1989年1月7日、昭和天皇が崩御され、64年間続いた昭和が幕を閉じました。そして翌1月8日、新たな元号「平成」が始まります。
平成という時代は、どのような時代だったのでしょうか。バブル経済の崩壊から始まり、長引く不況、阪神・淡路大震災や東日本大震災といった未曾有の自然災害、地下鉄サリン事件などの凶悪犯罪、インターネットの普及による情報革命、そして少子高齢化や格差社会の深刻化。平成の30年間は、まさに激動の時代でした。
そこで今回は、本記事の公開日である1月7日に合わせて、平成時代を象徴する映画10作品を紹介してみたいと思います。
激動の平成30年間
『その男、凶暴につき』(1989年)
監督:北野武
出演:ビートたけし、白竜、川上麻衣子 ほか
平成元年(1989年)は、ビートたけしこと北野武が映画監督としてデビューした記念すべき年でもあります。当初は深作欣二が監督する予定でしたが、スケジュールが折り合わず、たけし自身がメガホンを取ることになりました。暴力的な異端刑事・我妻が麻薬組織の真相を探るために繰り広げる戦いを描いた本作は、後の北野作品に通底する虚無的な暴力描写をすでに確立しています。理不尽な暴力が淡々と描かれるスタイルは、当時の日本映画界に衝撃を与えました。
『リング』(1998年)
監督:中田秀夫
出演:松嶋菜々子、真田広之、中谷美紀 ほか
「見たら一週間後に死ぬ」という呪いのビデオテープをめぐる恐怖を描き、平成のJホラーブームの火付け役となった作品です。鈴木光司の小説を映画化した本作は、貞子という圧倒的な存在感を持つ怪異を生み出しました。テレビレポーターの浅川が、姪の死をきっかけに呪いのビデオテープの謎を追う物語は、平成初期のデジタル化時代と見事に融合していると言えるでしょう。続編『らせん』との2本立て興行というスタイルも話題になりました。
『バトル・ロワイアル』(2000年)
監督:深作欣二
出演:藤原竜也、前田亜季、山本太郎 ほか
長引く不況、凶悪化する少年犯罪――そんな時代の閉塞感と不安を鮮烈に映し出した問題作です。大不況と少年犯罪の多発を背景に制定された「BR法」により、無作為に選ばれた中学生たちが最後の一人になるまで殺し合わせられるという、あまりにも過酷で理不尽な設定は、賛否両論を巻き起こし、R15指定ながら興収31億円を超える大ヒットとなりました。
『千と千尋の神隠し』(2001年)
『千と千尋の神隠し』© 2001 Hayao Miyazaki/Studio Ghibli, NDDTM
監督:宮崎駿
声の出演:柊瑠美、入野自由、夏木マリ ほか
平成を代表するアニメーション映画であり、平成の国内興行収入1位を記録した国民的作品です。両親と共に引越し先へ向かう10歳の少女・千尋が、不思議な町に迷い込み、豚に変えられた両親を救うために奮闘する物語。強欲な魔女・湯婆婆に名前を奪われ、湯屋で働くことになった千尋が、様々な試練を乗り越えて成長していく姿は、まさに“自分探し”の冒険ファンタジーです。現代日本を舞台にしながらも、伝統的な精神世界や八百万の神々を描き、失われつつある日本文化への郷愁を感じさせます。
『誰も知らない』(2004年)
監督:是枝裕和
出演:柳楽優弥、北浦愛、木村飛影 ほか
1988年に実際に起きた事件をモチーフに、母親に置き去りにされた4人の子供たちが、大人に知られることなく懸命に生きていく姿を描いた衝撃作。無縁社会、ネグレクト、毒親といった平成を象徴する社会問題の数々が浮き彫りになります。2004年のカンヌ国際映画祭では、長男役の柳楽優弥が日本人初、そしてカンヌ史上最年少で男優賞を受賞し、世界に衝撃を与えました。声高に社会を告発するのではなく、子供たちの日常を淡々と見つめることで、観る者の心に深い問いを投げかけます。
『ぐるりのこと。』(2008年)
監督:橋口亮輔
