韓国史上“最悪の政治裁判”を「ほぼ事実」に基づき描いた『大統領暗殺裁判 16日間の真実』監督インタビュー
「日本映画が最も活気があった時代の作品に大きな影響を受けました」
――監督のフィルモグラフィーはコメディ、歴史もの、スリラー、ロマンスと多様です。特にお好きなジャンルはありますか。また、今後挑戦したいジャンルは。
私は一度手がけたものは繰り返したくないと思っています。映画監督になれば、コメディがヒットすれば次回作もコメディのオファーが、時代劇がヒットすれば時代劇のオファーが来るものです。しかし同じジャンルを繰り返すと“自己複製”をせざるを得なくなりますので、できれば他のジャンルをやりたいですね。また、演出家にとって作品は選択するものというより、自然な縁のような出会いであると考えます。特定のジャンルに挑戦したいということはなく、次は何に出会えるのかを楽しみにしています。
メイキングカット『大統領暗殺裁判 16日間の真実』© 2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & PAPAS FILM & OSCAR10STUDIO. All Rights Reserved.
――これまでに影響を受けた監督、好きな監督を教えてください。
多すぎて選べないのですが、日本の監督では黒澤明や小津安二郎ら、日本映画が最も活気があった時代の監督の作品に大きな影響を受けました。韓国にもポン・ジュノ監督やパク・チャヌク監督をはじめ大好きな監督がいます。ともかく多すぎて、一人を挙げることはできないですね。
メイキングカット『大統領暗殺裁判 16日間の真実』© 2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & PAPAS FILM & OSCAR10STUDIO. All Rights Reserved.
――さて、監督は今年9月から配信されるドラマを演出されました(※「濁流」:2025年9月4日よりDisney+にて配信開始)。初めてのドラマですが、オファーを受けた理由は? 映画とドラマの違いはありましたか。
コロナ禍以降、映像を作って観客に見せる場が映画館からOTT(配信)に移ってきました。作る人間の立場としても配信の方がはるかに有利な部分があります。それに今回は全9話のドラマで、映画は約2時間ですが、コンテンツ作家としては9時間分の長編を作ることもとても魅力的だと感じ、チャンスが到来したので一度やってみようということでオファーを受けました。
映画とドラマの違いですが、皆さんもご存じのように映画は監督個人の作業という性格が強いものです。監督が作りたいものを、完成するまで、時間とお金があまりない中で作る。ですから映画は監督の創造物という部分が大きいですね。でもドラマの仕事をしてみると、決められた予算、決められた時間の中で、視聴者や製作者の要望に合わせて作るものだと感じました。映画が監督個人の芸術的指向に近いとすれば、ドラマはより商業的な傾向があるようです。
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――韓国でも映画監督がドラマの演出をするケースが増えていますが、コンテンツ産業の変化についてはどのように感じていらっしゃいますか。
時代の流れだと思います。私たちが作る物が世界中で見られるわけです。日本のドラマやアニメも配信プラットフォームを通じて韓国で多く見られていますが、こういう流れは良いと思います。交流も生まれますし、互いが作った作品を互いにより多くの人に見せることができますからね。
もちろん、より大衆的に作らなければいけないというデメリットはありますが、よくできた作品を多くの人に見せることができ、選んでもらえることは大きなメリットだと考えます。
メイキングカット『大統領暗殺裁判 16日間の真実』© 2024 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & PAPAS FILM & OSCAR10STUDIO. All Rights Reserved.
取材・文:芳賀 恵
『大統領暗殺裁判 16日間の真実』は8月22日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
『大統領暗殺裁判 16日間の真実』
厄介な事件の裁判を多く担当する弁護士会のエースであるチョン・インフ(チョ・ジョンソク)は、大統領暗殺事件に巻き込まれた中央情報部(KCIA)部長の随行秘書官、パク・テジュ(イ・ソンギュン)の弁護を引き受ける。軍人であるがためにただ一人軍法裁判にかけられ、たった一度の判決で刑が確定する彼のために、公正な裁判を求めて戦うチョン・インフだったが、のちに軍事反乱を起こす巨大権力の中心である合同捜査団長チョン・サンドゥ(ユ・ジェミョン)によって裁判は不正に操られていた――。
監督・脚本:チュ・チャンミン(『王になった男』)
出演:チョ・ジョンソク(「賢い医師生活」)、イ・ソンギュン(『パラサイト 半地下の家族』)、ユ・ジェミョン(『劇映画 孤独のグルメ』、「梨泰院クラス」)
| 制作年: | 2024 |
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2025年8月22日(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開