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“薄幸な男”イーサン・ホークの復讐劇! M・マンソンによるテーマソングも必聴!!『リミット・オブ・アサシン』

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ライター:#森本康治
“薄幸な男”イーサン・ホークの復讐劇! M・マンソンによるテーマソングも必聴!!『リミット・オブ・アサシン』
『リミット・オブ・アサシン』
DVD&Blu-ray発売・レンタル中
価格:DVD 3,900円+税/Blu-ray 4,800円+税
発売元:株式会社クロックワークス
販売元:ハピネット・メディアマーケティング
©2017 24 HTL Co., Limited. All Rights Reserved.

『エクスプロラーズ』(1985年)で映画主演デビューを果たし、『リアリティ・バイツ』(1994年)や『恋人までの距離(ディスタンス)』(1995年)などへの出演を経て、90年代に若手演技派俳優として注目を集めたイーサン・ホーク。『ガタカ』(1997年)のようなインディペンデント系のドラマ作品で活躍する一方、“繊細な文系男子”的なイメージが強くなり、スランプを経験した時期もあったという。

そんな彼のキャリアの転機となったのが、アカデミー賞助演男優賞候補になった『トレーニング デイ』(2001年)だった。ベテラン刑事と悪夢のような一日を共にする新人刑事役を熱演し、新境地を開拓したホークは、悲壮感を漂わせたアウトローや警官を当たり役として、『アサルト13 要塞警察』(2005年)、『クロッシング』(2009年)、『デイブレイカー』(2009年)、『マグニフィセント・セブン』(2016年)などの佳作アクション/スリラー映画に多数出演している。

このようなイーサン・ホークの“薄幸な男”としての魅力が詰まっているのが、『リミット・オブ・アサシン』(2017年)である。

哀愁漂うイーサン・ホークの熱演に共感せずにはいられない!

本作でホークが演じるのは、妻と息子を亡くした元アメリカ海兵隊の傭兵トラヴィス・コンラッド。汚れ仕事から引退した身だったが、民間軍事会社からの依頼で内部告発者の暗殺の仕事を(半ば自暴自棄になって)引き受けるも、任務の途中で射殺されてしまう。死の直前に入手した重要な情報を聞き出すために、実験的な蘇生技術によって24時間の命を与えられ、用が済んだら無慈悲に見捨てられてしまうという、何とも不憫な役どころだ。

しかし、ここからが演技派ホークの真骨頂。雇い主から捨て駒にされた怒り、汚れ仕事に手を染めてきたことへの悔恨、亡き妻子への想いを迫真の演技で体現し、民間軍事会社を相手に凄絶な復讐戦へと身を投じていく姿は、観客(視聴者)の共感を呼ぶ。

そしてホークの脇を固めるキャストも渋い顔ぶれが揃っている。傷心のトラヴィスを支える義父フランク役の故ルトガー・ハウアーが醸し出す「ただの義父(オヤジ)じゃない」存在感や、友情と仕事の境界線で苦悩する旧友ジム役のポール・アンダーソン(※1)、軍事会社のボス、ウェツラー役を憎々しく演じるリーアム・カニンガム(※2)らが織り成す男のドラマにも注目したい。

※1:『シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム』(2011年)のセバスチャン・モラン役、『レヴェナント 蘇えりし者』(2015年)のアンダーソン役で知られる英国俳優。
※2:『ゲーム・オブ・スローンズ』(2011年~2019年)のダヴォス・シーワース役や、『タイタンの戦い』(2010年)のソロン役で知られるアイルランド系俳優。

『ジョン・ウィック』の作曲家タイラー・ベイツの音楽と、マリリン・マンソンのテーマソングが深い!

『リミット・オブ・アサシン』は『ジョン・ウィック』シリーズ(2014年~)の製作会社の作品ということで、音楽もタイラー・ベイツが担当。彼の略歴については、以前のコラムをご参照頂きたい。

ベイツは『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(2019年)でオーケストラとハードロックを融合させた音楽を作曲していたが、本作は低予算映画のため、ソロボーカルとパーカッション、ベイツ自らが弾くギターヴァイオル(弓で弾くエレクトリックギター)以外は、ほぼシンセサイザーで作った倹約的なスコアとなっている。予算を抑えた作りとはいえ、南アフリカの雰囲気を伝えるエキゾティックなボーカルや、トラヴィスの人間的な内面を描いた繊細なアンビエント・ミュージック、アクションシーンを盛り上げるエッジィなサウンドなど、アクションの興奮や人間ドラマを過不足なく描いた、聴き応えのあるスコアと言えるだろう。

そしてエンドクレジットで流れるのが、マリリン・マンソンが歌うトラディショナル・ソング「God’s Gonna Cut You Down」。アレンジはジョニー・キャッシュのカヴァー版を手本にしたと思われるが、以前マンソンのアルバムのプロデュースを手掛けたベイツは、この曲でもプロデュースとギター、ベース、メロディカ、ギターヴァイオルの演奏を担当している。「遅かれ早かれ、神はお前を打ちのめすだろう」という歌詞が、トラヴィスの運命を暗示する意味深なボーカル・ナンバーである。この映画のためにレコーディングされた曲なので、サウンドトラックアルバムにもしっかり収録されている。

『リミット・オブ・アサシン』オリジナル・サウンドトラック
音楽:タイラー・ベイツ
発売・販売元:Rambling RECORDS Inc.
品番:RBCP-3283

文:森本康治

『リミット・オブ・アサシン』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2020年5~6月放送

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『リミット・オブ・アサシン』

家族を失い、任務中に命を落とした凄腕の殺し屋トラヴィス。組織の実験で蘇生するも、組織は彼が入手した情報を聞き出すと再び彼を殺そうとする。その場から脱出したトラヴィスは、自らの罪と向き合い、組織の陰謀を阻止すべく復讐を誓う。だが、彼の命の期限は24時間しかなかった。

制作年: 2017
監督:
出演: