「身体損壊グチャドロ激グロ」なのに癒し系?殺人鬼視点の“KILL散歩”ホラー『バイオレント・ネイチャー』の新しさ
“癒し系”ホラー映画『バイオレント・ネイチャー』
9月12日(金)より公開中の『バイオレント・ネイチャー』は“スラッシャー”、それもかなり激しいジャンルに分類されるだろう。しかし、その語り口と映像スタイルは同ジャンルの多くの作品とは一線を画している。公式サイトで“アンビエント・スラッシャー”と称されているとおり、恐怖や緊張感だけではない不思議なバイブスが流れているのだ。
『バイオレント・ネイチャー』© 2023 ZYGOTE PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED
深い森の奥、朽ちた火の見やぐらに横たわるのは、60年前の凄惨な事件に起因する怨念の亡骸“ジョニー”。
その死体とともに封印されていたペンダントがある日、何者かの手によって持ち去られる。
やがてジョニーは奪われた遺物を取り戻すべく蘇り、若者たちに標的を定める。
不死のゴーレムと化した彼は、冷酷かつ静かに殺戮を遂行していく。
だが、その怒りは彼らにとどまらない。ジョニーの行く手を阻むすべての存在に、“死” という名の償いがもたらされる――
『バイオレント・ネイチャー』© 2023 ZYGOTE PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED
ひたすら殺人鬼の“背中”を追う三人称視点ホラー
本作の大きな特徴は、POV(殺人鬼の視点)で物語が進行するというユニークな構成だ。冒頭から、おそらくゾンビ的な存在であろう殺人鬼ジョニーの視点で物語が進み、観客は静かに森を歩く彼の背後をついていくような感覚で、その合間にターゲット観察や殺戮の瞬間を目撃することになる。
『バイオレント・ネイチャー』© 2023 ZYGOTE PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED
ときにはTPS(三人称視点)のゲームのような構図で、つまりジョニーの“肩越し”に物語を体験することで一風変わった没入感を得られるうえに、ジャンプスケア演出とは異なるまったりとした恐怖と不快感を味わうことができる。もちろん随所で俯瞰視点も挿し込まれ、何が起こっているのかと混乱することはない。
森や湖を舞台にした構図は『13日の金曜日』(1980年)をトレースしているのだが、被害者側の視点が極端に少ないため、必然的に感情移入の対象はジョニーになる。その殺戮衝動は『ハロウィン』(1978年)のマイケル・マイヤーズのような無機質(に見える)なものではなく、彼の視点から静かな怒りや葛藤も感じ取れる点が新鮮だ。なおアスペクト比はおそらく4:3(1.33)。
『バイオレント・ネイチャー』© 2023 ZYGOTE PICTURES INC. ALL RIGHTS RESERVED