監督インタビュー
『アイニージューデッド!』©2020 Bad Taste Video LLC
Q1.カルト映画の神様などと呼ばれるロイド・カウフマンの元で制作アシスタントをされていたとの事ですが、映画監督を目指したのはその頃からでしょうか?何かきっかけがあれば教えて下さい。
A.10歳くらいの頃から映画監督になりたいと思っていたよ。ちょうどYouTubeが登場したばかりの時期で、自分がオモチャで遊んでるくだらない動画をアップしたんだ。その頃はまだYouTubeで映画を作っている人が少なかったから、結構多くのフォロワーが付いてね、それがきっかけで、大人になっても映画を作り続けたいと思うようになったんだ。
高校生になって、ちょっと反抗的なパンク少年になったころ、トロマ・エンターテイメントの映画にはまったんだ。ロイド・カウフマンは俺のヒーローだった。それで、彼の作風に影響を受けた短編映画『Meat Lovers(原題)』を作ったんだ。それがトロマダンス映画祭(TromaDance Film Festival)で上映されて、ロイドが観てくれた。そして、次回作の制作に誘ってくれたんだ。彼の元で働いたことが、俺にとっての映画学校みたいなものだったね。その経験が、自分の初の長編映画『アイニージューデッド!』を作る上で大きな助けになったよ。
Q2.今作ではそのロイド・カウフマンがカメオ出演していますが、制作中に何かアドバイスを受けましたか?
A.彼は、「映画はとても良い出来だから、トロマよりももっと大きい配給会社を探した方がいい。そうすれば、トロマのファン層以外にも届いて、もっと成功するかもしれない」と言ってくれたんだ。最終的に、俺たちはそのアドバイスに従ったんだけど、そのおかげで日本での上映も含め、より多くの観客に届けられたと思うよ。
Q3.独特な世界観やモンスターの登場でカルト的に沼るファンも多いのではないかと感じました!この世界観はどのようなもの・作品から着想を得たのでしょうか。また、幻覚症状でハンバーガーが話し出したり、ベタベタモンスターが登場しますが、モンスターたちの造形で、こだわった点を教えてください!
A.たぶん、あのキャラクターたちは、子どもの頃にカメラの前でオモチャを使って遊んでた延長みたいなものだと思う。今は自分も大人になって、オモチャも映画で使うスケールになっただけでね。クリーチャーのパペットはエリック・フォックスが作ってくれたんだ。今は俺の自宅オフィスのデスクに飾ってあるよ。
それから、『グレムリン』は俺の大好きな映画のひとつで、『アイニージューデッド!』のクリーチャーたちは間違いなく影響を受けているよ。
Q4.パンク青年ドゥードが繰り広げる物語のパートと、その映画を作る製作側のパートが登場しますが、製作側のパートはご自身の境遇を重ねられているのかなと想像できました。このような構成にした理由、製作側のパートに込めたものを差支えない範囲で教えてください。
A. 映画の製作側の部分は、実際の映画作りとはまったく違っていました。『アイニージューデッド!』を作るのはすごく楽しかったです! 多くの人が製作側の部分が実際の映像だと思っているようなのですが、それはすごく面白いことです。実際には全て脚本がある物語なので、そのシーンは全部絵コンテを作って、俳優たちとリハーサルもしました。ウェス・クレイヴンの映画『エルム街の悪夢/ザ・リアルナイトメア』に強く影響を受けて、監督自身が自分の映画に出演するというアイデアをもう少し突き詰めたいと思ったんです。うまくいったと思います。だって、大抵の人がそれが本当だと思っているみたいですから。
Q5.”おバカのグミ”を食べてハイになったドゥードのように、撮影中、最もハイになったシーンはどこですか?撮影時のエピソードもお聞かせください。
A.正直なところ、撮影現場で「ハイ」になったと感じたことはあまり無いですね。時々、上手く撮れたシーンに満足することはありましたが、すぐに次のシーンの撮影が待っているので、その喜びはすぐに終わってしまいます。でも、映画のオープニングプレミアでは確実にとても「ハイ」な気分でした。故郷であるオレゴン州ポートランドで非常にいい反応をもらったんです。上映が終わった時は、世界の頂点に立った気分でした。映画を監督しているときは、常にその瞬間瞬間の現実に集中し、地に足を付けていなければなりません。映画が上映されるときこそが、ようやく解放されてお祝いできる瞬間なんです。
Q6.ロコ監督が出演された、2025年公開の映画『ザ・ゲスイドウズ』は「売れないロックバンドが田舎で再起を図る」というストーリーで、本作と同様にロックを題材とした作品です。監督にとってロックとはどのような存在ですか?
A.ロックやパンクとは、私にとってはただ自分がやりたいことを、妥協せずにやることです。『アイニージューデッド!』での演技は、感情が剥き出しで弱さをさらけ出していたので、パンクなエネルギーがあったと思います。(『ザ・ゲスイドウズ』監督の)ケンイチはその点を見て、私が『ザ・ゲスイドウズ』にぴったりだと思ったのかもしれません。私自身は自分が俳優だとは思っていませんが、パンクの精神を理解している人たちは、どんなパンクプロジェクトにも貢献できると思います。
Q7.次回作の構想や、挑戦してみたいことはありますか?(お話できる範囲でお聞かせください!)
A. 私の夢は、日本で長編映画を作ることです。現在、2作目の長編映画を完成させているところで、その中の一部は日本で撮影しました。しかし、将来的には日本を舞台にした全編日本語の映画を作りたいと思っています。毎日日本語を勉強していて、作りたい映画のアイデアもいくつかあります。いつかそれが実現することを確信しています。でもそれまでの間、私の2作目の長編映画『FLAPJAX』に注目していてください。2026年には映画祭を回る予定です。