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「ユーチューバーの監督デビュー作」という先入観を覆すホラー映画『シェルビー・オークス』が描く“恐怖”の正体

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ライター:#BANGER!!! 編集部
「ユーチューバーの監督デビュー作」という先入観を覆すホラー映画『シェルビー・オークス』が描く“恐怖”の正体
『シェルビー・オークス』 © 2024 SHELBY OAKS LLC All Rights Reserved
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モキュメンタリーからミステリー、そして…

冒頭は、まさにNetflixで観られるドキュメンタリー作品のような構成。ある意味かなり分かりやすいので興味をそそられまくって凝視してしまうのだが、ホラーとしてどう展開するのかはまだ見えてこない。ファウンド・フッテージものの名作『ブレアウィッチ・プロジェクト』(1999年)や『パラノーマル・アクティビティ』(2007年)とも異なる今っぽさ=現代的なリアルを醸し出す演出だ。

『シェルビー・オークス』 © 2024 SHELBY OAKS LLC All Rights Reserved

そんなモキュメンタリー風シークエンスから衝撃的な“ある出来事”を経て、どんどんオカルティックなホラー映画に変身していく。思わず身を乗り出す“ツカミ”も秀逸ながら、ここで新たに登場する<ミニDVテープ>の映像がヤバいシロモノ。その“中身”は、恐る恐る映像を観る姉ミアの生活をジワリ……と侵食していく。

『シェルビー・オークス』 © 2024 SHELBY OAKS LLC All Rights Reserved

妹の不可解な失踪と、それに伴う野次馬的な視線に長年苦しんできたミアは警察を信用できない。彼女が独自に捜査を始め、被写体が制作側にスイッチするような形でミステリー展開へと突入。しかし、“ある出来事(謎の男)”について地道に遡っていく合間にも、テープの映像から次々と不可解な“何か”を見出してしまう。

『シェルビー・オークス』 © 2024 SHELBY OAKS LLC All Rights Reserved

避けて通れない“ヒト”の生々しさとYouTube時代ならではの演出

自分でも妄想だと思いたいほどの怪奇現象に直面した時、人はどうするべきか。見舞われた現象が民間伝承や神話と合致しているなどと説明したところで、家族や友人たちはそれを受け入れてくれるだろうか。アリ・アッバシの『マザーズ』(2016年)なども想起させるミアとライリーの関係性(女性・母体)は、監督自身と妻の体験を投影したパーソナルなものだというが、あまりにも禍々しい結末には面食らってしまう。

『シェルビー・オークス』 © 2024 SHELBY OAKS LLC All Rights Reserved

オカルト好きのツボを突くディテールと、ときにベタにも踏み込むホラー演出。ジャンプスケアが効果を発揮するのは前段階の“タメ”が効いているからこそ。YouTube時代ならではの画作りから、これまた既視感のある闇信仰系ホラーなクライマックスへ。映画評論家の監督デビュー作として、これ以上望むものはないだろう。もう“いちレビュアー”には戻れないぞ、と意地悪なことも言いたくなるが……。

『シェルビー・オークス』 © 2024 SHELBY OAKS LLC All Rights Reserved

ちなみに完全な余談だが、序盤のあるシーンに『遊星からの物体X』(1982年)や『ゼイリブ』(1988年)、『NOPE/ノープ』(2022年)などで知られるキース・デイヴィッドが出演しているのでお見逃しなく。

『シェルビー・オークス』は12月12日(金)より全国公開中

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