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「異種格闘技」と「差別への怒り」! 名作『イップ・マン』シリーズの最強フォーマットとは?

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ライター:#橋本宗洋
「異種格闘技」と「差別への怒り」! 名作『イップ・マン』シリーズの最強フォーマットとは?
『イップ・マン 葉問』©2010 Mandarin Films Limited. All Rights Reserved

ついに完結!『イップ・マン』シリーズを振り返る

『イップ・マン 完結』をもって、いよいよその幕を閉じた功夫(クンフー)映画の金字塔『イップ・マン』シリーズは、驚くべきことに全作品が傑作だ。いや、これ真面目な話。燃える、泣ける、さらに真似したくなる。子供の頃ジャッキー・チェンに憧れたみたいに、今は「イップ・マンかっけえ……!」と40代にして心の底から憧れてしまう。

実在の武術家、ブルース・リーの師匠としても知られるイップ・マンの人生と闘いを描くこのシリーズには、鉄板とも言えるフォーマット、テーマがある。その一つが“中国人の(中国武術の)誇り”だ。1作目『イップ・マン 序章』(2008年)では日本軍。2作目『イップ・マン 葉問』(2010年)では香港を支配するイギリス人たち。3作目『イップ・マン 継承』(2016年)にはアメリカからビジネスでやってきた男たちが香港を荒らす。

こうした支配層からの差別に耐え、そして闘う。その根源的怒りこそがシリーズのアクションにおける原動力だ。といって、どっかの国のネトウヨ的な「我が国スゴイ」ではなく、イップ・マンは平和を願うもの静かな男だからこそ差別に立ち向かう。そこが現代的でもある。

功夫vs功夫&異種格闘技戦! 2つのパターンで魅せるアクション

キモである格闘シーンについては、2つのパターンが用意されている。一つは“功夫vs功夫”だ。『葉問』におけるドニー・イェンvsサモ・ハン・キンポーの超ベストバウトが代表的だが、これは(中国武術の中での流派の違いはあれど)基本的に“身内”の闘いだ。繰り出す技が噛み合うのである。噛み合うから攻防の純度が増し、激しさも高まる。プロレスでいうと全日本の「四天王プロレス」。“三沢光晴vs小橋健太”的な魅力なわけだ。

『イップ・マン 葉問』©2010 Mandarin Films Limited. All Rights Reserved

もう一つ、毎回用意されているのが“異種格闘技戦”。これは現実の世界で言うとアントニオ猪木的。使う技、ファイトスタイルが違うことによる緊張感がある。だから余計に、イップ・マンが使う詠春拳の強さ、怖さも際立つ。

『序章』は日本の空手。続編『葉問』ではイギリス人ボクサーが最後の敵となる。そして『継承』にはマイク・タイソンが登場して、ドニーとの夢の対決が実現した。このタイソンのファイトスタイルが、ボクシング好きからしても「これこれ!」という感じなのが嬉しい。

『イップ・マン 継承』© 2015 Pegasus Motion Pictures (Hong Kong) Ltd. All Rights Reserved.

功夫映画では、ボクサーや空手家が出てきても、いざ闘うと「結局それ功夫の間合いと動きじゃん」となってしまうことがある。だが、この『イップ・マン』シリーズでは(もちろんデフォルメもあるが)空手は空手、ボクシングはボクシングの技術をしっかり活かした闘いを見せてくれる。だからこそ“いかにして詠春拳で勝つか”の展開に燃える。

原動力には差別への怒り。バトルは2タイプ。このシンプルかつ最強のフォーマットがあるから、『イップ・マン』シリーズはいつ見ても、何回見ても最高なのだ。

『イップ・マン 継承』© 2015 Pegasus Motion Pictures (Hong Kong) Ltd. All Rights Reserved.

文:橋本宗洋

『イップ・マン 序章』『イップ・マン 葉問』『イップ・マン 継承』『イップ・マン 完結』はCS映画専門チャンネル ムービープラスで2021年12月放送

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