主演・森七菜と監督・長久允の初タッグとなるオリジナル長編映画『炎上』が、4月10日(金)より公開される。このたび、ポン・ジュノ監督からコメントが到着した。また、森七菜ら若手キャストが魂を込めて役を生きた姿を映す写真が解禁となった。
新宿・歌舞伎町で彼女に何が起きたのか?
本作はオリジナル脚本で描かれる長編映画で、脚本・監督を手がけるのは長久允。長久監督は2017年に公開された短編映画『そうして私たちはプールに金魚を、』が「第33回サンダンス映画祭」ショートフィルム部門のグランプリを日本映画として初受賞。続いて、2019年に公開した長編映画デビュー作『WE ARE LITTLE ZOMBIES』も「第35回サンダンス映画祭」で日本映画として初めて審査員特別賞のオリジナリティ賞に輝くなど、その作家性が世界からも絶賛されている。
本作は映画化までに5年間の歳月をかけ、様々な方に取材を重ねながら物語を作り上げた。長久監督は「新宿歌舞伎町のニュースを見て、現場を取材し、彼女/彼らの物語を書くべきだと思ったことがきっかけ」と話し、撮影時には映画の舞台である新宿・歌舞伎町で実際にロケも敢行、街のありのままの姿を物語に落としこんだ。新宿・歌舞伎町で生きる若者のリアルな姿と、他では味わえない長久ワールドの融合は高く評価され、「第42回サンダンス映画祭」において、挑戦的で既存の枠にとらわれない作品が選ばれるNEXT部門にノミネート。大好評となるワールドプレミア上映も開催された。
本作の主人公・小林樹里恵(通称:じゅじゅ)を演じるのは、映画『国宝』、『秒速5センチメートル』に出演し、その存在感と演技力の高さに国内外からの評価が集まっている俳優・森七菜。森は「自分自身がどこにいるのか分からなくなる撮影期間でしたが、彼女たちの強さを守るために進んだ一ヶ月半でした。見てくれた方がこの物語をどんな風に捉えることになるのか想像がつきません。だけど私たちから何も奪えないことを、地獄には知って欲しい」と、語るほどに魂を込めて演じている。
『炎上』
今回解禁となったのは、新宿・歌舞伎町で本作の撮影に臨む森七菜をはじめとしたキャストたちの姿。使い捨てカメラで撮影された画像となっていて、フィルムならではの独特な質感と雰囲気は、まるで「じゅじゅ」たちが生きたリアルな日常を覗いているかのような感覚を覚える。
カメラ片手にセルフィーを撮る森の姿や、撮影の合間にキャスト同士で談笑する様子、「じゅじゅ」と初めての親友になる三ツ葉役のアオイヤマダと森は、劇中の「じゅじゅ」と「三ツ葉」同様、2人の信頼関係が伝わる2ショットも到着。実は本編の中でも、長久監督ならではの表現手法のひとつとして使い捨てカメラの画像が登場している。映像自体も画面比率が3:2の写真サイズになっていて、長久監督はその狙いを「過去を振り返った樹理恵の心に焼き付いた写真のような映画にしたい、そして現実に対する夢という抽象的なコンセプトをルックに宿らせたかった」と明かしている。
『炎上』
『炎上』
『そうして私たちはプールに金魚を、』『WE ARE LITTLE ZOMBIES』などで、言語化できない子供たちの内なる憤りと力強さを描いてきた長久監督は、徹底したリサーチを重ねた上で、歌舞伎町に生きる彼ら、彼女らの“強さ”を物語に落とし込んだ。その撮影には、実際の新宿・歌舞伎町でロケを行うことが必然だったと言う。繁華街特有の喧騒やスピーカーから流れる音楽の濁流の中でのロケとなった歌舞伎町での撮影は、「俳優部が集中して演技するのも難しかっただろうし、録音の技術面でも後から様々な処理が必要で課題山積のハードな現場だった」と苦労を明かしているが、「そういう場所でそのような題材を撮っているのだから苦労は当たり前です。それを嫌がって実際の場所で撮らなかったとしたら、別物の作品になっていたはず」と確信していたそう。
長久監督は、「完成した作品には、面白おかしく報道されたり消費されたりする彼らの姿とは違った、本質的な何かが描かれています。『炎上』は、今作るべき理由がちゃんと定着した映画だと確信しています」と明かしており、森七菜をはじめとした若手キャストたちが監督の想いを受け止め、魂を込めて新宿・歌舞伎町に生きる若者たちを演じている。
それぞれの生きづらさと傷を抱えた若者が寄り添い集う場所・新宿歌舞伎町。そこにたどり着いた一人の少女・樹理恵は、彼らと出会い、何を得るのか。夢を求めてたどり着いた場所で1人の少女が起こした“炎上”事件。その物語の結末とは——。
『炎上』
『炎上』
『炎上』
『炎上』
『炎上』
アンソニー・ホプキンス主演の『ファーザー』という映画をご存じでしょうか。
あの映画は、認知症を追体験させる、1⼈称視点でアルツハイマーを体験させるという、そんな恐ろしさがありました。
今回の允さんの新作も、1⼈称視点を通して痛みを体験させる側⾯があります。恐ろしい苦痛の旅です。
しかし、その旅は⾮常に美しく、さらに鮮やかな映像で彩られているため、そこから⽣まれる強烈なコントラストが、いっそう恐ろしく胸を締めつけるように感じられる映画です。
強烈と⾔わざるを得ない、議論を巻き起こさずにはいられない映画だと感じます。導⼊部のその恐ろしい⽗親による虐待の描写。
映画的な表現の限界を越えるかのような、あまりにも幼い姉妹の⼩さな背中に刻まれた傷を描くシーンからわかります。この映画がどれほど⾁体的であるか、どれほど⾝体的な感覚に依存しているか。それをはっきり⾒せながら映画が始まるのです。
実際に存在するとても強⼒な⾁体的な痛みを描き、それゆえに⼼にも深い痛みを避けられない映画。そんな痛みと苦しみについての1⼈称視点の映画だと思います。だからこそ、「その広場」を題材にした、そこにいる⻘少年を扱ったドキュメンタリーのようなものとは全く異なる、正反対の地点にあるスタイルとアプローチを持つ映画です。
そのような正反対のスタイル。
主観的で映画的で、さらには美しいとさえ⾔える映像を通して、むしろそこにいる⼦供たちの苦しみや危険な状況がより鮮明に浮かび上がる作品だと思います。
余韻が⻑く残らざるを得ない作品です。
僕がもし東京を歩いていて偶然その広場を通り過ぎたとしたら、この映画の中の⼦供たちのことを思い出すでしょう。
その場所が違って⾒えるはずです。表⾯的な姿とは異なる何かが⾒えてくるでしょう。
そこに座っている⼦供たちも、そうです。
それが映画が持つ⼒だと思っています。
(ポン・ジュノ)
『炎上』は4月10日(金)より全国公開