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鬼才ランティモスは韓国カルト映画をどう料理した?『ブゴニア』監督&キャストが明かす驚きの制作秘話

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ライター:#斉藤博昭
鬼才ランティモスは韓国カルト映画をどう料理した?『ブゴニア』監督&キャストが明かす驚きの制作秘話
『ブゴニア』©︎2025 FOCUS FEATURES LLC.
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「俳優との関係は、いろいろと試せるワークショップのようなものだった」

では、キャスティングのポイントは何だったのか。ストーンやプレモンスとは、すでに一緒に映画を作っているという実績で安心感もあったはずだが、もう一人のメインキャラクターであるドンを演じたのは、本作が初の演技の仕事となったエイダン・デルビス。彼らの抜擢について、ランティモス監督が説明する。

『ブゴニア』©︎2025 FOCUS FEATURES LLC.

ランティモス監督:『憐れみの3章』は3つのドラマで構成されていたので、俳優との関係は、いろいろと試せるワークショップのようなものでした。そこで築かれた信頼関係で、今回もエマとジェシーにオファーしたわけです。そして私は、つねにアマチュアの俳優を起用したい願望もあります。

テディと異なる感性を持つ、ニューロダイバージェント(神経の発達の多様性)のキャラクターとしてドンを創造し、エマが主演したドラマ『THE CURSE/ザ・カース』(2023年)のキャスティング担当が、エイダンを見つけてくれました。その担当者はストーリーキャスティングに長けた、つまり物語に適した人材を探すプロだったのです。

本作では撮影中にも大きな音が出るビスタビジョンのカメラを採用したので、エイダンにも本番どおり試したところ、問題なく演技ができたので出演が決まりました。彼こそ、この映画の魂と言えるでしょう。対立関係のバランスをとる役割で、すばらしい才能を発揮してくれました。

 

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『ブゴニア』のリハーサルは、『憐れみの3章』のプロモーションと並行して行われた。そのリハーサルに関して、ランティモスの作品は独特のアプローチであることを、エマ・ストーンは次のような例えで打ち明ける。

ストーン:もともとの台本になかったセリフも追加されるので、リハーサルは重要な位置を占めます。例えて言うなら、私たち俳優は海上を漂う船で、積んできた物を岸に運び、他の船とドッキングする感覚。監督のヨルゴスは灯台として私たちを招き寄せるんです。

撮影メイキング 『ブゴニア』©︎2025 FOCUS FEATURES LLC.

劇中では、ミシェルが丸刈りにされる衝撃シーンも登場し、実際にエマ・ストーンの頭にバリカンが当てられ、髪が落とされる映像が収められている。このシーンのために監督のランティモスも頭を剃ったそうで、彼によるとそれは「連帯感を示すため」とのことだが、会見で横に座るエマ・ストーンは「そういうことになってるけど、本当はどうかしら?」と意味ありげに笑っていた。

『ブゴニア』©︎2025 FOCUS FEATURES LLC.

「作り手の判断基準による”バランス”どおりに、誰もが受け取るわけではない」

『ブゴニア』には、過去のランティモス作品と比べても、目を疑うような壮絶かつシリアスな描写が盛り込まれる一方で、ブラックなユーモア、とぼけた笑いも大量に投下。このあたりのバランスは、脚本のウィル・トレイシーの功績でもある。トレイシーは、そのバランス感覚を次のように説明する。

トレイシー:テディを「ネットの情報に溺れすぎている男」、ミシェルを「意識高い系のリベラルな大企業CEO」と、ステレオタイプに描いたら、退屈な作品になったと思います。冒頭こそ、そのような印象を与えるかもしれませんが、物語が進むにつれ、おたがいに仮面を剥がし合い、仮面の裏にある感情的、政治的な目的が見えてくるように展開させました。

これには『メディア王 ~華麗なる一族~』での経験も生かされましたね。『ブゴニア』の登場人物も、『メディア王』に負けないほど自己主張が強いので、そこをテニスのラリーのようではなく、映画的に仕上げることがチャレンジでした。

『ブゴニア』©︎2025 FOCUS FEATURES LLC.

ヨルゴス・ランティモスも、作品のバランスに関して、「私たち作り手の判断基準でシリアスさと、シュールさ、ユーモアなどのバランスをとっても、誰もがそのバランスどおりに受け取るわけではない。それこそが多様な要素が混ざった映画を作る意義でもある」と語る。

そしてこの会見の最後に出たのが、「『ブゴニア』のテディが信じたとおり、地球にエイリアンが襲来したら、われわれの世界の映画遺産で何を彼らに薦めるか」というユニークな質問。

ウィル・トレイシーが、なぜか『おつむて・ん・て・ん・クリニック』(1991年)を主張すると、ヨルゴス・ランティモスは「やはりロベール・ブレッソンの『スリ』(1959年)じゃないか」と猛反論。そこにジェシー・プレモンスが「映画じゃなく、音楽をエイリアンに薦めたい。僕の大好きなタウンズ・ヴァン・ザント!」と、話はカオスへと突入していく……。そのとめどないやりとりは、撮影現場で彼らが心から打ち解けていたことを証明しているようだった。

撮影メイキング 『ブゴニア』©︎2025 FOCUS FEATURES LLC.

見事なチームワークによって完成した『ブゴニア』は、中盤から終盤にかけて異様なレベルで観る者を打ちのめす仕上がりになっている。『地球を守れ!』を観た人は、どのようなアップデートがなされてかに感心するだろうし、未見の人は、まっさらな心で『ブゴニア』に接することで、想定外の驚きと喜びがもたらされるはずなので、とりあえず予備知識ゼロで鑑賞してほしい!

取材・文:斉藤博昭

『ブゴニア』は2月13日(金)より全国公開

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『ブゴニア』

人気絶頂のカリスマ経営者として脚光を浴びるミシェル(エマ・ストーン)が誘拐された。犯人は、陰謀論に心酔するテディ(ジェシー・プレモンス)とドン(エイダン・デルビス)の2人組。ミシェルが地球を侵略しにきた宇宙人だと信じてやまない彼らの要求はただ一つ。「地球から手を引け」彼らの馬鹿げた要望を一蹴するミシェルだが、事態は思わぬ方向へと加速していき——。

監督:ヨルゴス・ランティモス
脚本:ウィル・トレイシー

出演:エマ・ストーン ジェシー・プレモンス エイダン・デルビス

制作年: 2025