タイムループで政治的陰謀を止められるか?
タイムループもののセオリーどおり、序盤は主人公の周囲で起こる大小さまざまな出来事のディテールを映し、伏線を積み上げていく。その間にもちょっとした小ギャグをちょいちょい差し込んでくるのだが、そんな軽快な出だしからの衝撃展開に面食らっていると、やがて主人公カーリクはのっぴきならない状況に陥っていく。
『政党大会 陰謀のタイムループ』©V House Productions
シランバラサン演じるカーリクはカリスマのある堂々とした存在感で物語を引っ張るが、眼力がすさまじいS・J・スーリヤーはもはや第二の主人公レベル。彼が演じる悪辣警官ダヌシュコディはなんとも禍々しく、しかし物語の転換点となる“ある設定”がキャクター造形にも効いていて、どうにも憎めない滑稽さを醸し出している。
“1回目”の失敗を踏まえたカーリクの言動と周囲の対応を追うだけでスリルとワクワクがつのる、ループものの醍醐味をシンプルに味わえる構成。ポリティカル・アクションと謳ってはいるものの、政治的な陰謀に巻き込まれるサスペンス~クライムもの(+タイムループ)として先入観なく楽しむのが吉だろう。
『政党大会 陰謀のタイムループ』©V House Productions
とはいえ、『ヴィクラムとヴェーダ』(2017年/2022年)の冒頭にもアニメで描かれていたインド伝奇「屍鬼25話」や、時を司ると言われるカーラバイラヴァ神などが劇中の台詞に登場し、宗教の融和を意識したような深堀りしがいのある演出も散りばめられている(このあたりは識者による解説を仰ぎたいところ)。
『政党大会 陰謀のタイムループ』©V House Productions
それにしても、決して大予算とは言えない規模感ながら全く安っぽさを感じさせない監督の手腕は見事。中盤以降は修羅場を何度も経験したカーリクが覚醒したかのように、かなり激しいアクションも繰り広げられる。撮影ロケーションはもちろん生活・文化が垣間見える些細な描写も目に楽しく、インド映画門外漢もすんなり物語に入り込めるはずだ。
『政党大会 陰謀のタイムループ』は5月2日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開.
『政党大会 陰謀のタイムループ』
ドバイから友人の結婚式に参列するためにインドに帰ってきた青年カーリクは、偶然出会った警察官に拘束され、政党大会で暗殺テロを起こすよう強要される。カーリクは現行犯として射殺されるが、その途端に同じ日の朝に引き戻される。タイムループが起きていることを理解したカーリクは、テロを止めることを決意するが、タイムループは繰り返されていく……。
制作年: | 2021 |
---|
2025年5月2日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開