13日の金曜日…“不吉な伝説”の幕開け
ある夏のキャンプ場で起きた惨劇を描くホラー映画『13日の金曜日』(1980年)。言わずもがな、ホラー/スラッシャー映画の代名詞となり、今日まで続く恐怖のフランチャイズを築き上げた名作だ。
『13日の金曜日』© Georgetown Productions, Inc.
本作の物語は、静かな湖畔のキャンプ場<クリスタル・レイク>を舞台に、若者たちが次々と殺されていく謎を中心に展開する。緊張感と不穏な空気が徐々に高まりながら、その殺戮の“理由”と驚くべき犯人の存在が、少しずつ明かされていき……。あえて派手な演出に頼らないジリジリとした過程が、むしろ観る者の想像力を刺激する。
『13日の金曜日』© Georgetown Productions, Inc.
そんな『13金』の最大の魅力といえば、やはりトム・サヴィーニによる生々しくリアルな特殊効果、そしてハリー・マンフレディーニによる不気味な音楽だろう。1作目のある登場人物のセリフから生まれた「キキキ…マママ……」という効果音は、いつ聴いても生理的な恐怖を煽る。
『13日の金曜日』© Georgetown Productions, Inc.
“13”と“金曜日”は、なぜ不吉なのか?
低予算のインディー映画として企画された本作は当初、大ヒットを前提としたものではなかったという。監督のショーン・S・カニンガムは、ジョン・カーペンターの『ハロウィン』(1978年)の成功を参考にしつつ、ごく短期間で撮影を完了。脚本が未完成の段階でタイトルのみの広告を打ち出すなど、インパクト重視のマーケティングも功を奏した。
『13日の金曜日』© Georgetown Productions, Inc.
なお『13日の金曜日』というタイトルは、キリスト教などで“忌み数”とされる13と処刑や不幸と結びつけられる金曜日の組み合わせだという。ちなみに、のちに“殺人鬼ジェイソン”の代名詞となる印象的なホッケーマスクは1作目には登場しないのだが、伝説のホラーアイコン誕生のきっかけとなったピュアな恐怖が魅力だ。
『13日の金曜日』© Georgetown Productions, Inc.
制作費の100倍以上を稼ぐ大ヒット! ジェイソンは永遠のホラーアイコンに
本先は批評家の評価が芳しくなかった一方で、ホラー映画ファンには猛烈に歓迎されたそうだ。ショッキングな演出は若者層を中心に話題を呼び、アメリカ国内で約3,975万ドル、全世界では約5,975万ドルという驚異的な興行収入を記録し、その収益率は脅威の100倍以上。結果的にはパラマウント・ピクチャーズにとって年間第2位の大ヒット作となった。
『13日の金曜日』© Georgetown Productions, Inc.
その後、本作はスラッシャー映画のテンプレとなり、『エルム街の悪夢』や『チャイルド・プレイ』など数々の後発作品に影響を与えることに。ジェイソン・ボーヒーズというキャラクターはシリーズを重ねることで世界中の人々の脳裏に刷り込まれ、ホラー映画史における永遠のアイコンとなる。
『13日の金曜日』© Georgetown Productions, Inc.
そんな名作中の名作がこの夏、CS映画専門チャンネル ムービープラスにてTV放送中。「真夏のオカルト映画特集」と題して、デンゼル・ワシントン、ジョン・グッドマン、ドナルド・サザーランド共演の悪魔憑きスリラー『悪魔を憐れむ歌』(1998年)や、ティルダ・スウィントンの大天使ぶりも神々しいキアヌ・リーブス主演作『コンスタンティン』(2005年)も放送されるので、ぜひチェックしてみては。