自立した女性に立ちはだかる“インド社会のルール”とは?世界が絶賛した『私たちが光と想うすべて』監督が想いを語る
「友情という、定義があいまいな関係について興味がありました」
ムンバイを舞台に選んだ理由について、パヤル・カパーリヤー監督は「ムンバイは、国中から人々が働きにやって来る多文化的で多様性に富んだ都市。さらに、国内の他の地域に比べて、女性が働きやすい場所でもあります」と語る。そして監督自身、「故郷を離れて働きに出る女性たちを描いた映画を作りたかった」と明かし、ムンバイはその物語に最適な舞台だったと続ける。
『私たちが光と想うすべて』© PETIT CHAOS – CHALK & CHEESE FILMS – BALDR FILM – LES FILMS FAUVES – ARTE FRANCE CINÉMA – 2024
一方、たとえ女性が経済的に自立していたとしても、結婚相手や恋人の選択といった<個人的な選択>においても、いまだに家族が強い影響力を持ち、社会のルールが立ちはだかるというインド社会の根強い構造について「そういった矛盾は、この国に生きるほとんどの女性に当てはまる」と言及する。
『私たちが光と想うすべて』© PETIT CHAOS – CHALK & CHEESE FILMS – BALDR FILM – LES FILMS FAUVES – ARTE FRANCE CINÉMA – 2024
本作では、女性たちそれぞれが抱える複雑な事情とともに、“友情”という関係性についても丁寧に描かれている。「私は、友情という、定義があいまいな関係について興味がありました。年齢を重ねていくうちに友人の存在は私たちにとってより強い支えとなり、時には家族よりも大きな存在となる。家族から離れて暮らすと、特にそのことを強く感じるはずです」――そう語る監督は、「この映画で探求したかったのは、まさにそうした関係性」と想いを寄せている。
『私たちが光と想うすべて』© PETIT CHAOS – CHALK & CHEESE FILMS – BALDR FILM – LES FILMS FAUVES – ARTE FRANCE CINÉMA – 2024
是枝裕和監督も絶賛! 新鋭カパーリヤー監督のキャリア
インド映画として30年振りに第77回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門入りを果たし、日本から審査員として参加した是枝裕和監督も「本当は自分だけの宝物にしておきたい。傑作です」と絶賛した『私たちが光と想うすべて』。
同年のカンヌはパルム・ドールを受賞しアカデミー賞作品賞に輝いた『ANORA アノーラ』を筆頭に、『エミリア・ペレス』や『サブスタンス』など強豪作品が多数出品された。そんななか本作は、インド映画史上初のグランプリを獲得したほか、ゴールデン・グローブ賞など100以上の映画祭・映画賞にノミネートされ、25以上の賞を受賞。オバマ元大統領の2024年のベスト10にも選ばれ、70か国以上での上映が決定するなど世界中から高評価を獲得している。
『私たちが光と想うすべて』© PETIT CHAOS – CHALK & CHEESE FILMS – BALDR FILM – LES FILMS FAUVES – ARTE FRANCE CINÉMA – 2024
本作の監督を務めたムンバイ生まれの新鋭カパーリヤーが、最初にその稀有なる感性を世界に見つけられたのは、初の長編ドキュメンタリー映画『何も知らない夜』だ。同作は2021年のカンヌ国際映画祭監督週間に選出され、ベスト・ドキュメンタリー賞に当たるルイユ・ドール賞、2023年の山形国際ドキュメンタリー映画祭インターナショナル・コンペティション部門でロバート&フランシス・フラハティ賞(大賞)を受賞。鋭く政治的でありながら美しく詩的なハイブリッド作品と高評価を受け、ドキュメンタリーというジャンルの可能性を広げてみせた。
そんなカパーリヤ―監督の初長編劇映画となる『私たちが光と想うすべて』は、光に満ちたやさしく淡い映像美、洗練されたサウンド、そして夢のように詩的で幻想的な世界観を紡ぎ出し、これまでのインド映画のイメージを一新。「ウォン・カーウァイを彷彿とさせる」と評判を呼び、シャーロット・ウェルズ監督(『aftersun/アフターサン』)、セリーヌ・ソン監督(『パスト ライブス/再会』)など、30代の若手女性監督たちの作品が世界の映画祭で脚光を浴びる中、現在39歳のパヤル・カパーリヤー監督もまた、世界中から新たな才能として注目を集めている。
『私たちが光と想うすべて』© PETIT CHAOS – CHALK & CHEESE FILMS – BALDR FILM – LES FILMS FAUVES – ARTE FRANCE CINÉMA – 2024
タイトルが示す通り、全編にわたって、多種多様な光がスクリーンから零れ落ちる本作。歓楽街のネオン、スマートフォンのライト、朝の太陽と夕陽、海の水面、そして彼女たちの瞳の輝きと心に灯された希望――世界中に光を届ける新たな傑作が、この夏、日本を照らし出す。
『私たちが光と想うすべて』は7月25日(金)よりBunkamuraル・シネマ渋谷宮下、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテほかロードショー
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— 映画『私たちが光と想うすべて』公式X (@Watahika_cinema) July 24, 2025