“手仕事”と“異物感”を大切にした驚きの映像表現『花緑青が明ける日に』ストップモーション&特殊シーンのメイキングカット
日本画家としての活動を軸に、新海誠監督や片渕須直監督など名だたる監督のアニメーション作品に参加し、CMやミュージックビデオなどジャンルを超えて様々な創作活動を行ってきた四宮義俊が、自身のオリジナル脚本で描く、初の長編アニメーション監督作『花緑青が明ける日に』が、3月6日(金)より公開される。このたび、ストップモーション&特殊シーンのメイキングカットが解禁となった。
幻の花火が照らし出す、ふたりの未来
映画タイトルにある“花緑青(はなろくしょう)”とは、燃やすと青くなる緑色の顔料で、かつて花火の材料に使われていたが、美しさと引き換えに毒性を含むことから幻となった。物語の舞台は創業330年の花火工場・帯刀煙火店。再開発による立ち退きの期限が迫る中、幻の花火<シュハリ>とそこで育った若者たちの未来をめぐる2日間の物語を描き出す。
2月12日より「第76回ベルリン国際映画祭」が開幕。本作は『千と千尋の神隠し』『すずめの戸締り』に続くアニメ映画のコンペティション部門選出であり、本年コンペ部門唯一の日本映画。また、長編監督デビュー作がコンペ部門に選ばれるのは日本のアニメーション作品初の快挙として世界から注目を集めている。フランスの気鋭スタジオ「Miyu Productions」との日仏共同製作となる本作は、日本画家出身・四宮義俊監督による圧倒的な色彩美はもちろん、ストップモーション・アニメーションやマルチプレーン・カメラを使った特殊シーンなど手仕事による伝統的な手法を用いた異色の表現が自在に入り混じる、唯一無二の映像表現にも注目だ。
『花緑青が明ける日に』©2025 A NEW DAWN Film Partners
今回解禁されたのは、本作の大きな見どころのひとつであるストップモーション・アニメーションシーンと特殊シーンのメイキング写真。ストップモーション・アニメーションとは、「ピングー」や「ひつじのショーン」などで知られる、モチーフを少しずつ動かし、ストップモーション(コマ撮り)技術を用いて撮影する技法だ。帯刀煙火店の立ち退き前夜に幻の花火<シュハリ>を打ち上げるための作戦会議をするシーンで効果的に使われている。物語の舞台である帯刀家周辺をダンボールで再現したミニチュアセットや人間に見立てた麻雀牌がストップモーションで生き生きと動き出し、アニメと実写の映像が入り混じることで、現実と虚構の境界を軽やかに行き来する世界が展開する。
ストップモーション・ディレクターのヴィクトル・アジュランは、麻雀牌を用いたキャラクター表現について「そもそも麻雀牌という四角い物体を、生き物のように見せるというミッションは大きな挑戦でした」と振り返る。また、作中で印象的に描かれる“酒”の表現についても、透明な瓶やグラスの中で歪んで見える液体を表現するため、実際の液体ではなく透明な粘土を使って微細な動きをコントロールするという独自のアプローチを明かした。
『花緑青が明ける日に』©2025 A NEW DAWN Film Partners
『花緑青が明ける日に』©2025 A NEW DAWN Film Partners
さらに、水中・宇宙・花火シーンの特殊映像を手がけたSUKIMAKI ANIMATIONの鋤柄真希子は、マルチプレーン・カメラという特殊な撮影手法を使うアーティスト。宇宙の表現について「深海を舞台にした過去作で直接光やブラックライトなどを試した応用で、丸い穴を空けた素材を重ねて動かすことでモヤモヤした光を表現したり、スポンジに粉状のパステルをつけて黒い紙に塗っています」とコメント。
また、本予告映像冒頭のカオルが水中に飛び込むシーンについては「透明なジェルを使って反立体の泡などを作成し、撮影しています。四宮監督からはディズニーアニメ『ピノキオ』の水中シーンでの画面全体が揺らめくような表現をやりたい、とリクエストをいただき、樹脂で波ガラスのようなフィルターを作ってカメラの前に置きました」と四宮監督とのやりとりについて振り返った。
『花緑青が明ける日に』©2025 A NEW DAWN Film Partners
『花緑青が明ける日に』©2025 A NEW DAWN Film Partners
本作で監督・脚本を務めた、日本画家出身の四宮監督は、こうした多層的な表現について「まったく異なる素材が生のまま並んでいる“異物感”のある組み合わせが昔から好きなんです」と明かす。岩から削り出した粒子などの無機物を、膠(ニカワ)という動物性の有機物で無理やり固めている日本画の構造から影響を受け、過去に手掛けた映像作品でもあえて実写とアニメーションが入り混じった映像作りを行ってきた。
異なる技法、異なる質感をあえて混ぜ合わせることで生まれる、他に類を見ない映像体験を映画館で新鮮な驚きとともに味わってほしい。そして、世界が注目するベルリンの舞台で、本作がどのような反響を呼ぶのか、期待が高まっている。
『花緑青が明ける日に』©2025 A NEW DAWN Film Partners
『花緑青が明ける日に』©2025 A NEW DAWN Film Partners
『花緑青が明ける日に』は3月6日(金)より全国公開