おそるべき共産圏映画の真髄!上映禁止に追い込まれた「ポーランド暗黒SF」が日本劇場初公開
「そして、全員さようなら」
鉄のカーテンの向こう側に封印されていた東欧映画界最大の秘密が、ついに明かされる――
冷戦下の闇を照らす黙示録、ポーランドの鬼才ピョトル・シュルキン(1950-2018)の傑作群が、2月21日(土)より「ポーランド暗黒SF≪文明の終焉4部作≫」と題して、シアター・イメージフォーラムを皮切りに日本劇場初公開を果たす。
「ポーランド暗黒SF≪文明の終焉4部作≫」©WFDiF
シュルキンは1970年代末から80年代の社会主義体制下のポーランドにおいて、厳しい検閲の目を潜り抜けながら独自のディストピア世界を築き上げた芸術家。彼は自身の作品を単なる未来予測的なSFではなく、現代社会の歪みや人間性の喪失をメタファーとして描く“非社会的フィクション(Asocial Fiction)”と呼んだ。常にポーランド当局と衝突し目を付けられながらも、腐敗した権力や官僚制の中で喘ぐ人間の姿を強烈な風刺と超現実主義の極致で描き続けたシュルキンは、《全体主義からの脱出》という一貫したテーマを追求したことで知られている。
『ゴーレム』
Golem, dir. Piotr Szulkin,1979,©WFDiF
検閲下の暗黒SF『ゴーレム』ほか4作一挙上映
今回の特集上映では、シュルキンのキャリアの頂点とされる4作を劇場初公開。人造人間の苦悩を通じて監視社会を問う『ゴーレム』(1979年)をはじめ、メディアによるプロパガンダの恐怖を予言的に描いた『宇宙戦争 次の世紀』(1981年)、核戦争後のシェルターで捏造された希望に縋る人々を追った『オビ・オバ 文明の終わり』(1985年)、そして英雄主義の虚妄をアナーキーに暴く『ガガ 英雄たちに栄光あれ』(1986年)。戒厳令下という極限の状況で生み出されたこれらの作品は、カフカやオーウェルの系譜を継ぐ文学性と、セピア調の色彩や霧を用いた圧倒的な視覚美を兼ね備えている。
『宇宙戦争 次の世紀』The War of the Worlds: Next Century, dir. Piotr Szulkin,1981, ©WFDiF
その独創性は、ヨーロッパ最大のSF・ファンタジー・ホラーの祭典<ユーロコン>で最優秀SF映画監督賞を受賞するなど高く評価されているが、本国では一時上映禁止に追い込まれるなど、その存在は長らく西側諸国に知られることはなかった。2018年にこの世を去ったシュルキンが遺した、ほぼ全西側諸国が知ることのなかったおそるべき共産圏映画の真髄――監視・密告社会の影が忍び寄る現代において、彼が放った「叫び」は、時を超えて世界中の観客の心に鋭く突き刺さるだろう。
『ガガ 英雄たちに栄光あれ』
Ga Ga: Glory to the Heroes, dir. Piotr Szulkin,1985, ©WFDiF
『ゴーレム』(1979年)
男は殺人容疑で警察の取り調べを受けるが、犯罪の詳細どころか自分の人生さえ思い出せない。彼は狂人や錯乱した歯科医、殺人的な医師、そして鋳鉄製のオーブンの壁の中に人間の創造の秘密があると信じる科学者たちの世界に戻される。自分が何者なのか、人間とは何かを知ろうとする男の旅は、彼ら全員と交差することになる。人類進化のために作られる人造クローン人間の厳しい現実を描く暗黒クローン人間SF。
『ゴーレム』
Golem, dir. Piotr Szulkin,1979,©WFDiF
監督:ピョトル・シュルキン 脚本:ピョトル・シュルキン、タデウシュ・ソボレフスキ
