「WTF顔が生配信」なぜFBI長官がネットで嘲笑されているのか “悪名高い初代長官”描いた伝記映画と比較

「WTF顔が生配信」なぜFBI長官がネットで嘲笑されているのか “悪名高い初代長官”描いた伝記映画と比較
『J・エドガー』© 2011 Warner Bros. Entertainment Inc.
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カシュ・パテルとJ・エドガー:権力の内と外

2025年、ドナルド・トランプ大統領によってFBI長官に任命されたカシュ・パテルは、就任直後から「トランプの敵を追い詰めるためのFBI再編」を公言し、議会証言でもその姿勢を崩さなかった。その強硬なスタンスは、FBIの初代長官J・エドガー・フーヴァーを想起させると一部の歴史家は指摘する。だが、両者の間には決定的な違いがある。

『J・エドガー』© 2011 Warner Bros. Entertainment Inc.

フーヴァーは1924年から1972年までFBI長官を務め、組織の制度設計と捜査技術の近代化を推進した。彼は共産主義者や公民権運動家を違法に監視し、権力を濫用した人物としても知られるが、同時に“政権から一定の距離を保つ官僚”として振る舞う人物でもあった。

一方、パテルはFBI内部でのキャリアを持たず、トランプ政権の忠誠者として登用された政治任用者である。イェール大学の歴史学者は、「パテルのような人物は、フーヴァーでさえ眉をひそめただろう」と語っている。

『J・エドガー』© 2011 Warner Bros. Entertainment Inc.

この比較は、2025年3月にラジオ局WBURの番組内でも取り上げられ、「パテルはフーヴァー以上にFBIを政治的武器として使おうとしている」と言及された。フーヴァーが築いた制度を、パテルは“忠誠人事”によって再構築しようとしているのか? その構図は、民主主義の制度的防波堤がいかに脆弱であるかを物語っている。

『J・エドガー』© 2011 Warner Bros. Entertainment Inc.

映画『J・エドガー』が描くFBI長官の権利欲と個人的葛藤

この緊張関係を把握する上で、2011年に公開された映画『J・エドガー』(監督:クリント・イーストウッド/主演:レオナルド・ディカプリオ)が役立つかもしれない。映画では、フーヴァーの公的キャリアと私生活が交錯し、彼の権力欲と孤独、そして国家への執着が描かれる。キング牧師への盗聴命令や、クローゼット・ゲイとしての葛藤など、実話を基にフーヴァーの「国家と個人の境界線」が浮き彫りにされている。

『J・エドガー』© 2011 Warner Bros. Entertainment Inc.

今、カシュ・パテルという新たなFBI長官が登場したことで、フーヴァーの亡霊が再び呼び起こされている。だが、その影はより濃く、より直接的に政権の意志を反映していると言えるだろう。映画『J・エドガー』が描いた「制度の中で暴走する個人」は、2025年の混迷するアメリカ社会において「制度そのものを塗り替えようとする忠誠者」へと姿を変えたのかもしれない。

『J・エドガー』はU-NEXT、PrimeVideoほかで配信中

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