新世代オルタナ濃度MAXのエモ・ダーク・バイオレンス『ザ・クロウ』 復活した伝説的カルト映画の注目ポイント
いまだ根強いファンの多い伝説的カルト映画の正統リブート作『ザ・クロウ』が3月6日(金)より全国公開中。30年の時を経て蘇った本作は、2020年代のトレンドを踏まえたエモ・バイオレンス&ロマンスに仕上がっている。
『ザ・クロウ』© 2024 Yellow Flower LLC © 2024 LIONS GATE ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
難題に挑んだ『ザ・クロウ』の軌跡
人気コミックを原作に1994年に映画化された『クロウ/飛翔伝説』は、主演ブランドン・リーが撮影中に事故死するという悲劇に見舞われた作品としても知られている(※代役を務めたのはチャド・スタエルスキ)。1982年に『トワイライトゾーン/超次元の体験』の撮影中に起こったヘリコプター墜落と並び、“ハリウッド史上最悪の撮影事故”として語り継がれてきた。
そんな悲劇を払拭すべく、その後『クロウ』は映画・ドラマ・ゲームとシリーズ化されたが、豪華キャストを招いてもメディアを変えても、やはり初作のインパクトには及ばなかった。そんな挑戦を経て長らく再映画化企画が練られ続けるも、同時に誰が主人公を演じるかという難題にも向き合うことになる。
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ブランドンが演じたクロウは妖しく、そして汚らしくて美しい、唯一無二の存在感だった。『ダークナイト』(2008年)でジョーカーを怪演したヒース・レジャーが参考にしたというのも納得の、映画史に残るキャラクターだ。当初はルーク・エヴァンスが演じるという噂やジェイソン・モモアの関与などの情報もあったが、最終的に白羽の矢が立ったのがビル・スカルスガルドだった。
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ビルは、かつて怪優ティム・カリーが『IT/イット』(1990年)で演じた道化師ペニーワイズを、リメイク版『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(2017年)で違和感なく現代に蘇らせた。出世作『シンプル・シモン』(2010年)のナイーブな青年役や、プライベートでのスラッとした無敵イケメンぶりからは想像できないモンスター役は、北欧スカルスガルド家の四男坊であるビルの評価を一気に高めることとなった。
94年版よりもファンタジックかつバイオレントに
試行錯誤・紆余曲折を経て、まさに満を持しての再映画となった『ザ・クロウ』だが、やはり94年版の関係者や古参ファンの評価は辛口だ。しかし実際に本作を観てみれば、踏襲した部分も改変した部分も納得のクオリティで、シンプルに“2020年代のアクション映画”としての見どころが多い。もちろんバイオレンス描写もアップデートされていて、予算面での妥協や出し惜しみ、違和感などを覚えるような部分はほとんどない。
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主人公エリックのキャラクターは正義感の強いロック青年から、タトゥーだらけで薬物中毒のホワイト・トラッシュな若者へ。顔面タトゥーも、早逝のオルタナ・ラップスターLil Peepや抗不安薬を名に冠したLil Zanなどを意識したであろう方向性で、自傷的な側面が強く素面でも周囲をハラハラさせるような危うさがある。また、94年版ではあまりフィーチャーされなかったシェリーの背景も、演じるFKAツイッグスに当て書きされたかのような神秘性が付加された。
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そんなエリックとシェリーを見て思い出すのは、スマッシング・パンプキンズの「トライ・トライ・トライ」のミュージックビデオだ(監督はジョナス・アカーランド)。この世に夢も希望もないけれど、儚い生への執着を捨てる理由があるわけでもない。有り金をドラッグに注ぎ込んで、いつも最悪の事態をギリギリでしのいできた。物事は何も解決しないまま、なんとか今日も生きのびたと安堵する……。序盤で描かれる短くも濃厚な蜜月は、心にトラウマを抱えた2人が強く惹かれ合う理由を印象づける。
音楽面では、94年版はナイン・インチ・ネイルズ×ジョイ・ディヴィジョンやポイズン・アイディア×パンテラなど激レアなカバー曲を含む、いま振り返ればあまりにも豪華なサントラだった。本作はそれと張り合うのではなく、ジョイ・ディヴィジョンの「ディスオーダー」やゲイリー・ニューマン「M.E.」に加え、現行のインディーロック/ニューウェーブ/ポスト・パンク系の曲を多くチョイスしているのも好印象だ。
『カウボーイ・ビバップ』もオマージュした悪役はどうなった?