撮影:ジグムント・サモシウク 音楽:ジグムント・コニェチニー、ユゼフ・スクジェク
出演:マレク・ヴァルチェフスキ、クリスティナ・ヤンダ、ヨアンナ・ジュウコフスカ、アンナ・ヤラチュヴナ、ヤン・ノヴィツキ、ヴォイチェフ・プショニャク
『宇宙戦争 次の世紀』(1981年)
火星人が着陸したが、恐れることはなかった。少なくとも、テレビ司会の男は人々にそう伝えてきた。しかし、火星人が到着して間もなく、男のアパートは荒らされ、妻は誘拐された。毎晩のテレビの台本も変更された。男の目に映るものは、毎晩観客に語っていることともはや一致しない。火星人は男が信じていたほど善良なのか、それとも男は地球全体を危険にさらすもっと邪悪な陰謀に利用されているのか?火星人襲来の厳しい現実を描く暗黒異星人侵略SF。
『宇宙戦争 次の世紀』The War of the Worlds: Next Century, dir. Piotr Szulkin,1981, ©WFDiF
監督・脚本:ピョトル・シュルキン
撮影:ジグムント・サモシウク 音楽:イェジー・マクシミウク、ユゼフ・スクジェク
出演:ロマン・ヴィルヘルミ、クリスティナ・ヤンダ、マリウシュ・ドモホフスキ、イェジー・ストゥール、マレク・ヴァルチェフスキ
『オビ・オバ 文明の終わり』(1985年)
世界は核戦争で荒廃、惑星は凍りつき、放射線はドームの外に踏み出す者や物をすべて殺してしまう。男はアークとしてのみ知られる謎の宇宙船からの救出を待ちながら集まった人類の最後の生き残りたちを統制する。男は群衆の間を歩き回り、士気の低下を防ぎ、売春婦を口説き、反乱を鎮圧し、時には飢えた人々に食事を与えるなど、通常の日々の仕事をこなしている。しかしドームの真の邪悪な性質が明らかになるにつれ、男は人類を救う価値があるのか自問せざるを得なくなる。世界崩壊後の厳しい現実を描く暗黒放射能SF。
『オビ・オバ 文明の終わり』
O-bi O-ba:The End of Civilization, dir. Piotr Szulkin,1984, ©WFDiF
監督・脚本:ピョトル・シュルキン
撮影:ヴィトルド・ソボツィンスキ 音楽:イェジー・サタノフスキ
出演:イェジー・ストゥール、クリスティナ・ヤンダ、カリーナ・イェンドルシク、マリウシュ・ドモホフスキ、マレク・ヴァルチェフスキ、ヤン・ノヴィツキ、レオン・ニェムチク
『ガガ 英雄たちに栄光あれ』(1986年)
男は巨大宇宙ステーションの囚人で、他の囚人同様、遠く離れた惑星の探査にボランティアとして参加させられる。オーストラリア458惑星に着陸すると、男は英雄として歓迎され、セックス、酒、暴力のすべてを満喫する。しかし、男は自由には高い代償が伴うことに気づく。それは、男の暴力的な生活が惑星の住民の楽しみのために生中継されることだった。男の脱出方法はあるのか? それとも、運命は決まっているのか。地球から脱出した先に待ち受ける厳しい現実を描く暗黒新惑星SF。
『ガガ 英雄たちに栄光あれ』
Ga Ga: Glory to the Heroes, dir. Piotr Szulkin,1985, ©WFDiF
監督・脚本:ピョトル・シュルキン
撮影:エドヴァルド・クウォシンスキ
出演:ダニエル・オルブリフスキ、イェジー・ストゥール、カタジナ・フィグラ、マリウシュ・ブノワ、ヘンリク・ビスタ、マレク・ヴァルチェフスキ、レオン・ニェムチク、ヤン・ノヴィツキ
特集上映「ポーランド暗黒SF≪文明の終焉4部作≫」は2月21日(土)よりシアター・イメージフォーラムにて劇場初公開、以降全国順次公開