「拷問・横領・冤罪・誤捜査」韓国警察の不祥事と世論を動かす実録映画&フィクションならではの大胆クライム劇
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韓国における警察不祥事の歴史と影響
日本と同じく韓国の警察は数々の不祥事に見舞われてきた。汚職や捜査の誤り、冤罪など多岐にわたり、そのたびに社会に大きな影響を与えている。
1987年の朴鍾哲拷問致死事件では、ソウル大学の学生である朴鍾哲が警察の取り調べ中に拷問を受け死亡。この事件は民主化運動の引き金となり、韓国の政治体制に大きな変化をもたらした。事件の顛末は2017年の映画『1987、ある闘いの真実』でも描かれている。
2011年には、前警察庁長官や警務局長が特定業者から現金を受け取っていた疑惑が浮上し逮捕。この警察幹部汚職事件は組織の信頼を大きく損なった。 また、2022年10月にソウル・梨泰院で発生した雑踏事故も記憶に新しい。159人が死亡した痛ましい事故だったが、対応が不十分だったとしてソウル警察庁長官が業務上過失致死傷の罪で起訴されている。
不祥事を映画化→世論を動かし事件に影響
同時に韓国では、実際の警察不祥事を題材にした映画を多数制作してきた。例えば2009年の『イテウォン殺人事件』は、1997年に韓国・梨泰院のハンバーガー店で発生した殺人事件を基にしている。警察の捜査ミスや冤罪の可能性が描かれ、韓国社会に大きな衝撃を与えた。杜撰な捜査やミスで被疑者の逃亡を許した検察は、同作が公開されて世論が沸騰するまで再捜査すらしなかったという。
また、ソル・ギョングやカン・ドンウォン、キム・ナムジュらが出演した『あいつの声』(2007年) は、1991年に発生したイ・ヒョンホくん誘拐殺人事件を基にした映画。誘拐犯との電話のやり取りを通じて、警察の捜査の限界が描かれている。そして2024年の『市民捜査官ドッキ』は、2016年に起きた詐欺事件がベースになった。警察の対応に不満を抱いた中年女性が自ら捜査に乗り出すストーリーだ。
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