「ますます社会は悪くなっていく」パク・チャヌク監督が語る『しあわせな選択』の“恐ろしい結末”とは【一部ネタバレ有】
「この映画を作ると決めたころに、韓国でもAIの問題が浮上していた」
※注意:物語の内容に触れています
――すでに15年前に一度、アメリカを舞台にこの作品を企画されたということですが、いまはAIの登場でホワイトカラーの仕事がさらに少なくなると予想されていて、マンスのような人はもっと増えるはずですよね。この新自由主義の加速化は、映画の製作過程にも影響がありましたか?
AIは、原作にはもちろんありませんでしたよね(※「斧」はアメリカでは1997年、日本では2001年に初版発行)。当時としてはAIという概念もなかったですし、しかも(15年前に)アメリカで映画を作ろうとしていた時期でさえ、まだその概念はなかったんです。韓国でこの映画を作ると決めたころに深刻な労働問題としてこの問題が浮上してきていて、雇用不安定の時代でしたし、逆にこういったことを作品の中で扱わないほうがおかしいと思えるような時代に、すでになっていました。
そのあたりの要素を映画の最後に持ってきたことによって、この作品がより豊かになったのではないかと思っています。劇中のマンスは自分が職を得るために[3人殺していましたよね](←※ネタバレ注意/ドラッグで表示)。そして結果的に一応仕事は得たのですが、果たしてこの仕事を長く続けられるかどうかは、やはり悲観的だと思います。
『しあわせな選択』©︎2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED
⚠️ネタバレ注意⚠️
映画の最後のほうで工場長が、マンスに対してこんなセリフを言います。「工場でいまAIが使われていて試験稼働をするから、その管理をしてくれ」と。言い換えれば、AIの試験稼働がうまくいけば、もしかしたらマンスはまた首を切られるかもしれないと暗示しているわけです。
そしてマンスは工場の明かりを自分で消すのですが、その後の場面で、AIが自分で判断して明かりを消します。それを思うと、何のために彼は道徳的な堕落まで受け入れて職を得たのか、彼の行動自体が非常に虚しく思えますね。
パク・チャヌク監督『しあわせな選択』©︎2025 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM ALL RIGHTS RESERVED
取材・文:遠藤京子
『しあわせな選択』は3月6日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開(PG12)
『しあわせな選択』
「全てを叶えた」——製紙会社で 25 年間、堅実に仕事をしてきたマンスは、心からそう思い、妻と2人の子供、2匹の犬と郊外の大きな家で“理想的”な人生を送っていた。突然、会社から解雇されるまでは。必死に築いてきた人生が、一瞬のうちに崩壊!? 好調の製紙会社への就活も失敗したマンスが閃いたのは、衝撃のアイデアだった。それは……「ライバルがいなくなれば、仕事は手に入る」。
監督:パク・チャヌク
出演:イ・ビョンホン、ソン・イェジン、パク・ヒスン、イ・ソンミン、ヨム・ヘラン
| 制作年: | 2025 |
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2026年3月6日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開