2025年の漢字は「熊」! 自然との距離感を考える「熊映画」5選

2025年の漢字は「熊」! 自然との距離感を考える「熊映画」5選

毎年恒例の「今年の漢字」、2025年は「熊(くま)」に決定しました。選ばれた理由としては、全国で相次いだクマの出没や人身被害、そして経済活動への深刻な影響などがあげられています。市街地にまで現れるクマの姿は、多くの人々に衝撃を与え、人と自然との共存について改めて考えるきっかけとなりました。

昔からクマをモデルとしたキャラクターは数多く存在しており、いずれも愛らしい姿で人気を集めています。しかし、本来のクマは鋭い爪と牙を持つ、圧倒的な力を秘めた野生動物です。キャラクターとしてのクマに親しみすぎたことで、私たちは本来の熊が持つ恐ろしさを忘れてしまっているのかもしれません。そして、それは熊に対してだけでなく、自然全体に対する畏敬の念の希薄化を意味しているのではないでしょうか。

そこで今回は、人間と熊(自然)との関係性を描いた映画を5作品をピックアップしてみたいと思います。

自然を愛し、畏れ、敬う

『グリズリー』(1976年)

監督:ウィリアム・ガードラー
出演:クリストファー・ジョージ、アンドリュー・プライン、リチャード・ジャッケル ほか

【あらすじ】
北米の美しい森林公園に、突如として巨大な灰色熊(グリズリー)が出現。2人のティーンエイジャーのキャンパーが最初の犠牲者となってしまいます。ひとたび人間の肉を味わったグリズリーは次々に人を襲うようになり……。

【おすすめポイント】
『JAWS/ジョーズ』(1975年)の大ヒットを受けて製作された、海のサメを山の熊に置き換えたような構造の古典的動物パニック映画のうちの1本。本作が興味深いのは、経済的利益を優先して危険を軽視する人間の愚かさが描かれている点です。「熊が出たくらいで公園を閉鎖できない」という判断が、さらなる悲劇を招く様子は、まさに現代への警鐘のようです。

『マタギ』(1982年)
監督:後藤俊夫
出演:西村晃、山田吾一、稲葉義男 ほか

【あらすじ】
関口平蔵は、古来からの伝統を守り続ける老マタギ(熊猟師)です。彼の頬から顎には、かつて3メートルを超える巨熊と組み打ちになった時の深い傷痕が刻まれています。人々はそんな化け物熊がいるわけないと信じませんでしたが、平蔵は「あいつは俺が撃つ」と心に固く決めていて……。

【おすすめポイント】
日本の伝統的な熊猟師「マタギ」の世界を描いた貴重な作品。マタギとは、単なるハンターではなく、自然と共生し、山の掟を守り、熊を敬いながらも狩る――、そんな独自の文化を持つ人々です。本作は、老マタギと孫、そして一匹の犬の絆を通じて、自然に対する畏敬の念と、命をいただくことの重さを描いています。現代では、マタギの稼ぎだけで生活できる時代は終わり、伝統が失われつつあります。しかし、彼らが持っていた「自然との適切な距離感」こそ、今の私たちが見失ってしまったものではないでしょうか。

『リメインズ 美しき勇者たち』(1990年)

監督:千葉真一
出演:真田広之、村松美香、菅原文太 ほか

【あらすじ】
大正末期の北国。マタギ衆とその家族は、鷹の爪と呼ばれる山村で暮らしていました。マタギの射手・鋭治は、庄屋の奉公を喧嘩でやめて戻ってきた男勝りな性格の幼なじみのユキと2年ぶりに再会します。そんな矢先、ユキの父、母、弟の3人が「赤マダラ」と呼ばれる巨大な人食い熊に惨殺されるという大惨劇が起こります。翌朝、鋭治を含むマタギ衆が赤マダラ退治に出発。家族の復讐を胸に誓ったユキも連れて行って欲しいと懇願するのですが……。

【おすすめポイント】
日本を代表するアクション俳優である千葉真一の監督デビュー作。本作の見どころのひとつとして、本物の熊を使った撮影があります。厚さ20ミリの防弾ガラスを2枚重ねにした檻の中に人間が入り、実際に熊と対峙するという、緊張感あふれる撮影方法で圧倒的な迫力を実現。画面越しに伝わる熊の圧倒的な存在感と力強さは、CGでは決して表現できないリアリティがあります。

『ブラックフット』(2014年)

監督:アダム・マクドナルド
出演:ミッシー・ペリグリム、ジェフ・ループ、ニコラス・キャンベル ほか

【あらすじ】
アウトドア好きなアレックスと、アウトドア初心者のジェンのカップルは、カナダの雄大な自然の中でキャンプを楽しむことに。経験豊富なアレックスは、ジェンを森の奥深くへと連れて行きますが、その夜、二人は高圧的で怪しげな男・ブラッドと出会います。彼を避けるため小道へ向かった二人は、広大な森の中に迷い込んでしまい……。

【おすすめポイント】
実話を元に製作されたリアルな恐怖を描くアニマルパニック作品です。熊そのものの恐ろしさに加え、「自然を甘く見た人間の代償」を描いている点にも注目です。アレックスは自分の経験を過信し、ジェンは自然の厳しさを理解していませんでした。自然は美しいと同時に、圧倒的に危険な場所でもあります。適切な準備と知識、そして何より自然への畏敬の念がなければ、簡単に命を落としかねません。

『レヴェナント:蘇えりし者』(2015)

監督:アレハンドロ・G・イニャリトゥ
出演:レオナルド・ディカプリオ、トム・ハーディ、ドーナル・グリーソン ほか

【あらすじ】
1823年、アメリカ北西部の未開の大地。ベテラン・ハンターのヒュー・グラスは、息子ホークと共に狩猟隊に同行していました。ある日、グラスはハイイログマに襲われ、瀕死の重傷を負ってしまいます。隊長は旅の負担になるとして、グラスを見捨てることを決断。部下に、グラスの最期を看取り埋葬するよう命じます。しかし、彼らはグラスがまだ生きているにもかかわらず、彼を置き去りにして……。

【おすすめポイント】
レオナルド・ディカプリオが極寒の大自然を相手に体当たりの熱演を披露し、アカデミー主演男優賞を受賞したサバイバル・アクション大作です。冒頭の熊襲撃シーンは、映画史に残るであろう衝撃的な迫力で、観る者を圧倒します。CGと実写を巧みに組み合わせた熊の攻撃は、あまりにもリアルで恐ろしく、自然の脅威を痛感させられます。しかし本作が描くのは、熊の恐ろしさだけではありません。極寒、飢え、傷、そして孤独――あらゆる自然の脅威に晒されながらも、生き延びようとする人間の執念が描かれています。自然は美しいと同時に、圧倒的に過酷で容赦がありません。

熊の恐ろしさと自然の厳しさを、様々な角度から描いた5作品になったのではないでしょうか。本来、人里とは異なる領域に暮らす野生動物たち。彼らとの適切な距離感を保つことは人間の責任です。自然を畏れ、敬い、そして適切に距離を取る――そんな当たり前のことを、私たちは思い出す必要があるのかもしれません。

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