75歳にして初の長編映画監督デビューを果たす司慎一郎監督が、“老人たちの視点”でフィルムノワールを現代に更新する新ジャンル〈シニア・ノワール〉に挑んだ映画『枯れ木に銃弾』が、2月20日(金)より公開される。このたび、その世界観を鮮烈に伝える予告編が解禁となった。
75歳、初の商業映画監督デビュー!
75歳で初の長編監督デビューを果たした司慎一郎が、自身の人生と真正面から向き合い完成させた本作。高度経済成長を支えてきた世代が、社会から静かに切り離されていく現代を背景に、老いと尊厳、そして最後の選択を描いた作品だ。物語の中心にいるのは、東京の下町で暮らす老夫婦。長く「普通に生きてきた」彼らは、現金主義も通用しない機械化された社会の中で、次第に居場所を失っていく。自分たちは、もう価値のない存在なのか——。その問いを抱えながら、ふたりは静かに、しかし確かな最後の反抗へと踏み出していく。
主人公・山西喜一郎を演じるのは鷲田五郎。妻・あかね役には田所ちさ。抑制された演技と、言葉にならない沈黙の積み重ねが、老いた夫婦の時間と感情をリアルに立ち上げる。そして司監督は本作を、単なる犯罪劇ではなく、“老人のためのノワール映画”=シニア・ノワールとして位置づけている。体力も社会的立場も失いつつある人間が、それでも人生と向き合い、花を咲かせようともがく姿を、フィルムノワールの語法で描き出す。年齢に夢の限界はないというメッセージは、声高に語られるのではなく、一本の物語として静かに提示される。
予告編は、老夫婦が並んで食卓を囲む、ごくありふれた朝の風景から始まる。買い物をし、湯に浸かり、一日をやり過ごす。長く「普通に生きてきた」ふたりの、静かで穏やかな日常が丁寧に積み重ねられていく。しかし次の瞬間、「炸裂するシニア・ノワール」のテロップとともに銃声が鳴り響き、世界は一変する。
「昨日まで普通に生きていたのに」——その言葉に重なるのは、仕事でミスをして「コスパを考えてよ」と職場の若者の上司に突き放される喜一郎の姿。コンビニでは電子決済ができず、ふたりは時代から取り残されたかのように立ち尽くす。「時代が、社会が、おらたちを拒絶する」そうテロップとともに映し出されるのは、容赦なく追い詰められていく現実だ。尽きていく金、止まらない妻・あかねの咳、そして闇に沈む部屋。電気は、ある日突然止められる。「こんなはずじゃなかった」という言葉とともに、喜一郎は銃を構える。
そしてラストに掲げられるのは、「おらたちの今日は みんなの明日だ」という一文だ。老いと貧困、尊厳をめぐるこの物語が、今を生きる私たち自身の問題であることを、強い余韻とともに突きつける予告編となっている。
『枯れ木に銃弾』©ビジョンワン
『枯れ木に銃弾』は2月20日(金)よりシモキタ ‒ エキマエ ‒ シネマ K2ほかロードショー