イラン空爆はなぜ起こった? 背景をつかむための映画・ドラマ5選 『アルゴ』『ペルセポリス』ほか

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook
ライター:#BANGER!!! 編集部
イラン空爆はなぜ起こった? 背景をつかむための映画・ドラマ5選 『アルゴ』『ペルセポリス』ほか
『ペルセポリス』©2007. 247Films, France 3 Cinema. All rights reserved.

戦争・侵略の背景を知る

2月28日の夜、イラン・テヘランへの空爆が始まった。スマホを起動するとSNSのタイムラインに、米大統領とイスラエル首相の声明と、瓦礫の前で家族の死に涙する人々の映像が、同時に流れてきた。大勢の子どもたちが亡くなったニュースに胸が痛くなる。

何か“手がかり”が欲しくて、過去のニュース映像を遡った人もいるだろう。でも次の速報、また次の速報……と流れてくるうちに、その感情の置き場所がわからなくなってしまう。そういう時に、少し古い映画やドキュメンタリーを見ることが、自分なりの文脈を形成する手がかりになるかもしれない。

ニュース速報よりもゆっくりだが、“誰が何のために”作ったのかを意識しながら見ることで、流れてくる情報の「外側」が少し見えてくる。複数作品の比較を意識する前提で、今すぐに観られる配信作品を中心にピックアップした。

『アルゴ』
Blu-ray(エクステンデッド・バージョン):¥2,619(税込)
DVD:¥1,572(税込)
レーベル:Warner Home Video
販売元:Happinet
©2012 Warner Bros. Entertainment Inc. All rights reserved.
『ペルセポリス 4Kレストア』
Blu-ray:¥5800 (税抜)
DVD:¥4800 (税抜)
販売元:アイ・ヴィ・シー
©2007. 247Films, France 3 Cinema. All rights reserved.

1979年という“震源地”

今起きていることの多くは、1979年のイラン革命まで根を辿ることができる。そしてその革命は、1953年にCIAが関与したクーデターによって民主的な政権が倒された記憶の上に立っている。この歴史を「二つの作品」で見比べてみると、同じ出来事が国によってまるで別の記憶として保存されていることがわかる。

ベン・アフレック監督・主演の『アルゴ』(2012年/U-NEXTほか)は、革命下のテヘランからアメリカ人外交官を脱出させるCIAの作戦を描いた。緊張感のある実録エンターテインメントとして優れているが、同時に“暴力的な群衆”として描かれるイラン人の姿は、あくまでアメリカ側の記憶だ。イランのイスラム原理主義国化に米英が大きく関与していたことを解説するオープニング映像だけでも必見。

一方、マルジャン・サトラピの自伝を原作にしたアニメ映画『ペルセポリス』(2007年/配信なし、レンタルのみ)は、その群衆の側にいた少女の話だ。革命を信じた市民たちが、独裁と革命、戦争(イラン・イラク戦争)に飲み込まれていく過程をモノクロ調で描きながら、思わずクスリとするユーモアも忘れていない。そして「自由になったはずなのに、なぜ?」という問いは、2026年の今も形を変えて繰り返されている。第80回アカデミー賞長編アニメ映画賞ノミネート。

“成功した作戦”の、その後

今回の空爆を「成功」と呼ぶ声がある。ならば過去に、「成功しなかった」ときに何が起きたかを見ておく必要もあるだろう。

『Desert One 大使館人質救出作戦』(2020年/Prime Video、U-NEXT、Huluほか配信中)は『アルゴ』でも描かれた、1979年にアメリカが決行した人質救出作戦「イーグルクロー」の顛末を追うドキュメンタリーだ。精鋭部隊が砂漠で立ち往生し、機械が壊れ、多くの人が命を落とした。軍事的優位が現地の現実の前に崩れていく様子が、当事者たちの証言でゆっくりと再構成される。

そして、「成功した」はずのイラク戦争がどこへ向かったかは、Netflixの『ターニング・ポイント:9/11と対テロ戦争』が冷静に記録している。独裁者の排除と民主化。2003年に掲げられたその言葉と、その後20年の現実の距離を、本作は淡々と並べる。

「憎しみ」はどこから来たのか

ドラマシリーズ『倒壊する巨塔 -アルカイダと「9.11」への道』(2018年/Prime Videoほか)は、あの同時多発テロを「なぜ防げなかったか」という問いから始まる。CIAとFBIの縄張り争い、中東への介入と放置が繰り返された外交の歴史、そして情報が目の前にあっても見えなくなる組織の構造。報復がさらなる報復を呼ぶサイクルの入り口を、内側から描いている。

どんな映像作品も、作った側の立場や背景から自由ではない。それはこれらの作品も同じだ。ただ、立場の違う複数の作品を見ることで、一本では見えない『その外側』がうっすらと浮かんでくる。ニュースで最新情報を受け取りつつ、その合間に過去の映像作品にも手を伸ばしてみては。

 

Share On
  • Twitter
  • LINE
  • Facebook