時代を超えて愛され続ける国民的バンド・スピッツの名曲を原案にしたラブストーリー『楓』が、12月19日(金)より公開されます。1998年にリリースされ、今なお多くの人々に愛され続けるこの楽曲が、四半世紀の時を経て映画として結実することに、多くのファンが心を躍らせているのではないでしょうか。
日本には数多くの名曲があり、それらをモチーフにした映画も少なくありません。そこで今回は、邦楽の名曲を原案・モチーフにした映画5作品を紹介します。どの作品も、元となった楽曲の世界観を大切にしながら、映画ならではの物語を紡いでいます。
珠玉の名曲がスクリーンに
『なごり雪』(2002年)
監督:大林宣彦
出演:三浦友和、須藤温子、細山田隆人 ほか
【あらすじ】
もうすぐ50歳を迎える梶村祐作は、28年間連れ添った妻に突然去られ、失意のどん底にいました。そんなある日、かつての親友・水田健一郎から一本の電話が入ります。水田の妻・雪子が危篤状態だというのです。水田の願いを聞き入れ、故郷の大分県臼杵へと戻った祐作。病床に横たわる雪子の姿を見たとき、28年前の青春の日々が鮮やかに蘇ってきます。祐作に恋心を抱いていた雪子、それに気づきながらも応えることのできなかった祐作、そして雪子を愛する水田。3人で過ごした輝かしくも切ない思い出が、今、一つの結末を迎えようとして……。
【おすすめポイント】
南こうせつを中心に結成されたフォークバンド・かぐや姫のメンバーの一人である伊勢正三が作詞・作曲し、後年女性シンガー・イルカが歌い大ヒットを記録したフォークソングの金字塔「なごり雪」をモチーフに、巨匠・大林宣彦監督が描いた、甘く切なく、そして深くノスタルジックなラブストーリーです。
『ハナミズキ』(2010年)
監督:土井裕泰
出演:新垣結衣、生田斗真、蓮佛美沙子 ほか
【あらすじ】
幼くして父を亡くし、北海道で母と二人で暮らす高校生の紗枝。ある日、漁師の父を手伝う高校生・康平と出会い、二人は恋に落ちます。やがて紗枝は東京の大学に合格し、康平は北海道に残って漁師を続けることに。離れていても気持ちは変わらないと信じ、遠距離恋愛が始まります。しかし、東京で新しい世界に触れ、次第に洗練されていく紗枝を見て、康平の心は揺れ動き……。
【おすすめポイント】
一青窈の名曲「ハナミズキ」をモチーフに、『涙そうそう』『恋空』のスタッフが贈る純愛ストーリーです。新垣結衣と生田斗真という人気俳優の共演も話題となりました。北海道と東京という距離だけでなく、成長とともに広がっていく心の距離をリアルに描きます。
『雪の華』(2018年)
監督:橋本光二郎
出演:登坂広臣、中条あやみ、高岡早紀 ほか
【あらすじ】
幼い頃から病気がちだった美雪は、若くして余命1年と宣告されてしまいます。全てを諦めかけていた美雪でしたが、ひったくりに遭った際、偶然助けてくれた男性に心を奪われます。半年後、その男性・悠輔と運命的な再会を果たします。悠輔は兄弟を男手一つで育てながら、ガラス工芸家を目指していました。彼が働くカフェが経営危機に陥っていることを知った美雪は、勇気を振り絞り、「100万円を援助する代わりに1ヶ月だけ恋人になってほしい」と申し出るのですが……。
【おすすめポイント】
中島美嘉の名曲「雪の華」をモチーフに、東京とフィンランドを舞台に描かれる切ないラブストーリーです。登坂広臣と中条あやみという若手実力派が、限られた時間の中で精一杯愛し合う二人を熱演。限られた時間の中でこそ輝く愛の尊さを、美しい映像美とともに描き出します。
『糸』(2020年)
監督:瀬々敬久
出演:菅田将暉、小松菜奈、斎藤工 ほか
【あらすじ】
平成元年に生まれた高橋漣と園田葵は、13歳の時に運命的な出会いを果たします。互いに深く愛し合い、駆け落ちまで決行する二人でしたが、すぐに大人たちによって引き離され、そのまま離ればなれになってしまいます。8年後、友人の結婚式で偶然再会した漣と葵。しかし既に別々の人生を歩み始めていることを確認するだけで、その場を後にします。もう決して交わることはないと思われた二人でしたが……。
【おすすめポイント】
中島みゆきの不朽の名曲「糸」をモチーフに、平成という時代を生きた男女の30年にわたる物語。「縦の糸はあなた 横の糸は私 織りなす布は いつか誰かを暖めうるかもしれない」という歌詞が示すように、二人の人生が平成の歴史とともに紡がれていく様子が丁寧に描かれています。
『大きな玉ねぎの下で』(2025年)
監督:草野翔吾
出演:神尾楓珠、桜田ひより、伊東蒼 ほか
【あらすじ】
昼はカフェ、夜はバーとして営業している店舗。そこで夜と昼で別々にアルバイトをしている丈流と美優は、同じ場所で働いているものの、一度も顔を合わせたことがありませんでした。しかし、連絡用のバイトノートを通じてやり取りするうちに、次第に本音で語り合える関係になっていきます。互いの素性を知らないまま心を通わせていく二人は、やがて武道館で初めて会う約束をするのですが……。
【おすすめポイント】
爆風スランプの名曲「大きな玉ねぎの下で」をモチーフに描かれた、甘酸っぱくも心温まるラブストーリーです。神尾楓珠と桜田ひよりという若手注目株が主演を務め、現代と80年代という二つの時代を巧みに交錯させながら物語が展開していきます。
それぞれの楽曲が持つ世界観を大切にしながら、映画ならではの物語性と映像美で新たな感動を生み出す5作品になったのではないでしょうか。
音楽には、わずか数分の間に物語を紡ぎ、聴く者の心に深い感動を呼び起こす力があります。そして映画には、その物語をさらに豊かに膨らませ、視覚と聴覚を通じて私たちの心に刻み込む力があります。
「なごり雪」の切なさ、「ハナミズキ」の祈り、「雪の華」の儚さ、「糸」の運命、そして「大きな玉ねぎの下で」の純粋さ。どの作品も、音楽を愛する人々の心に深く響くはずです。