• BANGER!!! トップ
  • >
  • 映画
  • >
  • 是枝裕和が描く母娘バトル! カトリーヌ・ドヌーヴ演じる大女優が語る“女優論”がリアルすぎる『真実』

是枝裕和が描く母娘バトル! カトリーヌ・ドヌーヴ演じる大女優が語る“女優論”がリアルすぎる『真実』

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook
ライター:#BANGER!!! 編集部
是枝裕和が描く母娘バトル! カトリーヌ・ドヌーヴ演じる大女優が語る“女優論”がリアルすぎる『真実』
『真実』©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

豪華キャスト終結! パルム・ドール受賞監督、是枝裕和がフランスの地で挑んだ初の国際作品

2018年に『万引き家族』でカンヌ映画祭最高賞<パルム・ドール>を受賞した是枝裕和。黒澤明、小津安二郎、今村昌平、大島渚、北野武らに続き、世界が注目する日本人監督として今もっとも熱い視線が注がれる是枝監督の待望の新作『真実』が、2019年10月11日(金)より公開される。

『真実』©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

キャリア初の国際共同製作作品としてフランスで撮影された『真実』は、主演に大女優カトリーヌ・ドヌーヴを起用。さらに共演にジュリエット・ヴィノシュ、イーサン・ホークという奇跡の豪華キャストを実現させた。

『真実』©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

2019年のヴェネチア国際映画祭<コンペティション部門>でオープニング作品にも選ばれた本作の物語は、国民的女優のファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)が自伝本「真実」を出版するところからはじまる。NYで脚本家として活躍する娘のリュミール(ジュリエット・ヴィノシュ)は、テレビ俳優の夫ハンク(イーサン・ホーク)と愛娘シャルロットを引き連れ、母の出版祝いをするためにフランスに帰郷。しかし、女優としての人生を最優先し、家庭をないがしろにしてきた母との親子関係はギクシャクしたまま。さらに母が自伝本に何を書き、何を書かなかったのか、その内容を巡って積年の恨みを晴らすかのごとく強烈な母娘のバトルがスタートする。

「女優とは何か? 演じるとは何か?」― 全てはこの問いからはじまった

本作の企画アイデアは、以前あるイベントで来日したビノシュと是枝監督が、3時間以上にわたり「女優とは何か、演じるとは何か」をテーマに語り、いつか一緒に映画を作ろうと誓い合ったことがはじまりだったという。そしてフランスの“大女優”を主人公にしたファミリードラマをビノシュと撮ることを構想した時、監督は真っ先に敬愛するドヌーヴの起用を心に決めたそうだ。

『真実』photo L. Champoussin ©3B-分福-Mi Movies-FR3

劇中でドヌーヴはファビエンヌという役を通して、映画論や役者論を語り尽くし、女優としての生き様をこれでもかと見せつける。もはや大女優の役を演じているのか、これが大女優ドヌーヴの素なのか分からなくなるほどの自然体の演技は、ファンにとっては堪らないものがあるだろう(しかも“ファビエンヌ”という役名はドヌーヴのミドルネームでもある)。

『真実』©2019 3B-分福-MI MOVIES-FRANCE 3 CINEMA

特に、ドヌーヴが若手女優たちを辛辣に批判するシーンは内容がリアルすぎて、思わず「これ、アドリブ(本音)ですか!?」とシビれてしまう名シーンだ。また、様々なシーンで垣間見えるちょっとした表情の使い方やセリフの言い回し、絶妙な間など、その卓越した演技力も圧巻。女優とは何か? 演じるとは何か? その答えを導き出すには、ドヌーヴの存在なしではありえなかっただろう。

そんな圧倒的オーラを放つ大先輩ドヌーヴに怯むことなく、持ち味の透明感溢れる軽やかな演技で真正面から対峙していくビノシュもまた、女優としての魅力に満ち溢れている。

母娘の親子ゲンカを通して描かれるユーモラスな人間ドラマ

『万引き家族』だけでなく、『誰も知らない』(2004年)『そして父になる』(2013年)など、これまでいくつもの作品を通して“さまざまな家族のカタチ”を描いてきた是枝裕和。本作でもその手腕は遺憾なく発揮されており、自己愛が強く娘に対して無関心を貫いてきたがゆえに素直になれない母の歪な愛情表現と、そんな母への憧れとコンプレックスに苦しんできた娘の心の解放を、繊細に、時に大胆に描写しながら、観客の心を掴むドラマチックな物語を完成させている。

『真実』是枝裕和監督 photo L. Champoussin ©3B-分福-Mi Movies-FR3

母という一番身近なロールモデルに、認められ愛されたいと願う娘。そして同性だからこそ、誰よりも娘の本心をズバッと言い当ててしまう母。ファビエンヌとリュミールの衝突や葛藤には、世の母や娘たちは少なからず共感できる部分があるだろう。そして男性も、母娘を題材にした物語だからといって蚊帳の外に追いやられることはなく、女同士の喧嘩を静観するハンクという男性キャラクターを通して、「女性の取り扱い方」を学べるはずだ(というより、ぜひ学んでいただきたい)。

『真実』photo L. Champoussin ©3B-分福-Mi Movies-FR3

「今回は読後感の明るいものを作りたいという想いが強くあった」と監督が語る通り、ラストでは大ゲンカの末に、母の“ある告白”によって親子関係が好転していく様子が描かれる。しかし、そこで「めでたしめでたし」のハッピーエンドで終わるのではなく、最後まで二転三転と親子バトルが続くところも本作の面白さ。アイロニックな視点を時折織り交ぜながら、人間模様をユーモラスに描くスタイルは是枝監督らしく、これまでの作品でも一貫して描いてきた美しい料理シーンや、子どもの無邪気さが際立つシーンも健在だ。国際的な舞台に活動の場を移しても、是枝イズムが色濃く反映された作品に仕上がっているので、昔からのファンも安心して楽しむことができるだろう。

『真実』は2019年10月11日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

Share On
  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

『真実』

全ての始まりは、国民的大女優が出した【真実】という名の自伝本。
出版祝いに集まった家族たちは、綴られなかった母と娘の<真実>をやがて知ることになる――。

国民的大女優ファビエンヌが自伝本【真実】を出版。アメリカで脚本家として活躍する娘のリュミール、テレビ俳優の娘婿ハンク、ふたりの娘のシャルロット、ファビエンヌの現在のパートナーと元夫、そして長年の秘書……お祝いと称して、集まった家族の気がかりはただ1つ。「一体彼女はなにを綴ったのか?」

そしてこの自伝は、次第に母と娘の間に隠された、愛憎渦巻く「真実」をも露わにしていき――。

制作年: 2019
監督:
出演: