悪趣味モキュメンタリー『ジャンク』の衝撃
70年代の映画『ジャンク 死と惨劇』をご存知の方は、おそらく40歳代半ば以上ではないだろうか。原題は『Faces of Death』で、その後90年代末までに全7作が制作された知る人ぞ知る“悪趣味”シリーズだ。白髪で痩せぎすの医学博士風の男性が登場し、“死”にまつわる様々な映像を紹介していくオムニバス的なスタイルだった(※製作には日本の制作会社が深く関わっている)。
The most “banned” film in history is back in 4K. For #FoundFilmFriday, we’re spotlighting @VinegarSyndrome’s restoration of “Faces of Death” (1978). Watch the new YouTube doc “Winding Through” to see why film preservation matters for ALL of cinema history.https://t.co/Z0ck0SrbwJ pic.twitter.com/z98jQ7FErA
— Missing Movies (@MissingMovies) April 10, 2026
いわくつきの“ビデオ・ナスティ”作品が劇場で大ヒット
1作目は人体解剖の丸写しシーンから始まり、ミイラなど実際の遺体、凄惨な事件・事故現場、動物同士の殺し合い、屠殺場、そして悪趣味な“活造り”などなど、目を覆いたくなる映像をひたすら見せつける。いわゆるモンドなドキュメンタリー風の作品で、英国では「ビデオ・ナスティ」とカテゴライズされ上映禁止や発禁の対象となったが、VHSのパッケージで「46カ国でBANされた!」と堂々と謳うなど、逆にその過激さを(信憑性はともかく)自ら喧伝していた。
当時は大手レンタルビデオ店にも陳列されていた記憶があるが、とにかく電気椅子による処刑(の再現シーン)を大きくフィーチャーしたパッケージのインパクトが凄まじく、幼少期にうっかり手に取ってしまいトラウマを植え付けられた! という人も少なくないだろう。そんなシロモノがホラー映画のコーナーに普通に並んでいたことが驚きだが、そもそも劇場公開されて大ヒットしたのだから当然といえば当然か……。
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『ジャンク』が2026年にメタ的ホラーで復活
そんな『ジャンク』が、2026年に驚きのかたちで復活を果たした。手がけたのは『カムガール』(2018年)や、日本でも話題を呼んだ『HOW TO BLOW UP』(2022年)のダニエル・ゴールドヘイバー監督と、共同脚本のイザ・マッゼイ。二人が選んだのは“メタ的なスラッシャー・リメイク”というアプローチだ。
原題はズバリ『Faces of Death』ながら、あくまでオリジナルの映像や設定を活かしつつ「それに触発されたシリアルキラーが現れたら」という構成。つまりオリジナル版の続編とかリメイクではなく、オリジナルそのものを題材にしたメタ的作品であり、しっかり時代性のある設定とストーリーでホラー映画としての説得力をもたせている。
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“コンテンツモデレーター”という現代的な視点
主人公のマーゴ(バービー・フェレイラ)は、TikTok風のSNS企業でコンテンツモデレーター(違反動画の審査員)として働いている。ある日、凄惨な斬首シーンを収めた動画が彼女のもとに流れ込んでくる。フェイクだと思いたい。だが、かつて自身の悲劇がネットに拡散された経験を持つ彼女は、その映像を本物だと直感し、独自に追跡を始め――。
フェレイラはこの役のために実際のモデレーターのインタビューを大量に視聴したそうで、米スクリーンラント等の取材に対し「数ヶ月でやめた人たちが口をそろえて『今も悪夢を見る、人生で最悪の経験だった』と言っていた」と語っている。そのモデレーターたちの証言が気になりすぎるが、ドキュメンタリー等で観られるのだろうか……。
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『ジャンク』を“台本”にする殺人鬼の恐怖
対するシリアルキラー役を演じるのは『ストレンジャー・シングス』シリーズで知られるデイカー・モンゴメリー。オリジナルの『ジャンク』に収録された死の場面を一つひとつ“再現”し、その映像をネットに投稿し続ける男だ。評論家からは「ボディランゲージひとつで、ただの人畜無害な男からテッド・バンディも恐れるような存在へと変貌する」と絶賛されており、『ストシン』出演後にアート映画方面に舵を切ったモンゴメリーにとってキャリアの転換点になるかもしれない。
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かつて劇場で異例のヒットを飛ばし、VHS化によって伝説のカルト映画となった恐るべき低予算モキュメンタリーは、現代のインターネット、AI、アルゴリズム社会をテーマにした作品にどう反映されたのか?『Faces of Death』の全米公開は4月10日とのことだが、いち早い日本公開を願うばかりだ。