「予告だけで泣ける」と注目を集めた『はらむひとびと』“幼児車内置き去り事件”は誰にでもある話

「予告だけで泣ける」と注目を集めた『はらむひとびと』“幼児車内置き去り事件”は誰にでもある話
©︎はらむひとびとパートナーズ

妊娠・出産・育児、そして働くこと——。いまを生きる“私たち”の痛みと希望を映し出す話題作『はらむひとびと』が、7月11日(金)より公開中。本作の公開を記念して、7月12日(土)に本作の公開を記念した舞台挨拶が新宿武蔵野館で行われ、相馬有紀実、瀬戸かほ、磯西真喜、グソクムズ(たなかえいぞを、堀部祐介)、中嶋駿介監督が登壇した。

いまを生きる“私たち”の痛みと希望を映し出す話題作

本作は、「車内置き去り事件」と「育児と仕事の両立」を題材に、家族と社会の歪みを暴き出す、衝撃のヒューマンサスペンス。企画・プロデュース・主演を務めるのは、俳優の相馬有紀実。自身の妊娠・出産・育児と並行しながら作り上げた、まさに命がけの映画だ。中嶋駿介監督による初長編映画となる。

左から、グソクムズ(堀部祐介 たなかえいぞを) 瀬戸かほ 相馬有紀実 磯西真喜 中嶋駿介監督
©︎はらむひとびとパートナーズ

相馬有紀実、「幼児車内置き去り事件」を描いた本作は「誰にでもある話」

舞台挨拶で感極まり、涙を見せた相馬は、「(製作時は)怒涛すぎてあまり記憶にない」と苦笑いを浮かべながら、「先月、私の娘が2歳になりました。お腹にいる前からこの作品に携わっていたのに、2歳になっているというびっくりな状態でした。今回は、育児と仕事の両立がテーマだったので、自分自身が潰れないように意識しながら、そうしたことに悩んでいる人の力になればいいなと思って作りました。ただ、実際に時間がなさすぎて。しかも、大事な時に娘が熱を出すんです。オンラインで娘を抱っこしながら会議をさせてもらい、なんとかやってこれました」と本作の製作時を振り返った。

また、本作が長編映画デビュー作となる中嶋は、「この作品にはテーマが2つありますが、僕が着目したのは『幼児車内置き去り事件』です。夏になると起きてしまう事故、事件ですが、そういった事件が起きた際、閉じ込めた当事者が一方的に報道などで責められます。でも、もしかして、閉じ込めた当事者の色々な要因が重なったのかもしれないと思って、そこを丁寧に紐解きたかった」と思いを語った。

©︎はらむひとびとパートナーズ

3歳の息子・ゆうりを育てるも、社会から隔絶されていく日々の中、育児ノイローゼに陥っていた亜湖と、夫との間に望まぬ妊娠をしてしまい悩む郁美という旧友の二人が、偶然再開し、交流を重ねるという本作。やがて協力関係を築いた二人は、それぞれが前を向いて生きていくが、そんな時、ゆうりの置き去り事件が発生してしまう。

相馬とともにW主演を務めた瀬戸は、自身の演じた郁美という役柄について「多面的な人だと思います。“こういう人である”が当てはまらないんです。『こういう時もあればこういう時もある。でも、それが郁美だよね』と思っていました。なので、監督の指示のもと、一緒に作り上げていった印象です」と思いを巡らせた。

中嶋監督とは映画では2作目のタッグだけに息もぴったりな様子で、「夫との俊介との関わり方も台本を読んだだけでは、どうやって演じたらいいんだろうというところがあったので、そうしたところも監督とチューニングしながら進めていったことを覚えています」と話した。

相馬が演じる亜湖の義母役の磯西は「人は誰しもいっぱいいっぱいになって、許容量を超えてしまうことがあると思いますが、そこで何か起きてしまった時に、本当に当人の問題なのかということを、日常的な場面でも考えるようになりました。それは自分にとって大きなことでした」と本作に出演したことでの変化を明かす。

そして、「撮影では、どのシーンも厳しくて、自分的にも苦しく、しんどかったんです。特にお医者さまのお話を聞いた後に、亜湖ちゃんを殴りつけるシーンでは、相馬さんから『手加減しないで、どんどんやってください』と言われたこともあり、本当に手加減なしでやらせていただきました」と撮影時の思い出を語った。

この日は、主題歌の「hand」を手がけるグソクムズも登壇。ヴォーカルを担当するたなかは、「脚本を読んで、『重っ』と思いました。普段はヘラヘラしている人なので、これを歌うのはすごいカロリーだなと思って、バンドメンバーとともに真剣に取り組ませていただきました。いい勉強になりました」とコメント。ベース担当で、本楽曲の作詞・作曲も手がけた堀部は「MVでもお世話になっている中嶋監督の映画なので、嬉しい反面、映画の内容的にもプレッシャーもありました」と思いを述べた。

舞台挨拶の最後には、中嶋監督は「昨日からグソクムズさんの『hand』のMVが公開されていますが、実はそこに亜湖が出てきます。ゆうりが寝てしまってから、ゆうりが目覚めるまでの間の亜湖を描いたMVになっています。なので、映画をご覧になった後に観ると、沁みて沁みて…すごいです」との情報も。さらに、堀部は「楽曲も映画も同じように誰かが抱えている痛みや背景を想像してほしいなと思います。それを想像することで誰かに優しくなれたらというメッセージを込めたので、それが多くの方に伝われば」、たなかは「権利の選択肢がない人が結局、辛い思いをするという社会が少しでも良くなればと思って今回も歌わせてもらいました。この映画を観て人に優しくできたら、この映画を公開する意味があると思います。そうなれば嬉しいです」とメッセージを贈った。

続いて、磯西は「決して他人事ではなく、自分ごととしてこの作品のことを考えていただけたらと心から思います。そのために一人でも多くの方に届いたらいいなと思っています」、瀬戸は「この作品を観て感じていただけることがあると思います。それをぜひSNSでも呟いたり、投稿していただいたら全部見ます!」と話し、相馬は「これは誰にでもある話だと思います。ボタンの掛け違いでこうしたことが起こるのだと思うので、この作品が一人でも多くの方に届けばいいなと思っています」とアピールして、舞台挨拶を締めくくった。

『はらむひとびと』は、新宿武蔵野館ほか全国公開中

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