びっくりするほど面白い!「Z級」とナメてかかるべからず
トロマ映画のファンならば、同スタジオ制作の「『テラー・ファーマー』(1999年)にインスパイアされた」という謳い文句(※カウフマン御大いわく)に期待を覚えるだろう。『アイニージューデッド!』はあの作品ほどエログロ全開ではないがサイケ度では大幅に上回っていて、冒頭からトロマ印のホラーコメディとして見事なZ級ぶりを披露。どんな奇妙なことが起こるのか、秒でワクワクさせてくれる。
『アイニージューデッド!』©2020 Bad Taste Video LLC
映像もホームビデオのような質感なのだが、とはいえウィットな会話パートが驚くほどおもしろく、コンプレックスを抱えた主人公ドゥード(ボブ・ディランとロバート・スミスを足して岡山天音で割ったような見た目)のほか実在感のある登場人物たちにどんどん興味が湧いてくるだろう。超低予算ながら物語にはしっかり強度があり、いわゆる『カメ止め!』的な“映画製作を描いた映画”の構成(劇中映画パートと現実パートで画角を変えている)でも観客をぐいぐい惹き込んでいく。
『アイニージューデッド!』©2020 Bad Taste Video LLC
「創作の苦しみ」を味わった人は泣いちゃう? 意外な展開に驚き&涙
本作は観ているうちに様々な映画を思い出す。『血を吸うカメラ』(1960年)を想起する人もいれば、『マックス・ヘッドルーム』のポップさをミックスしたデヴィッド・クローネンバーグ作品、などと感じる人もいるかもしれない。また、ドゥードの前に現れる謎のクリーチャーはハンドパペットのようなチームさで、ドゥードが言うように『クリッター』(1986年)や『グーリーズ』(1984年)を彷彿とさせるし、『デッドリー・スポーン』(1983年)や『バスケットケース』(1982年)のようなキャッチーなグロさがイイ。
『アイニージューデッド!』©2020 Bad Taste Video LLC
メガホンをとったのは、本作が初の監督作だというロコ・ゼベンバーゲン。いまや超売れっ子監督となったジェームズ・ガンと同じくカウフマンを師を持つ=後輩にあたるわけだが、映画製作に苦悩する監督役を自ら演じ(若い頃のスピルバーグ似)、サイケデリックなホラー映像と内省的なストーリーを両立させてみせた。なお彼は映画『ザ・ゲスイドウズ』にドラマー役で出演しており、日本との縁も深い。
『アイニージューデッド!』©2020 Bad Taste Video LLC
中盤以降の狂気をはらんだ緊張感はすさまじく、しかし苦しい創作に挑む人ならば涙を禁じ得ないであろう、何とも言えないほろ苦い後味を残す。Z級ホラーと思って軽い気持ちで劇場に観に行っても、驚くほどの満足感を与えてくれるはずだ。
『アイニージューデッド!』は4月18日(金)よりシネマート新宿ほか全国順次公開