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トム・クルーズは配信のために映画を作らない!? 生粋の「映画スター」の熱い宣言に拍手喝采!【カンヌ映画祭レポート】

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ライター:#まつかわゆま
トム・クルーズは配信のために映画を作らない!? 生粋の「映画スター」の熱い宣言に拍手喝采!【カンヌ映画祭レポート】
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初日のティエリー・フレモー総代表の会見でも「なぜこの時期に、『トップ・ガン』を、トム・クルーズを招くのか」という質問があがった。おそらく今回の映画祭についてのインタビューで何度も聞かれたことなのだろう。フレモーはするっと答えた。「トム・クルーズはこの数十年の映画を代表するスター中のスターだからね。カンヌは映画をジャンルや商業的か芸術的かで区別することはしない。どの部門に選ぶかはあるけれどね。トム・クルーズはブロックバスター映画のスターであることは確かだが、同時にキューブリックやポール・トーマス・アンダーソンの映画にも出ているのを忘れてはいけない。トム・クルーズはアメリカ映画界全体における、この40年間を代表する“映画スター”なんだ。その新作があれば、招待したいと思うわけだよ。当然ね」。トム・クルーズがカンヌ映画祭に初登場したのは1992年の『遙かなる大地へ』。それから30年、ついに名誉パルムドールの受賞者としてトム・クルーズはカンヌ映画祭にやってきた。

映画祭の実質的な幕開けの一本として公式ソワレ上映に臨んだトム・クルーズと監督、キャストがレッドカーペットの敷かれたリュミエール劇場の大階段を上る。劇場入り口について熱狂する観客をふりかえり手を振る一行の頭上を、轟音とともに5機のフランス空軍ジェットがトリコロールのストリームを描きながら編隊を組んで飛び去った。国を挙げてのイベントでもあるカンヌ映画祭ならではの派手な演出だ。3年ぶりの5月のカンヌを、トム・クルーズを祝うサプライズである。いいことのない今年、いやcovid19に世界が覆われてからの3年をふきとばさんばかりのフランス“トップガン”たちによるデモンストレーションだった。

 

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トム・クルーズが生い立ちと映画への熱い思いを語る

ソワレに先立つこと二時間前。恒例のマスタークラス、映画界のマスターたちによるトークショーにトム・クルーズが登場した。2021年から「ランデブー・ウィズ……」と呼称をかえたトークショーは、定例の会場であるブニュエル・シアターではなく映画祭会場で二番目に大きなドビュッシー劇場に場所を移し「トリビュート・トゥ・トム・クルーズ」として開催された。オンラインチケット制になったので人数制限で入れなくなることはないというのに、ドビュッシーの前には一時間以上前から列ができていた。
20分近い「トム・クルーズ名シーン集」の上映があり、十分に会場が盛り上がったところでトム・クルーズが登場。約一時間たっぷりと「映画とトム・クルーズについて」語ってくれた。

「4歳の頃、映画に目覚めたんだ。両親ともに教育のある裕福な家庭ではなかったけれど、映画にはよく連れて行ってくれた。それで映画を作りたいと思ったんだね。冒険がしたいとか、木登りがしたいと同じ感じで、映画が作りたいって。物語を書いてもいた。それから映画をもっと見るために小遣い稼ぎをするようになった。雪かきしたり、ポストカードを作って売り歩いたりしてね」
「それで、18歳の時に『タップス』のオーディション、これが二回目のオーディションだったけれど、小さな役をもらった。当時『普通の人』で有名になったティモシー・ハットンが主役で、そこにジョージ・C・スコットがいて、若手が名優から直接学ぶチャンスだった。監督はハロルド・ベッカー。“君は君のイメージを大切にするのではなく、観客がどう感じるかを想像して演じていくようになさい”とこのときベッカーが言ったことが僕の基本になっていると思う。彼は他にも照明のことやカメラのショットのことを教えてくれた。周りの人たちもいろいろなことを教えてくれた。僕は映画学校に行っていないけれど、映画を見ることと、現場で学んでいったんだ」

『タップス』(1981年)で注目されたトム・クルーズは、ティーン・スターとしてコッポラの『アウトサイダー』(1983年)の一員をつとめ、『卒業白書』(1983年)で主役に出世、1986年の『トップ・ガン』でトップ・スターになり、以来、マネー・メイキング・スターでありトップ・スターであり続けている。

 

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「僕はどんな映画も必ず初日に映画館に見に行く。帽子をかぶって、よし、行くぞ、ってな感じ(笑)」

「今僕はプロデューサーとしても仕事をしているが、今まで経験してきたことをすべて生かしたいと考えているんだ。それは僕だけではなくてスタッフやキャスト、現場の全員にいえることだと思う。ストーリーを感じ取って、いろいろなアイデアを出してほしい。必ずしも脚本にすべてが書かれているわけじゃないんだ。よりよい映画はみんなで作り上げていくもの。いつも言うのは“これは僕の映画ではなく、僕たちの映画なんだ”ということ。だから大事なのは、どのようにして映画は作られるのかのデイティールをみんなが理解し、学ぼうとすることだと思う。幸いなことに僕は素晴らしい監督たちや技術スタッフと仕事をしてきて、たくさんのことを学ばせてもらった。例えばスタンリー・キューブリックは照明のこと、構図のこと、レンズのことを語ってくれた。そのとき突然、照明とは何事であるかを理解したね。知っておく、理解しておくってことがどれだけ大事なことかを教えられた気がするよ」

「僕の映画ではスタントが大きな位置を占めているのはたしかだね。スタントをするとき怖くないかと聞かれれば、そりゃ怖いさ。でもそんなときは観客のこと、ストーリーのこと、どうすれば彼らにインパクトを与えられるかを考えるんだ。観客を楽しませること、がっかりさせないこと。そのためにはどんな訓練だってやっておくよ。失敗したって、やらないよりはましなんだ。」

 

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「映画を書く、ということは何処で上映するかによってまったく変わってくる。映画館で上映するのか、テレビで放映するのか、別物なんだよ。僕はどんな映画も必ず初日に映画館に見に行く。帽子をかぶって、よし、行くぞ、ってな感じ(笑)。自分の映画もそうやって見に行く。観客の雰囲気っていうものを感じるためにね。だから、僕の映画は配信のために作ることは決してしない。映画館で見てほしいんだ」

“MY FILM WILL NEVER BE ON THE PLATFORMS”
と、トム・クルーズが言ったとき、会場からは歓声と拍手が起きたことを付け加えておこう。トム・クルーズは「映画スター」なのである。

トム・クルーズ(撮影:筆者)

取材・文:まつかわゆま

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