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「死に方おしえてあげようか」福岡“殺人教師”報道の真実とは?映画『でっちあげ』が描く衝撃事件

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ライター:#BANGER!!! 編集部
「死に方おしえてあげようか」福岡“殺人教師”報道の真実とは?映画『でっちあげ』が描く衝撃事件
『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』©2007 福田ますみ/新潮社 ©2025「でっちあげ」製作委員会
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綾野剛や柴咲コウら演技派キャストに背筋ゾクッ

福田氏によるルポはコミカライズもされているが、映画『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』では映像作品ならではの意図的なミスリードにより観客の先入観を煽る。それはまさに事件当時のメディアの報道に煽動された世論感情を再現するかのようで、加害教師を襲う様々な矛盾や理不尽に“気付かされる”とき、体中に戦慄が走る。

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』©2007 福田ますみ/新潮社 ©2025「でっちあげ」製作委員会

たとえば映画『怪物』(2023年)で描かれた巧みな“視点”の演出と同じく、観客を揺さぶる手法として大いに有効だ。その揺さぶりを大きく担う一人が、主人公・薮下誠一を演じる綾野剛。思わず背筋がゾッとするような表情には感嘆するし、“現実世界”における頼りなさ気な存在感とのすさまじいギャップ演技だけでも本作を観る価値がある。

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』©2007 福田ますみ/新潮社 ©2025「でっちあげ」製作委員会

そして、我が子を想う母親としての顔から能面のように醒めた表情にガラリと変わる柴咲コウにも恐怖させられ、週刊誌の記者を怪しく演じた亀梨和也、歪んだ義憤のもと薮下を追い詰める弁護士役の北村一輝など、全キャストが迫真の名演を見せる。

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』©2007 福田ますみ/新潮社 ©2025「でっちあげ」製作委員会

前述のとおり本作は実際の事件が基になっているので、正直ネタバレもなにもない。監督の三池崇史も「余計な演出をできるだけ排除し、冷静に作り上げたつもり」と語っているが、これまでサスペンス~アクションの傑作を数多く生み出してきた三池監督の「これは誰にでも起こり得る“人災”」という言葉が、教育という現場だけでなく人質司法などにも繋がる深刻な社会課題として、ゾクリと背筋を伝う。

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』©2007 福田ますみ/新潮社 ©2025「でっちあげ」製作委員会

『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』6月27日(金)より全国公開中

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『でっちあげ ~殺人教師と呼ばれた男』

2003年
小学校教諭・薮下誠一(綾野剛)は、保護者・氷室律子(柴咲コウ)に児童・氷室拓翔への体罰で告発された。
体罰とはものの言いようで、その内容は聞くに耐えない虐めだった。

これを嗅ぎつけた週刊春報の記者・鳴海三千彦(亀梨和也)が“実名報道”に踏み切る。
過激な言葉で飾られた記事は、瞬く間に世の中を震撼させ、薮下はマスコミの標的となった。
誹謗中傷、裏切り、停職、壊れていく日常。次から次へと底なしの絶望が薮下をすり潰していく。

一方、律子を擁護する声は多く、“550人もの大弁護団”が結成され、前代未聞の民事訴訟へと発展。
誰もが律子側の勝利を切望し、確信していたのだが、法廷で薮下の口から語られたのは―
「すべて事実無根の“でっちあげ”」だという完全否認だった。

これは真実に基づく、真実を疑う物語。

出演:綾野剛 柴咲コウ
   亀梨和也 / 大倉孝二 小澤征悦 髙嶋政宏 迫田孝也
   安藤玉恵 美村里江 峯村リエ 東野絢香 飯田基祐 三浦綺羅
   木村文乃 光石研 北村一輝 / 小林薫
監督:三池崇史
原作:福田ますみ『でっちあげ 福岡「殺人教師」事件の真相』(新潮文庫刊)
脚本:森ハヤシ

制作年: 2025