こたけ正義感『弁論』にハマったら観ておきたいスタンダップコメディ5選【配信で今すぐ】

こたけ正義感『弁論』にハマったら観ておきたいスタンダップコメディ5選【配信で今すぐ】
Netflix『ハンナ・ギャズビーのナネット』独占配信中

こたけ正義感『弁論』の衝撃

現役弁護士芸人「こたけ正義感」は、控えめに言っても今もっともアツい芸人の一人である。巷では“メロい芸人ランキング”のTOP5に食い込んでくるイケメンぶりでも人気を集めているが、そんなこたけ氏の代名詞となったのが60分ひとり漫談『弁論』だ。

こたけ氏はこの『弁論』で、戦後最大級の冤罪事件「袴田事件」や生活保護問題など、日本のお笑い芸人の多くは言及しないであろう、しかし私たちに非常に身近なテーマを扱った。ステージ上でその話題に踏み込んだ瞬間は一瞬ヒヤリとしたような空気が感じられるのだが、そこまでの話題の積み重ねと巧みな構成によって瞬時に笑いを醸成し、畳みかけるように伏線を回収してオチ=爆笑につなげるという、弁護士の経験と芸人のスキルをフル活用したステージは感動もの。実際、多くの芸人が両手を上げて『弁論』を称賛し、それまでお笑いに興味がなかった層も新規ファンとして取り込んでみせた。


ジャンルを超えて絶賛・支持された『弁論』をきっかけに、今ではあらゆるメディアで“追いこたけ”をしている新規ファンも少なくない。そして、自身のYouTubeチャンネルで配信している名作ゲーム「逆転裁判」シリーズの実況プレイや、ゲストに招いた芸人とのトークも人気の冠ラジオ番組、そしてバラエティ番組やドラマ、舞台への出演などなど、その多彩な活動を追う間にもこたけ氏の“勢い”を実感することになる。

Netflixほか多数配信中「おすすめスタンダップコメディ」5選

メロいどころか、その姿を見ればなんとなく体調が改善する栄養サプリメントの擬人化という例えもあながち大げさではないこたけ正義感だが、日常的に海外コンテンツを摂取している層にとっての『弁論』の第一印象は、“日本人目線で長尺のスタンダップコメディをしている”というもの。「これ、今すぐNetflixで全世界に配信するべきでは?」と思った人も多いのではないだろうか。

こたけ氏自身も海外のスタンダップのスタイルを踏襲しているとしたうえで、もっと日本にも浸透させたいと複数のメディアで語っている。もちろん日米双方の言語でステージに立つサク・ヤナガワやユリエ・コリンズ、宰務翔太など“今すぐTVに出ても通用する”コメディアンはいるが、練り込んだネタを短時間で爆発させるM-1型のお笑いシステムにおいては、まだ少数派と言わざるをえない。

 

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というわけで、こたけ氏を含め前述した面々のステージは劇場に出向いたり配信を個別に購入して楽しんでいただくとして、ここではNetflixほか動画サービスで配信されている海外のスタンダップコメディ作品をご紹介。社会問題を含む時事ネタや文化・言語ギャップ、家族や仕事の悩みあるあるからセクシュアリティに関するものまで、とくに押さえておきたい有名コメディアンに厳選してピックアップした。

『デイヴ・シャペルの止められないヤツら』(Netflix)

日本で現在もっともスタンダップコメディが充実しているのがNetflixで、世界各国のコメディアンによる大小さまざまなパフォーマンスが多数配信されている。そのなかで、こたけ氏も度々言及しているスタンダップ界の稼ぎ頭が、Netflixと60億円超の契約を結んだことも話題を呼んだデイヴ・シャペル。ステージ上でタバコをふかしながら語られる本気かジョークか分からないエピソードの数々は批判も多いが、実際に観てしまえば笑わずにはいられないギリギリの話術が彼の人気を支えているのも事実だ。たまに挿し込まれる音楽ネタも、普段からNetflix作品を観ていれば問題なく理解できるだろう。

日本での知名度は低いシャペルだが10代の頃から人気シットコムに出演し、大作コメディ映画にも出演しているので一度はその姿を観たことがあるはず。Netflixでは現在8本ほどコメディ作品が配信されているが、最新作『デイヴ・シャペルの止められないヤツら』では中東の話題をメインに据えていて、衣装の背中にコリン・キャパニック(※試合前の国家演奏に抗議したことで議論を巻き起こしたNFL選手)のパッチが貼られている。そしてプライベートではICE(米移民・関税執行局)によって命を奪われた看護師アレックス・プレッティの殺害現場に献花をするなど、単なる狼藉者ではないことを無言で証明している。

『ティグ・ノタロのここいれて嬉しい』(Netflix)

