キャスト&スタッフが語る“[●まる]を自然に存在させる”努力の裏側
選ばれし者のみに与えられた能力によって、まるで命を宿しているかのような不気味な黒い[●まる]を作り出すシーンは、CG技術なくしては完成し得ない。監督の瀧は、「見えないものを撮らなければいけないというのは難易度が高かった。それに触れると物も人も欠けてしまうという設定なので、どう映像表現として行なっていくかは悩みましたね」と撮影の苦悩を語り、物語の中心である[●まる]を表現することこそが最大の難題だったと振り返る。
また、漫画原作の実写化ならではの映像表現の難しさについて瀧は、「しかもあの球体は浮遊しますから、撮影現場ではその見えないものをカメラで追わないといけない。速度も場面ごとの球体によって違いますし、その大きさによってえぐられる部分も変わってきます」と語っている。
さらに“見えないものを撮る”ことについて、主演の細田は「つねに大変でした(笑)」と苦笑しながらも、「撮影直前には、発泡スチロールの球体を使って、“こんな感じで動くから”ということを説明していただきましたが、いざ撮影でそれがなくなったときの不安といったら(苦笑)。海外では、たとえばマーベル作品の俳優さんたちは、見えないものを見ているように演技するのが当たり前だと聞きますが、それに順応する技術は凄いなあと思いますね」と、役者として技量を試されるような撮影現場の苦労を振り返っている。
作中で成長を遂げていくナン丸を演じるにあたっては、「ナン丸は最初、球体を使いこなせていないので、不慣れな状態での球体の作り方やスピード感、進み方については、現場でスタッフさんに助けていただきながらやりました。でもやっぱり、最後まで『難しかったな~』と、ずっと感じていました」と、少しずつこの球体を使いこなせるようになっていく、その段階の演じ分けへの苦心と、それを乗り越えさせた現場スタッフの支えがあったことを明かした。
ナン丸と同じく“窓の外に手が届くもの”と作中で呼ばれ、球体を繰る能力を持つ東丸高志を演じた上杉柊平も、「球体に対しては現場での共通認識がしっかりあったんですが、それが映像になった時に、何かに当たって消失するスピードや、どうやって消えるのか、みたいなものは画が見えなかったので」と、想像力を駆使して演じる苦労があったと撮影を回顧する。
そんな中で、「球体が物にあたった時の発光はどんなものなのかとか、そこを制作陣の各部署とちゃんと意思を摺り合わせて撮影していきました」と、実際には存在しないものを自然に存在させる、そのためにコミュニケーションと努力を重ねて作り上げていく現場だったようだ。
演技、映像、音響、原作へ想いが生み出した[●まる]の確かな存在感
キャスト陣が想像力を駆使して演じた映像を受け、編集作業では実際にどのような見え方の[●まる]に仕上げていったのか?「球のデザインに関してCG部にリクエストしたのは、つい触りたくなってしまうような、心をざわつかせる物にして欲しいということでした。そしてもちろん、原作のイメージを保ったものです」という証言からは、監督とCG部との緻密なやり取り、一筋縄ではいかない[●まる]へのこだわりと情熱がうかがえる。
漫画原作の映像化にあたりもう一つの核となるのが、漫画では表現しきれない“音”だ。球体が何かに触れて破裂するときの「バンッ!」という効果音についてプロデューサーの山本晃久は、「球体は物語が進むほど、どんどん大きなものが出てきますが、最初に作った破裂音をただ大きくしていけばいいというものではない。音響のスタッフさんと試行錯誤しながら、それらをひとつひとつ作っていきましたが、出来上がりには大いに満足しています」と、“原作の大ファン”ならではのこだわりぬいた意気込みをみせている。
役者の熱のこもった演技、それをよりリアルなものへと昇華させるCG技術と音響、そしてこだわりぬいた原作への深い思い。これらが最大限に相乗し合い、命を吹き込まれた渾身の[●まる]は、“超能力”として圧倒的な違和感と放ちながらも、作品世界ではごく自然にそこに存在している。物語が進むにつれさらにその存在感を増す、キャスト・スタッフが一体となって生み出した努力とこだわりの結晶を、ぜひ本編で“体感”しよう。
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