「毎週のように誹謗中傷や殺害予告が届きます」闇堕ちピーター・パン物語『ネバーランド・ナイトメア』監督インタビュー
幼い頃の夢を破壊するプーニバースの衝撃
世界中で愛される「くまのプーさん」が殺人鬼になって人々に襲いかかる――そんな、色んな種類の悲鳴が聞こえてきそうなホラー映画『プー あくまのくまさん』が公開されたのは2023年6月のこと。
ちょっとドジだけど愛すべき“みんなのプーさん”が凶器を手に次々と殺人を犯すというぶっ飛んだストーリーは、A・A・ルミンの児童小説がパブリックドメイン(著作権フリー)になったことで実現。これが世界中で異例のヒットを飛ばし、即座に続編『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』が制作され、2024年8月に日本公開された。
『プー2 あくまのくまさんとじゃあくななかまたち』©2024 ITN DISTRIBUTION, INC. ALL RIGHTS RESERVED.
この時点ではイレギュラー案件、映画オタクの悪ふざけがたまたま当たったとしか思っていないB級映画ファンも多かっただろう。しかし、手ごたえを感じた制作陣は壮大な計画を練っていた。同じくパブリックドメインとなった児童書の有名キャラクターたちを血と臓物の鍋にぶち込んで個別に映画化し、さらに“アッセンブル”させる構想を発表したのだ。
この児童小説悪夢化計画は「プーニバース」と名付けられ、今年8月には“バンビ”をテーマにしたアニマルスプラッター映画『子鹿のゾンビ』が公開。いわゆる“出オチ”必至な設定にもかかわらず、「じつは泣ける!」「学びの多い作品」という予想外の評判に多くの観客が困惑したことは記憶に新しい。
『子鹿のゾンビ』© 2025 ITN Distribution Inc. All Rights Reserved.
今度はピーター・パンだ!『ネバーランド・ナイトメア』監督にインタビュー
そして本国では『子鹿の~』に先んじて公開済みのプーニバース最新作が、11月7日(金)より全国で絶賛公開中の『ネバーランド・ナイトメア』。……お察しの通り、“永遠の少年”ことピーター・パンが残虐な殺人鬼となって子どもたちを追い詰めていく、というファンタジックでサイコなスラッシャー映画である。
そんな本作の監督を務めたのは、俳優活動と並行して数多くの(ヒット作便乗系)B級映画を手がけてきたワーカホリックな才人スコット・チェンバース。ここ数年はプロデューサーとしてプーニバースを牽引してきたチェンバースだが、日本のファンのために忙しい合間を縫ってメールインタビューに応えてくれたので、ぜひ『ネバーランド・ナイトメア』鑑賞の前後を問わずご一読いただければ幸いだ。
スコット・チェンバース監督 『ネバーランド・ナイトメア』© 2025 ITN Distribution, Inc. All Rights Reserved.
「目の奥が死んでいるんです!」
――あなたは<プーニバース>の作品にキャストやプロデューサーとして関わってきましたが、同バースの成功により映画製作や撮影において、どんな点が改善されましたか?『ネバーランド・ナイトメア』は明らかに低予算の作品なのに、映像も特殊メイクも過去作品よりグレードアップしているように見えました。
ありがとう! 前作では少し興奮しすぎていたと思います。今回は“量より質”を重視しました。
『ネバーランド・ナイトメア』© 2025 ITN Distribution, Inc. All Rights Reserved.
――本作でマーティン・ポートロックが演じるピーター・パンの人物像は、怖いだけでなく深い悲しみも感じさせ、まるで実在のシリアルキラーのような存在感がありました。ポートロックとは、ピーター・パン役についてどんな話をしましたか?
サーカスのシーンの撮影前に、現在はショーマンとしての“仮面”を被ったピーターなのだということをよく伝えました。だから顔にペイントが施されていて、彼は常に人を誘惑するために色んな人格を演じているんです。
ただ、“目”には本当の彼自身が表れていてほしいと思っていました。目をよく見ると、本当の邪悪さが潜んでいるのが分かるはずです。目の奥が死んでいるんです!
『ネバーランド・ナイトメア』© 2025 ITN Distribution, Inc. All Rights Reserved.
子どもたちと一緒にいるときは、子どもの仮面を被って、子どもの声で話す。彼は自分を子どもだと思っている。脚本上でもピーター・パンには多層的な側面があり、屋敷に戻ると徐々に本性が現れるようにしました。
『ネバーランド・ナイトメア』© 2025 ITN Distribution, Inc. All Rights Reserved.
『ネバーランド・ナイトメア』
ロンドンで彼氏との新生活を夢見て、移住を計画していた大学生のウェンディ。ある日、弟マイケルが突然、何者かに誘拐されてしまう。そしてその犯人は、かつて世間を震え上がらせた凶悪誘拐犯——ピーター・パンだった。
妖精の粉を注射し、街中へトび出し、子どもの誘拐と殺人を繰り返すピーター・パン。子どもも、大人も、次々と夢の国“ネバーランド”へと旅立たせていく。
弟を救うため、ウェンディはピーターの潜伏先を突き止め、ひとり忍び込む。するとそこには、かつて弟と同じように誘拐され、薬物中毒に陥ったティンカー・ベル、右手にフックをつけた青年が……。
弟がネバーランドへ連れ去られてしまう前に、ウェンディはこの悪夢を止められるのか——?
「さあ、一緒にネバーランドへ行こう」
監督・脚本:スコット・チェンバース
プロデューサー:リース・フレイク=ウォーターフィールド
出演:ミーガン・プラシート、マーティン・ポートロック
| 制作年: | 2024 |
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2025年11月7日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開中