映像面で言えば、『シン・シティ』(2005年)に引き継がれ強化されたノワール・コミック的なビジュアルが失われたことは残念ながら、低温かつ湿度高めのダークな世界観や、ダニー・ヒューストン演じる悪役ヴィンセントのキャラ設定などは『コンスタンティン』(2005年)を彷彿させる部分もあり、好きな人には刺さりまくるだろう。エリックとシェリーが入所するリハビリ施設のユニフォームの色ひとつ取ってもスタイリッシュで、とにかく目に楽しい。
『ザ・クロウ』© 2024 Yellow Flower LLC © 2024 LIONS GATE ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
94年版のボス敵だったトップ・ダラーは手段を選ばない地上げ王的な犯罪者だったが、ぐっとファンタジーに寄せた“闇の存在”への改変は賛否が分かれるところだろう。だが本作は、巨大な社会格差を生んだ“現実世界の悪”は、もはや従来のモチーフでは釣り合わないと判断したのかもしれない。トップ・ダラーの構成要素はエリック自身に引き継がれ、ヴィンセントには某エプスタインや某ワインスタインを彷彿させる部分もある。なお、94年版でアーニー・ハドソンが演じたアルブレヒト巡査部長の眼差しは、複数のキャラクターに分散されたように感じられる。
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――伝説的な名作カルト映画を、どう蘇らせるべきか? ブランドン・リーというカリスマは永遠に失われてしまった。ただでさえ制作が難航し、内から外から否定的な声も聞こえてくるなか完成した本作には、たしかに苦慮した痕跡が端々に見受けられる。
メイキング写真
『ザ・クロウ』© 2024 Yellow Flower LLC © 2024 LIONS GATE ENTERTAINMENT INC. ALL RIGHTS RESERVED.
だが、そうしたノイズを遮断して観てみれば、単なるリベンジアクションではないゴツゴツとした暴力性を叩きつけ、かつ内省的なトーンも含んだエモみたっぷりのバイオレンス・アクションとして楽しめるはずだ。あの『カウボーイ・ビバップ』がオマージュした94年版のラストバトルがどう描かれるかについても、ぜひ本編を観て確かめてほしい。
『ザ・クロウ』は3月6日(金)より全国公開中
『ザ・クロウ』
奪われた魂が、男を覚醒させる―
恵まれない家庭環境に育ち、非行を繰り返す青年エリック。彼は、更生施設で同じく暗い過去を持つ女性シェリーと出会う。瞬く間に燃えるような恋に落ちた彼らは脱走を成功させ、誰も知らない場所で二人だけの時間を過ごすうちに、お互いの中に生きる意味を見出して深く愛し合っていくのだった。しかし、謎の組織が隠れ家を襲撃し、二人は惨殺されてしまう。やがて命を落としたエリックの怨念に引き寄せられるように、彼の魂の下へ死の国の使者であるカラスが現れ、“復讐のための力を持って生き返る代わりに、目的を遂げた後は魂を永遠に捧げる”という取引を持ち掛ける。激しい憎悪に駆られたエリックはこれを承諾して蘇り、シェリーを凌辱した組織を滅ぼすことを強く誓って夜の闇へと飛び出していくのだった。
監督:ルパート・サンダース
出演:ビル・スカルスガルド、FKAツイッグス、ダニー・ヒューストン
| 制作年: | 2024 |
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2026年3月6日(金)より全国公開中