あの天才SF作家が切り裂きジャックを追ってロンドンから未来のアメリカへ!
霧むす1893年のロンドン。執筆家、発明家、未来学者として活躍中の若きH・G・ウェルズが新発明のタイムマシンを友人たちに披露しようとしていた。その中には、チェスの手ごわいパートナーでもあるスチーブンソン医師の姿も。誰もがタイムマシンの性能を信じきれずに機械を眺めていると、家政婦が警察の訪問を告げにきた。近所で娼婦が切り裂きジャックの犠牲者となったため、一軒一軒見回りをしているのだという。
スチーブンソン医師の往診カバンから血だらけの手袋を見つけた警官は、彼こそロンドン中を震え上がらせている切り裂きジャックに違いないと確信した。しかし、彼の姿はどこにも見当たらない。周囲がパニックに陥る中、マシンの使用履歴からスチーブンソンがタイムマシンで未来世界――1979年のサンフランシスコに行ったこと悟ったウェルズは、彼を追う決心をする。
“未来のユートピア”を信じてきた社会主義者ウェルズだったが、20世紀後半の社会に実際に足を踏み入れたことで、社会主義が実現されていないことや、あわただしい世界、犯罪のなくならない世界に失望。文化のギャップに戸惑う中、通貨の両替のため訪れた銀行で知り合った行員エミーに逆ナンされ、ウェルズのよき理解車となる。ところがそのことで、エミ―が切り裂き魔=スチーブンソンに目をつけられてしまい……。
集の暴力はびこる近代社会は独善的なシリアルキラーを否定できるか?
大仰な音楽と共にデデーン! とはじまるタイトルコールは今観ると新鮮。個の暴力を突き詰めた切り裂きジャックが泥沼化するベトナム戦争、ソ連のアフガン侵攻、世界中で長らく続く様々な内戦など、極限まで暴力が肥大化した70年代に“しっくり”きてしまうのが何とも皮肉だ。
コメディ要素の強い中盤までの展開から、現代世界の女性を狙う切り裂きジャックのスリル、さりげないSF展開=ウェルズの存在の証明、エミー=20世紀の女性としての生き方、そして本格的な攻防が繰り広げられるクライマックスへ……。独特のまったり感はありつつ、古典的なスリラー演出でしっかりハラハラさせてくれる快作だ。『スタンド・バイ・ミー』のコリー・フェルドマン少年のチラッと出演もお見逃しなく。
『タイム・アフター・タイム』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2025年4月放送