「エレン・グリーンバーグ死亡事件」の真相
2011年1月26日、米フィラデルフィアのマンションで、27歳の小学校教師エレン・グリーンバーグが死亡しているのが発見された。彼女の遺体には「20か所の刺し傷」があり、そのうち「10か所は後頭部と首に集中」していた。また、胸には「刃渡り25センチの包丁」が突き刺さったままの状態だったという。
この事件は、エレンの死因が「他殺から自殺へと不自然に変更された」ことにより、ネット上では長らく“その後どうなった?”案件として噂や議論が絶えなかった。そんな不可解な事件が、ダコタ・ファニングとエル・ファニングが製作総指揮を務めるドキュメンタリー『Death in Apartment 603: What Happened to Ellen Greenberg?(原題)』として、米Huluにて9月より配信中だ(※日本配信は未定)。
ということで、いま本国で大きな話題を呼んでいるドキュメンタリーの日本配信に備え、エレンの遺体発見から司法解剖、生前のエレンの状況、その後の法廷闘争などをざっと振り返ってみよう。
As Ellen Greenberg’s Parents Vie To Reopen Case Of Her Suspicious Death, ABC News Studios, Elle & Dakota Fanning & Blackfin Investigate For Hulu https://t.co/6s1dznFRYN
— Deadline (@DEADLINE) July 10, 2025
①発見時の状況は?
第一発見者はエレンの婚約者サム・ゴールドバーグ。彼は午後4時45分頃にジムへ出かけ、約1時間後に帰宅。部屋のドアは内側からラッチがかかっており、鍵では開けられなかった。
サムは何度もエレンに電話やメッセージを送ったが応答がなかったとのことで、最終的にドアを破って侵入。キッチンでエレンが血まみれで倒れているのを発見し、911に通報した。
②「他殺、やっぱり自殺」検視と死因の不自然な変遷
当初、検視官を務めた医師は死因について「他殺」と判定。しかし数週間後、警察の要請により「自殺」に変更されたという。「部屋が密室であり、他者の侵入痕がない」こと、そして「包丁にエレン以外の指紋がない」ことなどが理由とされた。
ただし、遺体には“複数の打撲痕(異なる治癒段階)”も確認されており、家族や専門家は「自傷行為としては不自然」と主張。だが自殺と断定されたことにより事件現場はきれいさっぱり清掃されてしまい、多くの証拠が消失してしまう。
Les parents d’Ellen Greenberg, une enseignante de Philadelphie qui est morte en 2011 après avoir été poignardée 20 fois, ont obtenu l’autorisation de la Cour suprême de Pennsylvanie de contester la décision disant que sa mort était un su**cide.
Le 26 janvier 2011, une tempête de… pic.twitter.com/qElp3uCRwD
— C’est Terrifiant (@CestTerrifiant) January 11, 2025
③通院歴があった? エレンの精神状態は
事件前、エレンは不安障害と不眠に悩み、精神科医の診察を受けていた。複数の処方薬によって症状は一時的に改善していたとされる。なお、日記や診察記録には「自殺願望はない」と明記されていた。
④両親の長きにわたる法的闘争
エレンの両親ジョシュアとサンディは、死因の再調査を求めてフィラデルフィア市を提訴。そして2025年2月、検視担当医は「死因は自殺以外であるべき」との文書に署名した。市は再調査に合意したが、進捗は遅れており、裁判所は2025年10月14日までの完了を命じている。
Who Killed Beloved Teacher Ellen Greenberg? Inside Her Parents’ Quest for Answers https://t.co/tcSfVFvoom
— People (@people) June 19, 2025
十数年にわたる異議申し立てとメディア~世論の関心、ドキュメンタリー化への動き
エレンの両親は死因が「自殺」に変更されたことに強く反発し、死亡の同年から2015年にかけて独自に証拠を収集。 包丁の刺し傷の位置、打撲痕、精神状態などについて、法医学者や精神科医の意見書を集めることで、「自傷行為としては不自然」とする根拠を構築していった。
そして2016年からはメディアへの働きかけも行った。地元紙やテレビ局に働きかけて事件の再注目を促しつつ、HuluやCourtTVなどのドキュメンタリー制作に協力。さらに2020年代に入ってからも、当時の担当検視官による「自殺判定は誤りだった」とする文書への署名を根拠に、再調査を求める法的準備を進めていったそうだ。
そして2025年、フィラデルフィア市を相手取り、死因の再調査と責任追及を求めて提訴。やっとのことで裁判所が再調査の早期完了を命じるまでに至ったのだ。
――14年間にわたって、司法と行政の壁に挑み続けたエレンの両親。事件はABCニュース制作のドキュメンタリーによって世界中に知れ渡るはずだが、とにかく一刻も早い事件の真相究明を願う。