• BANGER!!! トップ
  • >
  • 映画
  • >
  • 「よくある音楽伝記映画にはしてほしくなかった」BOSS本人も登壇!『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』記者会見

「よくある音楽伝記映画にはしてほしくなかった」BOSS本人も登壇!『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』記者会見

  • Twitter
  • LINE
  • Facebook
ライター:#佐藤久理子
「よくある音楽伝記映画にはしてほしくなかった」BOSS本人も登壇!『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』記者会見
ジェレミー・アレン・ホワイト、ブルース・スプリングスティーン ©Kevin Mazur
1 2

“アメリカの魂”唄う《The Boss》の素顔

ブルース・スプリングスティーンについての映画と聞けば、大抵の人は「明日なき暴走」(1975年)や「ボーン・イン・ザ・USA」(1984年)といったアルバムに代表される、雄々しいイメージの“ザ・ボス”を想像するかもしれない。だが11月14日(金)より公開の映画『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』は、それとは対極的な彼の姿を描き出す。

『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』©2025 20th Century Studios

スプリングスティーンのアルバムのなかでもっとも暗く、内省的な名作として知られる「ネブラスカ」(1982年)の時代に絞った本作は、彼の生涯に大きな影響を及ぼしてきた父親によるトラウマや、その葛藤と戦いながら創作を続ける姿を描いたものだ。

『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』©2025 20th Century Studios

スプリングスティーン本人の多大な協力を仰ぎながら、できる限り真正性にこだわったのは、アカデミー賞2冠に輝いた『クレイジー・ハート』や『ブラック・スキャンダル』で知られるスコット・クーパー監督。また、人気テレビシリーズ『一流シェフのファミリーレストラン』、映画『アイアンクロー』(2023年)で知られるジェレミー・アレン・ホワイトが、無口で陰を負った若きスプリングスティーンに扮し、内なる激しさと切なさを鮮烈に表現する。

クーパー監督とスプリングスティーン、J・アレン・ホワイトによる記者会見の模様をここにご紹介しよう。彼らの発言を読めば、なぜ『ネブラスカ』時代でなければならなかったのかがわかるはずだ。

ブルース・スプリングスティーン 『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』©2025 20th Century Studios

「できる限り正直にわたしの真実を伝えてほしい」

――『ネブラスカ』時代を映画化すること

ブルース・スプリングスティーン(以下、B):もともと自分のアイディアだったわけではないんだ。原作「Deliver Me From Nowhere」の著者であるウォーレン・ゼインズがポッドキャストで喋っているのを聞いたプロデューサーのエレン・ゴールドスミス=ヴァインとエリック・ロビンソンが、映画化のアイディアを思いついたと聞いているよ。

で、詳しいことは知らないが、最初にスコット(・クーパー監督)とウォーレンが家に来て、話し合いをした。自分にとっても、人生でもっとも興味深い時期だったアルバム「ネブラスカ」の時代に話しを集中するというアイディアが気に入ってね。当時、自分はアルバムを作ることと同時に、プライベートでも大きな試練を抱えていた。だから音楽とともにキャラクター主導のドラマになるだろうと思った。よくある音楽伝記映画にはしてほしくなかったんだ。

スコットのこれまでの映画を観て、彼は確固たるビジョンのある監督だと思ったし、ワーキングクラスの生活を理解していると感じた。当時の自分はアルバムが成功しても依然、ニュージャージーのアズベリー・パークに住んでいて、そんな自分の人生の一部をうまく掬い取って描いてくれるだろうと思ったよ。

『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』©2025 20th Century Studios

――スプリングスティーンの音楽との出会い

スコット・クーパー(以下、S):もともと父が音楽好きで(※クーパーは本作を父に捧げている)、早くから自分の音楽的な趣向に大きな影響を与えられたのですが、ブルースの音楽と出会ったのは思春期になってからでした。「ネブラスカ」が最初に聴いたアルバムで、当時まさに、自分の居場所を見つけられない、未来に不安を抱き不満を抱えたティーンエイジャーだった僕の心を直撃しました。ブルースのとても重々しい響きを持った声、素晴らしい歌詞に深く共感したんです。でも、いつか「ネブラスカ」について映画化する日が来るとは想像していなかった。

