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韓国の観客が共感した騒音問題のリアリティ
Netflixの『84m²』も同じくアパートの騒音問題をモチーフにした作品だったが、韓国における“層間騒音”は日常的なテーマであり、若年層ほど敏感だと言われている。実際、本作の観客統計では20代の観客が最も多かったそうで、SNS上では「まるで自分の部屋の話のようだった」「騒音が暴力になる瞬間を初めて見た」といった声も寄せられているという。
韓国では集合住宅での騒音トラブルが暴力事件に発展するなど深刻な社会問題となっており、その背景には約98%の集合住宅が振動の伝わりやすい「壁式構造」で建てられていることがある。本作でも、ある理由から騒音問題をスルーしようとする住民たちが描かれるが、これは”持たざる者”が直面する社会的な無関心や排除のメタファーなのかもしれない。
『層間騒音』© 2025 FINECUT Co., Ltd. ALL RIGHTS RESERVED
劇場鑑賞がむしろ安心? あまりにも不快な音と恐ろしい画に要注意
本作は“音”というごく日常的な現象を通じて、社会の沈黙、孤立、そして見えない暴力を描き出す。……と堅苦しく締めたいところだが、物語終盤では疑心暗鬼が極限にまで達し、かつ廃墟侵入系動画から憑依~超常系ホラーまでごった煮状態となる本作は、最後の最後まで本気で怖い映画であることをお伝えしておきたい。
もし「配信されてから観よ~」なんて考えている方がいたら、自宅でヘッドホン鑑賞なんてした日には些細な物音ひとつで失禁してしまうかもしれないので要注意。ということで、凝りに凝った激怖サウンドを爆音で浴びせられつつ、でも周囲に同じ境遇の観客がたくさんいるし……という安心感も得られる映画館での鑑賞を、わりと本気でおすすめする。
『層間騒音』は10月10日(金)より全国公開
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