シャペル同様シニカルな笑いをベースにしつつ、よりオフビートな言葉遊び的ネタを持ち味としているのがティグ・ノタロ。彼女は2012年に乳がんを患い、それを自らステージの第一声でネタにしたことから世界的な名声を得た。いまでは『スタートレック』シリーズをはじめ映画やドラマにも出演しているので、その顔をご存知の方も多いだろう。

ティグのパフォーマンスは日本語字幕では笑いどころが掴みづらい瞬間もあるものの、人間が経験しうる“最悪の事態”を導入にヌルっと笑いに変換してみせるトークは必聴。彼女のキャリアを振り返るドキュメンタリー『ティグ:それでも立ち続ける』も併せて観ておくと、より味わい深い。なお、彼女自身が主演した伝記的ドラマ『ワン・ミシシッピ ~ママの生きた道、ワタシの生きる道~』はプライムビデオで配信中だ。

『ジミー・O・ヤン:人生はお買い得』(PrimeVideo)

そのプライムビデオでは、人気ドラマ『シリコンバレー』やNetflixの『ラブ・ハード』への出演でも知られるジミー・O・ヤンの『ジミー・O・ヤン:人生はお買い得』ほか2作が配信中。“ザ・中国系”のルックスを裏切らないネタの数々は欧米の観客には新鮮、かつ我々には頷くところも多々あり、苦笑しつつもいつの間にか“ジミー側”に立って聴いてしまうという不思議な楽しさが大きな魅力だ。

プライムビデオは他にもジム・ガフィガンなどグラミー常連の大物だけでなくイギリスのスタンダップコメディも充実していて、“日常会話が皮肉ベース”とまで言われる英国ジョークはアメリカ勢と比較してみても面白いだろう。

『アツコ・オカツカ:ファーザー』(ディズニープラス)

ディズニープラスが目をつけたのが、日系アメリカ人コメディアンのアツコ・オカツカ。彼女は不思議なダンス動画などがSNSでバズったので、その特徴的なボウルカットに見覚えがあるはず。いまやアジア系のポップアイコンとでも言うべき人気者のアツコだが、実際そのパフォーマンスは衣装を含めとてもポップで、悪口や下ネタに頼らない、誰も傷つけない陽性の面白さが最大の魅力だ。

ステレオタイプを誇張する“あるある”ネタなどディズニー配信も納得の全年齢対応ぶりなので家族で観ても安心だが、アツコ自身はアジア系の女性コメディアンの先駆者であるマーガレット・チョーを観てコメディアンを志したそうで、性差や家族の問題をネタにすることも多い。ディズニープラスでは、そのマーガレットも出演する女性コメディアンのドキュメンタリー『スポットライト』も必見だ。

『ハンナ・ギャズビーのナネット』(Netflix)

ハンナ・ギャズビーは、Netflix配信をきっかけに世界的にその名が知られるようになったオーストラリア出身のコメディアン。レズビアンであることをカミングアウトしているハンナは、自身が生まれ育ったタスマニアが1997年まで同性愛が違法であったことに言及する冒頭から、小さな笑いを散りばめつつセクシュアル・マイノリティについての話題を徐々にドライブさせていく。その過程で自虐ネタからの脱却やLGBTQ+当事者としての違和感、何につけても男性優位の社会、“規範的な”性差認識、さらにコメディの構成そのものに対しても斬り込んでいく。

そう聞くと“怒り”が前面に出ているのではないかと想像するかもしれないが、ハンナはセンテンス毎に小笑いを差し込む緩急のあるスタイルで話題を転がしていく。そもそも(日本のバラエティ番組のような)ステレオタイプを強調した演出を拒絶する前提なので、端々に余計な違和感やストレスもない。しかし中盤過ぎ、それまでの空気感が明確に変わる瞬間がある。そのとき観客は“ポリティカルなコメディのネタ”を超えたメッセージを受け取ることになり、同時に胸を締め付けられ、涙を抑えられなくなる。

ロニー・チェンやハサン・ミンハジも要チェック

他にも、日本人でも違和感なく笑える政治文化~人種ネタをキレ気味に語る中国系マレーシア人のロニー・チェンや、“落ちこぼれ”のインド系移民二世としてパワポ芸のような理路整然かつアグレッシブなネタで人気を集めるハサン・ミンハジなどは、世界基準の“時事と笑い”の初めの一歩としても最適だろう。

ちなみにHuluには今のところスタンダップの配信はないものの、数多くの俳優やコメディアンを輩出したアメリカの長寿コント番組『サタデー・ナイト・ライブ』を唯一配信中。人気コメディアンたちがゲストのハリウッド俳優やミュージシャンたちとともに演じるコントは時事ネタも満載で、さらに幕間のスタジオライブでは最新の音楽トレンドも知ることができるという非常にお得な番組である。

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