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数万人の女性たちの人生を奪った「マグダレン洗濯所」とは何だったのか?世界が絶賛した『決断するとき』の背景を知る

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ライター:#BANGER!!! 編集部
数万人の女性たちの人生を奪った「マグダレン洗濯所」とは何だったのか?世界が絶賛した『決断するとき』の背景を知る
『決断するとき』© 2024 ARTISTS EQUITY. ALL RIGHTS RESERVED.
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静かな傑作『決断するとき』を観るべき理由

あのキリアン・マーフィーが、アカデミー賞主演男優賞を受賞した大作『オッペンハイマー』に続く挑戦として自ら映画化を熱望した『決断するとき』が、3月20日(金)より全国順次公開中だ。

舞台は1985年、アイルランドの小さな町。石炭商として生計を立て、家族と慎ましく暮らすビル(キリアン・マーフィー)は、クリスマスが近づくある日、石炭を届けに訪れた地元の修道院で、目を背けたくなる現実を目撃する。そこに身を置く少女から「ここから出してほしい」と懇願され、若い女性たちが行き場もなく苦しんでいる現実と向き合うことに。見て見ぬふりをすることが賢明だと理解しながらも、良心の呵責に悩むビル。そんな彼が、ついに下す決断とは――。

『決断するとき』© 2024 ARTISTS EQUITY. ALL RIGHTS RESERVED.

本作は、アイルランドの作家クレア・キーガンのベストセラー小説「ほんのささやかなこと」(鴻巣友季子 訳/早川書房 刊)を原作に、「マグダレン洗濯所」という実在した人権問題を背景に描いた静かな人間ドラマ。あのロッテン・トマトで批評家スコア94%・観客スコア81%という驚異的な高評価を得ており、さらにロジャー・イーバートで4点満点、英ガーディアン紙でも4つ星を獲得と、控えめに言っても“世界が絶賛”している必見作だ。

『決断するとき』© 2024 ARTISTS EQUITY. ALL RIGHTS RESERVED.

誰もが目を背ける修道院……何が行われていたのか?

80年代とは思えないほど古めかしく、寒々として薄暗いアイルランドの田舎町。いかにも陰鬱な空気が漂っていて、主演のキリアンのセリフも最小限だし、これからどんな酷いことが起こるのかと思わず身構えてしまう。寡黙で勤勉な主人公が、何らかのきっかけで“爆発”してしまうのではないか……と。しかし本作は、そんな観客の想像を色んな意味で裏切ってくる。

『決断するとき』© 2024 ARTISTS EQUITY. ALL RIGHTS RESERVED.

キリアン演じるビルは妻も子もいるが、どうやら過去に何らかのトラウマを抱えている様子。彼の幼少期と現在が交互に描かれ、静かな会話が続く序盤から、キリアンの名演もあって不思議なほど惹き込まれてしまう。うっすらと貧しさを感じていた幼少期と、母の記憶。なんとか軌道に乗ってきた仕事、まだ幼い娘たちの未来、妻の意味深な言葉。そして冒頭からチラリと示されていた“違和感”が、物語中盤からじわじわと静かにつながっていく。

『決断するとき』© 2024 ARTISTS EQUITY. ALL RIGHTS RESERVED.

本作の静かだが極めて衝撃的な結末は、暗転したスクリーンの前で硬直してしまうほどだ。では、そんな物語の背景になっているマグダレン洗濯所とは、実際どのような場所だったのだろうか。映画の時代設定はそれほど遠い過去ではないが、この洗濯所の歴史はさらに深く、長く、暗い。以下におおまかな実態をまとめたので、本作の鑑賞の一助になれば幸いだ。

『決断するとき』© 2024 ARTISTS EQUITY. ALL RIGHTS RESERVED.

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