ライアン・ゴズリングが語る『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
映画『プロジェクト・ヘイル・メアリー』の原作者アンディ・ウィアーによれば本作は、「宇宙を舞台にしたバディ・ムービー」なのだという。太陽が死にかけている謎を解明するため、地球からはるか彼方の宇宙空間に送られた生物学を専門とする教師グレースは、そこで同じ使命を持って他の惑星から来た生物(通称ロッキー)と出会う。
意思疎通も容易ではない孤独な生き物同士がなんとか“科学”を介してやりとりし、やがて意気投合して手を組む。『E.T.』のようにポジティブな世界観にユーモアが混ざり、悲壮感とは対極にあるSF映画だ。
『プロジェクト・へイル・メアリー』
ウィアーはライアン・ゴズリングに、グレース役を演じると同時にプロデュースも手掛けてほしいと熱烈な手紙を書いたそうだが、映画を観るとたしかにその理由がよくわかる。これはゴズリングのために書かれたような役に思えるからだ。
ふつうの中学教師が、「あなたは専門家として優れている。それに独り身で犬すら飼っていない」と強制的に宇宙に送られ、孤独と不安に襲われながらもどこかにユーモアをたたえているのは、まさにゴズリングの資質なしでは成立しなかったのではないかと思える。
3月20日(金・祝)より全国公開となる本作に込めた熱い思いをゴズリングが語った。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』記者会見/撮影:佐藤久理子
📖きっかけ
ぼくがこの脚本を受け取ったのはちょうどパンデミックが始まった、映画館が閉鎖され映画製作も中断している頃でした。そんなときにこの作品は、未来や未知のものを恐れるのではなく、ただ解き明かしていくべきものとして捉えていて、信じられないほどポジティブで感動的でした。それこそラジカルなアプローチだと、強烈な印象を受けたんです。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
たとえば誰にでも、観たときの場所や状況について忘れられない、そのときの自分に大きな影響を与えた映画というものがあると思います。これはまさにそんな映画になり得ると感じました。ただ、その可能性を台無しにしたくはなかった。自分が引き受けるなら完璧に信じられる、そしてこの大きなプロジェクトを舵取りできる素晴らしいプロデューサーが必要だと思いました。
それで、まずエイミー・パスカル(プロデューサー)に相談したんです。それから彼女がフィル・ロード監督とクリストファー・ミラー監督、優れたスタッフらによるドリームチームを集めてくれました。その結果は、僕が期待した以上のものになっています。
🪨ロッキーへのこだわり
正直に言うと、ロッキーは女王様のように手がかかる存在でした(笑)。黒子のようなスタッフがたくさん必要でしたから。もちろん、CGIを使った方が簡単なのは明らかでしたが、僕も監督たちもその気はありませんでした。ロッキーは、何かとてもオーガニックなものであるべきだという考えで一致していたからです。
ロッキーとのシーンは本当に何もかもが複雑で大変でしたが、それこそがこの映画のマジックとも言えるものでした。つまり僕らは彼がどのような存在なのかを探り、コミュニケーションの方法を見つけ、どのようにうまく成立させられるかを探求していた。まさにこの物語と同じように。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
僕らがラッキーだったのは、試行錯誤をしているときにジェームズ・オルティスという素晴らしいパペット・アーティストを見つけたことです。彼がオーディションに来たとき、彼はテーブルに手を置いて、カチカチという音を出して指で何かを語り始めました。その様子を見て、彼しかいないと思いました。彼は本当に素晴らしくて、ロッキーになりきっていました。それで台本にもないようなロッキーのセリフが出てきたんです。
つまりロッキーはジェームズを通して真のキャラクターとなり、僕はロッキーと繋がることができた。だからこの映画はジェームズに多くを負っています。彼はロッキーのようにどこからともなく現れて、映画の特別な魔法を担ったんです。
🎤偶然から生まれた歌唱シーン
宇宙にグレースを送り込むエヴァを演じたザンドラ(・ヒュラー)と僕は、航空母艦で撮影するシーンがあって、僕らは廊下を隔てて向かい合っていました。あるとき楽屋にいると、外から天使のような歌声が聞こえてきたんです。まるで天から蜂蜜が降り注ぐような声でした(笑)。いったいどこから!? と思ってドアを開けると、ザンドラの部屋からでした。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
ザンドラに「そんな風に歌えるなんて知らなかったよ」と言うと、彼女は「まあね」と(笑)。それで「映画のなかで歌わない?」と提案しました。それでカラオケのシーンが生まれたんです。でも何を歌うかは任せました。それで彼女が選んだのが、ハリー・スタイルズの「Sing on Times」だった。歌詞もまさにこの映画にぴったりで、結果的にこの作品のテーマ曲のようになりました。ザンドラのカラオケのシーンはこの映画のコアとも言えるもので、映画のスピリットとエネルギーを体現したようなベストシーンのひとつになったと思います。
🧑🏫教師役のお手本
僕は学校が苦手だったので高校も中退しています。でも、ひとりだけ素晴らしい先生に出会いました。彼女は「クラスで一番たくさん本を読んだ人に、自分のジープに乗せてあげる」と。そして2番目に多く本を読んだ人には「ニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックのCDをあげる」と言いました。僕はジープに乗れなかったけれど、CDをもらうことができました。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
彼女は年末に学校を離れることになり、そのとき僕は『いまを生きる』(1989年)の映画のシーンの真似をして机の上に立って、「ああ、わたしのキャプテン」と言ったんです。真似をしたのが伝わったのかはわからないけれど(笑)。でも本当に僕の人生に大きな影響を与えたくれた。だから映画のなかで、その気はなくても結果的にヒーローになるような先生を演じる機会が得られたのは光栄でした。実際多くの場合、先生はヒーローだと思います。
🎞️観客に届いてほしいメッセージ
本作のテーマはいま、この時代に本当に重要だと思います。さきほども言いましたが、未来を楽観的に見つめる、希望に満ちたとても美しい眼差し。まったく異なるものと真の友情が育めるというテーマです。そしてお互い協力し合えば、不可能も可能になる。人間が何を成し遂げられるのかを思い出させてくれます。
アンディは恐怖心を好奇心に変えるという美しい考えを示してくれました。それは実際に我々が日常で実践できることでしょう。僕は彼に心から感謝しているし、若い人たちが同じような気持ちと希望を本作から受け取ってもらえたら、これ以上嬉しいことはないです。
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
取材・文:佐藤久理子
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』は3月20日(金・祝)より全国公開
『プロジェクト・ヘイル・メアリー』
未知の原因によって太陽エネルギーが奪われ、数十年後に地球は氷河期に突入する。原因解明に向けて宇宙に送り込まれたグレースは、科学の知識だけを武器に80億人の命をかけた人類最後の賭けに挑むが、この危機を救おうとする小さな相棒と出会い、共に愛する故郷を救うため宇宙の超難題に挑む。
監督:フィル・ロード & クリストファー・ミラー
脚色:ドリュー・ゴダード
原作:アンディ・ウィアー「プロジェクト・ヘイル・メアリー」(早川書房刊)
出演:ライアン・ゴズリング、ザンドラ・ヒュラー ほか
| 制作年: | 2025 |
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2026年3月20日(金・祝)より全国公開