スコット・クーパー監督、ブルース・スプリングスティーン 『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』©2025 20th Century Studios

父は残念ながら撮影開始の前日に亡くなりましたが、父の精神が映画制作のあいだ、ずっとわたしを支えてくれました。ですからこのアルバムとブルースの歌詞は、わたしにとって長年、とても深い個人的な共鳴の源となってきたんです。ブルースはこのアルバムを作ろうとしたというより、作らざるを得なかったのだと思いますが、わたし自身も同じで、この映画を作らざるを得なかったと言えると思います。

脚本を書くにあたってブルースに会ったとき、彼はわたしにこう言いました。「スコット、真実とはつねに美しいわけじゃない。自分は君の映画が観たい。当たりをソフトにしたようなものじゃなく、カメラが決して目を逸らさず、観客の心を鷲掴みにするようなもの。できる限り正直にわたしの真実を伝えてほしい」と。そして彼は、ウォーレン・ゼインズの原作に書いていないようなことも教えてくれました。さらにとても寛大なことに、彼が持っているアーカイブ資料や写真など、すべてのものへのアクセスを可能にしてくれました。

『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』©2025 20th Century Studios

「ジェレミーは純粋にロックスターのようだと思う」

――自分の脆さを曝け出すこと

B:ソングライターとして、自分自身を曝け出すことには慣れている。アーティストなら、それは避けられない、やるべきことだ。とくに勇気がいるというわけでもない、仕事としてやるべきことと感じるもの。そうすることで、リスナーに伝えたい人生の文脈を理解してもらうことができる。

自分の感情にアクセスして、それを表現することは問題ではないから、この映画についてもその点は心配していなかった。でもいま振り返って思うのは、自分があの時代に見てきた50年代のステレオタイプな男性像というのは、いまの世の中に当てはまらないということだ。

『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』©2025 20th Century Studios

――ジェレミー・アレン・ホワイトの配役

B:テレビシリーズの『一流シェフのファミリーレストラン』を観て、ジェレミーのことは知っていたよ。彼は純粋にロックスターのようだと思う。スコットも言うように、彼は威勢がよく、肉体的な存在感がある。でもそれ以上に内に強烈さを秘めていて、カメラの前でそれを表現することができる。それはこの映画にとって本質的なものになると思った。

実際、彼の内なる強烈さというものを、映画を通してスコットは美しく捉えていると思う。だから自分にとって、いや、みんなにとって彼は最適な選択だったと思うし、彼が演じてくれてとても嬉しいよ。

『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』©2025 20th Century Studios

次ページ:ジェレミー「彼がギターを送ってくれた」
1 2
Share On
  • Twitter
  • LINE
  • Facebook

『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』

『Born in the U.S.A.』の前夜、彼は何と向き合っていたのか――

ロックの英雄、そしてアメリカの魂――
50年にわたり第一線を走り続け、今も世界中のスタジアムを熱狂させるブルース・スプリングスティーン。

世界の頂点に立つ直前、彼は、成功の重圧と自らの過去に押し潰されそうになりながら、わずか4トラックの録音機の前で、たった一人、静かに歌いはじめる。ヒットチャートも栄光も求めず、ただ心の奥底から掘り出した“本当の声”を、孤独と痛み、そして創造の原点とともに刻み込んだ――。

主演はエミー賞俳優ジェレミー・アレン・ホワイト「一流シェフのファミリーレストラン」、監督・脚本は『クレイジー・ハート』(アカデミー賞R受賞)のスコット・クーパー。

『ボヘミアン・ラプソディ』の20世紀スタジオが贈る、音楽映画の枠を超えた、心を揺さぶる体験がここに。

彼の魂の旅路が、いまスクリーンに映し出される。

監督:スコット・クーパー『クレイジー・ハート』
出演:ジェレミー・アレン・ホワイト「一流シェフのファミリーレストラン」, ジェレミー・ストロング『アプレンティス』, ポール・ウォルター・ハウザー「ブラック・バード」, スティーヴン・グレアム「アドレセンス」, オデッサ・ヤング『帰らない日曜日』

制作年: 2025