「RRR」など話題作を抑え、第95回アカデミー賞インド代表に決定 『エンドロールのつづき』

「RRR」など話題作を抑え、第95回アカデミー賞インド代表に決定 『エンドロールのつづき』
『エンドロールのつづき』ALL RIGHTS RESERVED ©2022. CHHELLO SHOW LLP

2023年1月20日(金)より全国公開されるインド映画『エンドロールのつづき』が、「第95回アカデミー賞」インド代表(国際長編映画賞)に決定。このたび本編映像が公開された。

夢をつかんだ少年の驚くべき“実話”から生まれた感動作

チャイ売りの少年が映画と出会い、やがて世界で活躍する映画監督になる―。監督自身の驚くべき物語を映画化した、『エンドロールのつづき』。トライベッカ映画祭ほか、世界中の映画祭で5つの観客賞を受賞し、さらにバリャドリード国際映画祭では最高賞にあたるゴールデンスパイク賞をインド映画として初めて受賞。そして、日本でも大ヒット中の『RRR』などの話題作を抑え、第95回アカデミー賞インド代表(国際長編映画賞)に決定した。

ロスで行われた「アジア・ワールド・フィルム・フェスティバル2022」でも最優秀作品賞を受賞するなど、快進劇が続く本作。“映画”への溢れんばかりの愛情を込めて本作を監督したのは、インド出身で今や国を超えて活躍するパン・ナリン。リュミエール兄弟やスタンリー・キューブリックなど、監督が敬愛する巨匠たちへのオマージュがちりばめられ、自らの才能で未来を照らす光を追い続ける少年の姿に、誰もが無邪気な幼少期を思い出すような希望あふれる物語となっている。

そんな本作の舞台となったのは、インドのグジャラート州の小さな村チャララ。本編映像では、そんな大自然が広がる農村に住む主人公サマイが父親に「これが最後だ。カーリー女神様の映画だから」と連れて行かれるシーンから始まる。おとずれたのは街の映画館“ギャラクシー座”。厳格なバラモン階級の父は映画を低劣なものだと考えているが、信仰しているカーリー女神の映画は特別だという。人で溢れかえった映画館でなんとかチケットを手に入れて席に着くと、目に飛び込んだのは後方からスクリーンへと伸びる一筋の光……そこにはサマイが初めて見る世界が広がっていた。

アジア映画研究者・松岡環が本編映像をマニアック解説

アジア映画研究者の松岡環さんによると、本作の劇中でグジャラートのカティヤワル半島の小さな村、チャララに住むサマイ一家が「これが最後」と観に行った映画は、「映画館の看板では『Jai Mahalali(カーリー万歳)』となっているが、映像は『Karishma Kali Ka(カーリーの奇蹟)』という1990年の映画から取ったソング&ダンスシーン」とのこと。

また、満席となったギャラクシー座に広がる大きなスクリーンで繰り広げられる映画のシーンを映す映写機の光にサマイは魅せられるが、「サマイが夢中になったのは、ローカルなグジャラート語映画ではなく、毎年300本前後を製作するヒンディー語映画。有名スターが出演し、多額の製作費を使って作られる豪華なヒンディー語映画は、製作中心地ムンバイの旧名“ボンベイ”+“ハリウッド”で“ボリウッド”映画と呼ばれているもの」と、インド映画の代名詞ともなっているボリウッドについて説明。

また、上映前に父親がサマイに「3時半、6時半、9時半の3回上映だ」と説明しているシーンについても、「シネコン(シネマコンプレックス。インドではマルチプレックスと呼ぶ)が出現するまでのインドの映画興行は、一本の映画が間に休憩をいれた3時間枠に設定されていた」と、映画に描かれたのは、過去の上映スタイルだと解説する。

さらに劇中で上映されているボリウッド映画について、松岡さんは「サマイが劇場で見る映画は、アクシャイ・クマール主演作『Zulmi(悪人)』(1999)などだが、本作中で一番多く引用されているのが、時代劇『Jodhaa Akbar(ジョーダーとアクバル)』(2008)である。そのほか、1970年代半ばからボリウッドの人気男優となり、今も別格的スターとして活躍するアミターブ・バッチャンの主演作『Khuda Gawah(神に誓って)』(1992)や、『Aks(影)』(2001)もちらりと引用されている」とインド映画ファンにはたまらない情報も教えてくれた。

「日本で初めて一般公開されるグジャラート語映画」だという本作は、インド映画ファンならずとも要注目だ。

『エンドロールのつづき』は2023年1月20日(金)より全国公開

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『エンドロールのつづき』

9歳のサマイはインドの田舎町で、学校に通いながら父のチャイ店を手伝っている。厳格な父は映画を低劣なものだと思っているが、信仰するカーリー女神の映画は特別と、家族で街に映画を観に行くことに。人で溢れ返った映画館、席に着くと、目に飛び込んだのは後方からスクリーンへと伸びる一筋の光…そこにはサマイが初めて見る世界が広がっていた。映画にすっかり魅了されたサマイは、再び映画館に忍び込むが、チケット代が払えずつまみ出されてしまう。それを見た映写技師のファザルがある提案をする。料理上手なサマイの母が作る弁当と引換えに、映写室から映画をみせてくれるというのだ。サマイは映写窓から観る色とりどりの映画の数々に圧倒され、いつしか「映画を作りたい」という夢を抱きはじめるが―。

監督/脚本:パン・ナリン
出演:バヴィン・ラバリ

制作年: 2021