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掲載日:2026年10月10日(2026年10月10日時点の情報)文=BANGER!!!編集部
※本記事の情報は2026年10月10日時点の情報です。最新情報は公式サイトにてご確認ください。
伊藤英明がロケットランチャーを担いでいる。その絵に笑ってしまった人は、もうこのドラマの客だ。
『ドンケツ』は、たーしの極道漫画を原作にしたDMM TVのオリジナルドラマである。2025年4月にseason1が始まり、同じ年の11月28日にseason2の配信が始まった。season2は全6話。どちらもいま配信されている。DMMの公式発表では、2026年上半期のDMM TV総合視聴ランキングで6位に入った。配信開始から時間が経っても観られ続けている、ということだ。
ロケマサという、説明のつかない男
主人公は沢田政寿、通称ロケマサ。北九州の極道で、腕っぷしは誰もが認める。敵の事務所にロケットランチャーを撃ち込んだ、という逸話があだ名の由来になっている。それほどの男が、中年になっても組の下っ端のままでいる。題名の「ドンケツ」は、出世の見込みがない者という意味だ。
なぜ上がれないのか。答えは簡単で、性格がひどいからである。わがままで、短気で、人の言うことを聞かない。上の人間にも平気で噛みつく。組織で働いたことのある人なら、こういう男が偉くなれない理由は身にしみて分かるだろう。
ところが抗争が始まると、頼られるのは結局この男になる。会議で通る正しさと、現場を動かす力は別ものだ。ロケマサは後者しか持っていない。持っていないことを恥じてもいない。原作が長く読まれてきたのは、その開き直りが眩しいからだと私は思う。
舞台が北九州であることも効いている。男たちは土地の言葉で怒鳴り合う。標準語の極道ものにはない湿度と速さがあって、啖呵の応酬がそれだけで見世物になる。原作は『ヤングキング』で長く連載され、巻を重ねても勢いが落ちなかった。芯にあるのは、ロケマサが何をされても折れないこと、そして折れない理由を本人が一切説明しないことだ。信念と呼ぶには雑で、意地と呼ぶには明るい。
伊藤英明の体が、漫画の嘘を本当にする
実写でこの役をやれる俳優は限られる。『海猿』で鍛えた体を世間に刻み、『悪の教典』で笑顔のまま人を壊す男を演じた伊藤英明は、その少ない候補の筆頭だった。大きくて、陽気で、何をするか分からない。ロケマサに必要な三つを、役づくり以前に持っている。
season2の予告編には、ロケマサがロケットランチャーを撃つ場面が入っている。あだ名の由来を、今度は視聴者の目の前でやってみせるわけだ。漫画なら一コマで済む無茶を、生身でやると滑稽になりかねない。伊藤英明はそこを、照れずに真顔で押し切る。真顔だから笑えるし、笑ったあとで少し怖い。
脇を固める本宮泰風の存在も大きい。任侠ものの映像作品を長く支えてきた人が横に立つと、画面の重心が下がる。season1の立ち上げで監督を務めたのは水田伸生。『舞妓Haaaan!!!』のような喜劇から重い家族ドラマまで撮ってきた人で、暴力と笑いが同じ場面に同居するこの原作には合った人選だったと思う。
DMM TVがこの企画をオリジナルで立てたことにも意味がある。極道ものは、地上波の連続ドラマではほとんど見かけなくなった。かつてレンタル店の棚を埋めていたあの手触りを、名のある俳優を据えてやり直す。配信だから通った企画であり、上半期の順位を見るかぎり、待っていた人は少なくなかったのだと思う。
主題歌は氣志團の「汚れなきクソ野郎ども」。題名だけで、どういう男たちの話かが伝わる。
殴り合いが苦手なら、やめておいたほうがいい
弱点を書く。
まず、暴力が多い。殴る、蹴る、撃つ。血も出る。極道の世界を舞台にしている以上あたりまえだが、苦手な人が我慢して観るほどの理由は、こちらからは差し出せない。
次に、ロケマサは好人物として描かれていない。身勝手で、周りを振り回す。主人公には共感したい、という人は置いていかれる。この男を好きになる必要はなくて、ただ見物していればいいのだが、その距離の取り方が合わない人はいるだろう。
それから、season2では抗争が全国規模に広がり、関東の大きな組織や警察まで絡んでくる。登場人物が増えるので、誰がどの組の人間かを追うのに少し骨が折れる。season1から順に観ることを強く勧める。
3連休に2シーズンを通す
週末がひとつ余分にある、という連休の贅沢は、こういう作品に使うのがいい。考え込まなくていい。頭を空にして、大男が暴れるのを眺める時間は、案外ほかでは手に入らない。season2が全6話なので、season1と合わせても連休のうちに追いつける分量だと見ている。
season2は配信開始時に第1・2話が同時に出て、あとは金曜ごとに1話ずつ足されていった。当時追っていた人は一か月かけたわけだが、いまなら一日で済む。抗争ものは、間を空けると誰が誰を裏切ったのかを忘れてしまう。続けて観たほうが、裏切りの痛みがちゃんと届く。
勧めたいのは、往年の任侠映画やVシネマで育った人。会社の理屈に少し疲れている人。そして伊藤英明を『海猿』の好青年のまま記憶している人。あの人がここまで柄の悪い男を嬉々として演じているのを見るのは、それだけで愉快だ。
『ドンケツ』はDMM TVのオリジナルドラマで、season1もseason2も独占配信になっている。観るならDMM TVに入るしかない。月額は550円(税込・Webブラウザから登録した場合)で、アプリ経由の登録は650円。初回登録の人は14日間無料、期間内に解約すれば料金は発生しない。
偉くならない男の背中が、やけに大きく見える。連休明けの月曜に、少しだけ肩の力が抜けているかもしれない。
※本記事は2026年10月10日時点の情報です。配信状況・料金・配信期間は変更される場合があります。最新の情報は各公式サイトでご確認ください。