顔の黒い模様のメークですが、脚本では彼女の血管に黒い、正体不明のインクのようなものが流れ込んでいて、フランクが彼女に話しかけるたびに彼女は咳き込み、それを吐き出さなければならなかった。最初に映画からインスピレーションを得たときに、そのアイディアがとても気に入ったんです。それでジェシーの顔に、とても美しく見えるように描きました。

『ザ・ブライド!』Ⓒ2026 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.

またこの黒いマークは、原作者のメアリー・シェリーがフランケンシュタインを書いたインクに似ているとも思いました。メアリーがブライドを蘇らせたとき、インクは彼女の腕を伝って流れ落ち、ブライドに跡を残し表情を作り出した感じがしたんです。このふたりの女性は一種の融合状態にあると思えました。

さらにインクがブライドの胸を染めていたり、彼女の髪全体が白く漂白されていたりするのも、とても美しいと思った。最終的にもしそれが美しいと思えなければ、そんな選択はしなかったでしょう。まるでグラフィックノベルに出てくるような雰囲気であると同時に、どこか人間味あふれるものが感じられて、まさにブライドとはこれだ、と思えたんです。

取材・文:佐藤久理子

『ザ・ブライド!』2026年4月3日(金)全国ロードショー

配給:東和ピクチャーズ・東宝

©2026 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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『ザ・ブライド!』

1930年代シカゴ。永い孤独に耐えかねたフランケンシュタインから伴侶を創ってほしいと頼まれたユーフォロニウス博士は、墓から掘り起こした女性の遺体を彼の花嫁《ブライド》としてよみがえらせる。とある事件をきっかけに二人は追われる身となるが、不条理で腐った世界への怒りをぶち撒けるブライドの姿は、やがて抑圧された人々を奮い立たせ、社会全体を揺るがしていく。果たして、愛と破壊の限りを尽くす逃避行《ハネムーン》の先に二人を待ち受ける運命とは――。

監督:マギー・ギレンホール(『ロスト・ドーター』)

出演:ジェシー・バックリー(『MEN 同じ顔の男たち』、『ウーマン・トーキング 私たちの選択』、『ロスト・ドーター』、『ハムネット』)、
クリスチャン・ベール(『ダークナイト』、『ザ・ファイター』、『バイス』、『フォードvsフェラーリ』)、ピーター・サースガード(『ニュースの天才』、『マグニフィセント・セブン』、『あの歌を憶えている』、『セプテンバー5』)、
アネット・ベニング(『アメリカン・ビューティー』、『華麗なる恋の舞台で』、『キッズ・オールライト』、『ナイアド その決意は海を越える』)、
ジェイク・ギレンホール(『ブロークバック・マウンテン』、『ラブ&ドラッグ』、『ナイトクローラー』、『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』)、
ペネロペ・クルス(『ボルベール〈帰郷〉』、『それでも恋するバルセロナ』、『NINE』、『パラレル・マザーズ』)

制作年: 2026