出演:木村多江、リリー・フランキー、倍賞美津子 ほか
1993年からの10年間、平成という時代を生きた一組の夫婦の軌跡を、当時の社会的事件を背景に描いた感動作です。生まれたばかりの子供を亡くすという悲劇に見舞われた夫婦が、その悲しみを抱えながらも再生していく物語。几帳面な妻・翔子と優柔不断な夫・カナオの日常が、連続幼女誘拐殺人事件や地下鉄サリン事件といった平成を代表する凶悪事件と並行して描かれます。夫が法廷画家として大事件の裏側を目撃する一方で、自分たちの小さな日常と向き合う様子は、平成という時代を生きた人々のリアルな姿を映し出しています。
『告白』(2010年)
監督:中島哲也
出演:松たか子、木村佳乃、岡田将生 ほか
2009年の本屋大賞に輝いた湊かなえの小説を映画化した、戦慄の復讐劇です。娘を殺された女性教師が、終業式の日にクラスの生徒たちに告白します――犯人はこのクラスにいる2人の生徒であり、少年法に守られた彼らを自分の手で処罰すると。10代の闇、少年犯罪、いじめ、モンスターペアレント――平成社会が抱える様々な問題を凝縮したような物語は、“イヤミス(嫌な気持ちになるミステリー)”ブームの先駆けとなりました。
『ヘルタースケルター』(2012年)
監督:蜷川実花
出演:沢尻エリカ、大森南朋、寺島しのぶ ほか
岡崎京子の伝説的コミックを、写真家・蜷川実花が映画化。全身美容整形という秘密を抱え、芸能界の頂点に君臨するトップモデル・りりこ。完璧な美貌の裏には、免疫抑制剤の服用が欠かせない危うい現実がありました。整形の後遺症が体を蝕み、後輩モデルの台頭に脅かされ、精神的にも追い詰められていくりりこの姿は、平成という時代が生み出した“承認欲求”の怪物そのものとも言えます。
『シン・ゴジラ』(2016年)
総監督:庵野秀明
出演:長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ ほか
「ヱヴァンゲリヲン」シリーズの庵野秀明が脚本・総監督を務め、日本版ゴジラとして12年ぶりに復活させた特撮大作。東京湾に突如出現した巨大不明生物“ゴジラ”に対し、想定外の事態に直面した日本政府がどのように対応するのかを、リアルに描いています。東日本大震災と福島第一原発事故を経験した平成後期の日本だからこそ描けた、危機管理と政府の意思決定プロセスを克明に映し出した作品とも言えます。官僚機構の硬直性と、それでもなお日本を守ろうとする人々の奮闘に胸がアツくなります。
『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018年)
監督:大根仁
出演:篠原涼子、広瀬すず、板谷由夏 ほか
韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』(2011年)を、1990年代の日本を舞台にリメイクした青春音楽映画。コギャルブームに沸いた90年代に青春を謳歌した女子高生グループ“サニー”の6人。それから20年以上が経ち、専業主婦となった奈美は、末期ガンで余命わずかなリーダー・芹香と再会します。「死ぬ前にもう一度みんなと会いたい」という芹香の願いを叶えるため、奈美は音信不通となっていた仲間たちを探し始めます。輝いていた90年代と、それぞれに悩みを抱える現在が交錯し、珠玉の90年代J-POPとともに描かれる友情の物語。平成という時代を生きた女性たちのリアルな姿と、失われた青春への郷愁が、観る者の心に深く響きます。
それぞれが平成という時代の断面を切り取った印象的な10作品になったのではないでしょうか。「平成」には、ここでは紹介しきれなかった様々な名作が多数存在します。1月7日、昭和から平成へと時代が移り変わったこの日に、あらためて平成が生み出した作品を思い返してみるのも面白いかもしれません。