“筋肉と愛欲”が怒張するガチムチ・ボディビル・ラブ!痛みを乗り越えた俳優&監督が明かす『愛はステロイド』制作秘話
「女性が筋肉をつけることは恥ずかしくも、おかしくもない」
ジャッキーというキャラクターを作り上げるうえで、グラス監督が最もこだわったのが「筋肉」と「内面」の両立。言わずもがな、ボディビルダーとして説得力のある身体をイチから作り上げるのは至難の業だ。
ボディビルダーというキャラクターを演じるには、非の打ちどころのない自信と、隠し立てのない肉体が必要でした。あの姿になるには、何年にもわたる継続的な努力しかないんです。
『愛はステロイド』© 2023 CRACK IN THE EARTH LLC; CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED
主演のクリステンと対等に渡り合い、複雑な愛の関係性を成立させるには、並外れた身体性だけでなく高い演技力も不可欠。ボディビルダー、レスラー、ボクサー、さらに演技未経験者まで、グラス監督とキャスティング・チームは全米から“ジャッキーになれる人”を探し続けた。
「何百人も見ましたが、心から“この人だ”と思える人に出会えなかった」と振り返るグラス監督だ、ある日手に取った一本のオーディションテープが空気を変えた。そこに映っていたのが、ケイティ・オブライアンだ。
ケイティはもともと格闘家で、かつてボディビルの大会にも出場経験がある本物の“戦う身体”の持ち主である。そして何より驚かされたのは、その存在感。クリステンとのリーディングでも圧倒的な集中力としなやかな表現力を見せ、「やっと見つけた」と誰もが確信した。
『愛はステロイド』© 2023 CRACK IN THE EARTH LLC; CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED
ケイティは撮影に向けて1日3時間の筋トレに加え、徹底した食事制限、水抜きなど、ボディビル大会本番さながらの準備に挑戦したという。「映画の中でポージングを披露できたとき、本当にジャッキーになれた気がした」と語る一方で、ジャッキーというキャラクター、そしてルーとの関係性についても冷静に考察する。
ジャッキーは“火”、ルーは“水”。ルーは日々のルーティンを重んじる静かな人物だが、ジャッキーは情熱と混乱を一気に巻き起こす嵐のような存在。そんなジャッキーの登場が、ルーの人生を一変させていく。
荒れた環境で育ち、ステロイドに頼りながらでも夢を掴もうとする姿、そして恋に落ち、思いがけず暴走していくその変化。彼女の“むき出しの感情”に共感する女性も多いはずだ。
「女性が筋肉をつけることは恥ずかしくも、おかしくもない。そこにこそ、本当の美しさがあるのかもしれません」と語るケイティの言葉に、映画のテーマがぎゅっと凝縮されている。
『愛はステロイド』© 2023 CRACK IN THE EARTH LLC; CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED
「この映画を受け止めるのは必ずしも簡単ではないけれど……」
ルートケイティについてグラス監督は、「この2人のキャラクターには、これまでの映画で見たことのないダイナミックさがあります」と語る。
抑えきれない力がどっしり動かない岩にぶつかり、それを砕くなんて見たことがありません。女性が“勝つ”ことを追求するという考えに真剣に立ち会う機会は、めったにないでしょう。この映画を受け止めるのは必ずしも簡単ではないけれど、世界中の多くの女性の心を動かすはずです。
『愛はステロイド』© 2023 CRACK IN THE EARTH LLC; CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION ALL RIGHTS RESERVED
ジャッキーがステロイドを使い始め、攻撃的で超人的な存在に変貌していくさまは圧巻だが、グラス監督はそれが“薬のせいだけではない”と示唆する。
もしかすると、ルーの愛が彼女の内なる何かを引き出したのかもしれない。愛が私たちの暗い側面を照らし、暴走させることもあるのです。
筋肉の隆起と燃え上がる恋愛感情、二つのエネルギーが激しくぶつかり合う『愛はステロイド』。ただのラブストーリーでも、ただの筋肉映画でもない、観る者の感情を激しく揺さぶる新感覚クィア・ロマンス・スリラーとなっている。
女性として、恋することに迷いながらも力強く生きるジャッキーとルーの姿は、きっとあなたの中の何かを共鳴させるはず。ぜひ映画館のスクリーンで、その熱量を全身で体感しよう。
『愛はステロイド』は8月29日(金)=“キン(金)ニク(29)の日より全国ロードショー
『愛はステロイド』
1989年。トレーニングジムで働くルーは、自分の夢をかなえるためにラスベガスに向かう野心家のボディビルダー、ジャッキーに夢中になる。しかし、町で警察をも牛耳り凶悪な犯罪を繰り返す父や、夫からDVを受け続ける姉を家族に持つルーの身の上によって、ふたりの愛は暴力を引き起こし、ルーの家族の犯罪網に引きずりこまれることになる。
監督・脚本:ローズ・グラス(『セイント・モード/狂信』)
共同脚本:ヴェロニカ・トフィウスカキャスト
出演:クリステン・スチュワート(『スペンサーダイアナの決意』)、ケイティ・オブライアン(『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』)、エド・ハリス(『トップガンマーヴェリック』)、ジェナ・マローン(『メッセンジャー』)
| 制作年: | 2024 |
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