ディカプリオが「劇場で観るべき作品」と強調する理由とは?PTA最新作『ワン・バトル・アフター・アナザー』会見レポート
ベニチオ「レオとアイデアを出し合いながらリラックスして演じられた」
このように俳優にインスピレーションを与えるだけでなく、音楽はPTA作品でつねに重要なウェイトを占めてきた。今回も使用曲、サウンドデザインなどにPTAへのこだわりが満載なのが一目瞭然。この音楽について、PTAは長年のパートナーの業績を賞賛する。
これまで何作も一緒にやってきた作曲家のジョニー・グリーンウッドなので、撮影中、デイリー(撮影直後のラッシュ映像)が上がってくると、すぐに彼の音楽を合わせるわけです。そうすることで現場の誰もが、肉体で作品のトーンを共有できます。ジョニーの音楽はいつも個性的なので、映像と重なることで、物語がどう動くか、次に何が待っているのか、本能的に感じ取ることもできます。
既成曲もかなり早い段階でチョイスしますね。ボブのテーマとなるスティーリー・ダンの「Dirty Work」は、ある朝、現場へ向かう途中で聴き、「ついに君の曲を見つけたよ」とレオ(・ディカプリオ)に知らせたのを覚えています。
このPTAの言葉に、横にいるディカプリオは「あの曲は、50回くらいは聴いた」と笑う。そのディカプリオが、「ベニチオの参加で本作がいい方向へ動き出した」と語るように、もう一人の重要キャラで、ウィラの空手の“センセイ”として登場するのが、ベニチオ・デル・トロ。ディカプリオとの共演を彼は次のように振り返る。
ポールが脚本の中で“海の波”という表現を使っています。レオがものすごいエネルギーを持ち込む一方、私は彼に合わせながらも、船の錨のような存在になります。私は撮影の後半からの参加でしたが、レオはカメラが回っていない時間も楽しませてくれるし、アイデアを出し合いながらリラックスして演じられた気がします。
アクションで大変だったのは、かなり速いスピードでの車の運転。窓から乗り出すレオを落とさないように気を遣ったので(笑)。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
デル・トロがそう語るように、かなりブッとんだアクションがいくつも用意された本作。その中でも、ロケ地との相性によって奇跡的なスペクタクルを生んだシーンがある。これは観てのお楽しみだが、PTAはそのロケ地の話を興奮気味に語る。
何年もかけて多数のロケ地を探し、ついに撮影開始が近づくという時にカリフォルニア州とアリゾナ州の境に求めていた景色が現れました。ロケハンの車内で、全員が神様からの贈り物をもらったような興奮をおぼえたのです。あのシーンは、登場人物の立場や形勢を変えるという意味で、物語で重要な役割を果たすわけで、ロケ地の発見により、当初のアイデアを実行に移すことが決まりました。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
ディカプリオ「多くの人たちと劇場のスクリーンで観るべき特別な作品」
製作チームが「リバー・オブ・ヒルズ(丘陵の川)」と呼んだロケ地でのアクションに関わったのが、ボブの娘ウィラを演じたチェイス・インフィニティ。ベテランの共演者の中で、本作が本格的映画デビューとなった彼女は瑞々しい存在感で魅了する。
空手を習っているウィラ役のために「4ヶ月、総合格闘技をトレーニングして臨んだ」というインフィニティ。フレンチ75のメンバー、デアンドラ役のレジーナ・ホールも「チェイスとの共演では彼女の瞳に才能を実感した。失われていない“純粋さ”によって、誰もがウィラを救いたいと感じるはず」と、初めての大役に挑んだ彼女を激賞する。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』© 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
最後に、PTAとディカプリオの2人が揃って強調したことがある。それは本作がビスタビジョン(ワイドスクリーン)のカメラで撮影された点だ。明らかに映像のスケール感、没入感が異次元なのは、ビスタを採用したからだとPTAは語る。
メガネを着けずに3Dを体験する。そんな臨場感を届けられたと思います。従来のカメラでは不可能なアクションや俳優の表情を捉えれらたからです。アルフレッド・ヒッチコックの『北北西に進路を取れ』(1959年)や『めまい』(1958年)、ジョン・フォードの『捜索者』(1956年)と同じフォーマットですが、決して懐古趣味ではなく、改めてビスタの素晴らしさを伝えるのが、私の目的でした。
ディカプリオが「その意味で多くの人たちと劇場のスクリーンで観るべき特別な作品」と付け加えたように、他に類を観ない世界に、『ワン・バトル・アフター・アナザー』はわれわれを導いてくれるのである。
『ワン・バトル・アフター・アナザー』ワールドプレミア © 2025 WARNER BROS. ENT. ALL RIGHTS RESERVED.
photo:©David Jon
『ワン・バトル・アフター・アナザー』は10月3日(金)より全国公開
『ワン・バトル・アフター・アナザー』
最愛の娘と平凡ながらも冴えない日々を過ごす元革命家のボブ(ディカプリオ)。突然、娘がさらわれ、生活が一変する。異常な執着心でボブを追い詰める変態軍人“ロックジョー”(ペン)。次から次へと襲いかかる刺客たちとの死闘の中、テンパりながらもボブに革命家時代の闘争心がよみがえっていく。ボブのピンチに現れる謎の空手道場の“センセイ”(デル・トロ)の手を借りて、元革命家として逃げ続けた生活を捨て、戦いに身を投じたボブと娘の運命の先にあるのは、絶望か、希望か、それとも――
監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン
出演:レオナルド・ディカプリオ、ショーン・ペン、ベニチオ・デル・トロ、レジーナ・ホール、テヤナ・テイラー、チェイス・インフィニティ
| 制作年: | 2025 |
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2025年10月3日(金)より全国公開