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「“5人目のビートルズ”演じる責任感」を主演俳優が語る!『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』インタビュー

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ライター:#遠藤京子
「“5人目のビートルズ”演じる責任感」を主演俳優が語る!『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』インタビュー
『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』©STUDIO POW(EPSTEIN).LTD
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「悲しいことに、性の自由がどの国にもあるわけではありません」

――いま音楽関連の伝記映画や音楽ドキュメンタリーが、すごい人気ですよね。日本では本作は、『レッド・ツェッペリン:ビカミング』や『ザ・フー キッズ・アー・オールライト』、U2の『キス・ザ・フューチャー』と同日に公開されるんです。それで気になったのが、ビートルズはそういったバンドの始祖的存在でもあり、演技といえどもそんなレジェンドを子ども扱いするのに戸惑いを感じたりすることはありませんでしたか? もちろんビートルズも初めはティーンエイジャーだったわけですが……。

ははは、面白い質問ですね。うーん、ビートルズを演じた俳優たちは、年齢的にはバラバラで、ある程度年上の人もいれば若い人もいたんですが、全員が俳優として経験を積んだ人たちでした。だから彼らの面倒を見なきゃ、という感じにはならなかったんです。でも、責任を感じてそれを示そうとして誰かの面倒を見ようとしたときに、相手のほうは世話を焼いてもらおうとは思っていないし何をすべきかもわかっている、ということがあると思います。

『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』©STUDIO POW(EPSTEIN).LTD

ブライアンはビートルズの面倒を見たとは思いますが、彼らよりそれほど年上なわけでもなかった。彼がビートルズに会ったころ、まだ20代半ばだったんです。(最年長の)ジョンよりそれほど年上というわけでもなかった。でもビートルズ側が彼を実際よりも年上だと思ったのは、彼が良いスーツを着て良い車に乗り、お金を持っていて話し方がちゃんとしていたから。だから関係性が複雑になったんです。

彼はビートルズにとって叔父さんみたいな存在になる。でも、冗談を言い合って一緒に遊び回ったりできる叔父さんです。だから実際に生き生きした関係性があったんじゃないかと思いますね。たとえば職場でちょっと年上だったとしたら、兄のように振る舞ってしまうかもしれませんよね。ブライアンは一種、彼らのボスであり、叔父さんであり、友達でもあって、そのどれかを行ったり来たりしていた、その関係性を理解するのが重要でした。

『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』©STUDIO POW(EPSTEIN).LTD

――そのビートルズが世界ツアーに出ると、日本では右翼から脅迫を受け、フィリピンでは暴行され、でもイギリスもゲイは違法で……と、当時の混沌とした世相が浮かび上がるのですが、さすがに日本の右翼ですら、いまは海外のミュージシャンが武道館を使うからといって脅迫なんてしません。世界は少しでも進歩したと思いますか?

うーん、難しいな。世界はちょっとは良くなっているかもしれませんが、わかりません。僕は60年代を生きていないし、いまは別の理由で混沌としていると思います。より良くなっている部分もあるでしょう。生活とかね。でも悲しいことに、性の自由がどの国にもあるわけではありません。

確かに、この国(イギリス)ではブライアンの時代よりは遥かに良くなりました。それは本当に進歩ですが、まだまだこの国も世界も問題だらけで、排他主義もいまだにまかり通っていますよね。でもわかりません。将来、現代を振り返って60年代と比較してみたら、多くの変化と混沌があって似ているかもしれませんね。

――でも当時の人は“戦争は終わった”と思っていたわけですが……

そうです。ブライアンが、ビートルズの夢が現実にならなかったと知ったら悲しむだろうと思います。僕の両親はビートルズと一緒に生きた世代で、彼らは60年代に“世界は大きく変わる”と大きな希望を抱いていたんです。そのうちのいくつかの変化は起こったものの、悲しいことに僕らは線上に進歩しているというよりは、堂々巡りでごちゃ混ぜに同じことをやっているみたいです。

『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』©STUDIO POW(EPSTEIN).LTD

「チャンスがあればマーティン・スコセッシ監督と仕事がしたい」

――ありがとうございます。最後の質問ですが、監督や俳優やプロデューサーで今後一緒に仕事してみたいと思う人はいますか?

えっ! それはたくさんいすぎて……。この映画を撮ったジョー・スティーヴンソンとはまた仕事したいですね。脚本も書いたし、若くて才能があって知識も豊富で、スキルもあって人柄も良くて、冷静だし寛大で。とにかく仕事しやすい人なので、ジョーとまた仕事したいですね。

あと、チャンスがあればマーティン・スコセッシ監督と仕事がしたいです。『沈黙 -サイレンス-』(2016年)を何度も観ているんですよ。日本に来たキリスト教伝道師の映画ですが、スコセッシ作品の中でもとくに大好きです。素晴らしい映画ですよね。面白いだけじゃなく、洞察に富んでスピリチュアリティもあって、信仰についても描かれている。彼の映画はものすごく繊細で、彼と仕事することは夢ですね。

 

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――プロデュースや監督業をやってみたいとは思われませんか。

やってみたいです。実は自分の短編を撮ったところで、プロデュースして脚本を書いて演技もしました。来月公開できるといいなと思っています。プロデュースの過程で多くの人に関わるのも楽しかったですね。ただ監督したいかとなると……監督はものすごく大変だと思います。

よく冷静でいられるな、と思うんです。巣の真ん中にいる蜘蛛のように、俳優とかプロデューサーとか、すごくめんどくさい人たちに囲まれて(笑)、彼らがみんな自分がどうしたいのかを言ってくる。その上でクリアなヴィジョンを持っていないといけないし、自分のヴィジョンに絶対の自信を持っていないといけない。そんなスキルが自分にあるかわかりません。

でも、僕は劇場も好きで、仕事を始めたのも映画やテレビより劇場が先なので(※シェイクスピア劇で実績を残している)演劇の監督ならやってみたいですね。学生時代にも舞台監督をやったことがあるんですよ。

『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』は9月26日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国公開

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『ブライアン・エプスタイン 世界最高のバンドを育てた男』

ブライアン・エプスタインは、祖父が始めた家具店で日々忙しい毎日を送っていた。店舗に増設したレコード部門も2年後には看板部門に成長。ある日、リヴァプールのクラブ「キャヴァーン」で、まだ駆け出しの4人組ローカルバンド「ビートルズ」と出会う。4人が奏でる音楽に図らずとも心を奪われ、バンドのメンバーたちにマネージメント契約を打診。ステージマナーを教え、衣裳も髪型もととのえる。有名レコード会社を回り、ついにEMI傘下のパーロフォンから辛くもデビューを遂げ、瞬く間にバンドは世界中でその名を知らぬ者がいないほどの存在になっていく。メンバーの活躍にエプスタインも喜びをあふれさせるが、彼の中にはマネージャーとしての表の顔からはうかがい知れぬ、一個の人間として満たされない思いがあったのだったー。

監督:ジョー・スティーヴンソン
出演:ジェイコブ・フォーチュン=ロイド、エミリー・ワトソン、エディ・マーサン

制作年: 2025