「私刑殺人」をネット世論が支持したらどうなる?”迷惑配信”も一本背負いのスカッと快作『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』
迷惑動画配信、不条理な司法制度、イジメ問題
そんな本作は、非道な行いをしながらも刑罰を免れた輩に私刑を与えている謎の人物<ヘチ>をめぐる、かなりシリアスなストーリーがメインとなる。相手が相手だけにドチョルたちを手放しで応援しづらくなる……かというとそうでもなく、再生数しか頭にない過激な動画配信者や不可解きわまりない司法制度に対する不満といった身近なテーマは、世界共通の“課題”として観客の拳もぐっと握らせる。
『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』©︎2024 CJ ENM Co., Ltd., Filmmakers R&K ALL RIGHTS RESERVED
しかし信頼関係が要なドチョルたちだけに内部のほころびには脆く、それはドチョルの家庭内の問題にもそのまま当てはまる。息子ウジンはスマホ中毒まっしぐらの年頃で、たびたび両親の頭を悩ませるのだ。そこにはウェブトゥーンでも頻繁にテーマとなるイジメ問題など観客の心がズキリと疼く(=感情移入する)要素が載せられていて、ここでも“いま実際に起こっている”社会問題であり他人事ではないのだという危機感を煽る。
辛ラーメン食べたい!心にチクリと棘を残しつつ「正義は勝つ」のカタルシスも
日本でも再生回数稼ぎのための私人逮捕動画などが問題となったが、韓国では金銭目的ではあるものの犯罪者逮捕に貢献し支持者も多かった動画配信者の収益機能が停止されたことが大きく報じられたりしていた。本作の“犯人”は動画や音声を巧みに操りつつ、自身の立場と民衆心理を利用しドチョルたちを追い詰めていく。
『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』©︎2024 CJ ENM Co., Ltd., Filmmakers R&K ALL RIGHTS RESERVED
大きな見どころの一つであるアクション面では、前作同様UFC(総合格闘技)がフィーチャーされているものの、今回は“転がる系”のグラウンドファイトが特徴。しかし、プロの試合のようにしっかり制御されていないと即、死に繋がるという危険性をしっかり見せるなど地味バトルに陥らない工夫も。そして最後の最後、エンドロール後のポスクレではあの……と、ここは観てのお楽しみ。
『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』©︎2024 CJ ENM Co., Ltd., Filmmakers R&K ALL RIGHTS RESERVED
というわけで本作を映画館で観て、大いに笑って手に汗握ったら、韓国料理店でジャージャー麺をもりもり食べよう。もしくは辛ラーメンを買って帰って、鍋から直食いするのもイイかも? キムチとネギ、卵も忘れずに!
『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』は4月11日(金)より全国公開
『ベテラン 凶悪犯罪捜査班』
ベテラン刑事ソ・ドチョルと、凶悪犯罪捜査班の刑事たち。法では裁かれなかった悪人が連続して殺された。不条理な司法制度に憤っていた世論は、私刑を下す犯人を善と悪を裁く伝説上の生き物“ヘチ”と呼び、正義のヒーローともてはやすようになる。新人刑事パク・ソヌが加わり、事件は解決に近づくかのように見えたが……。
監督:リュ・スンワン(『密輸 1970』、『ベテラン』、『モガディシュ 脱出までの14日間』)
出演:ファン・ジョンミン チョン・へイン アン・ボヒョン
制作年: | 2024 |
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2025年4月11日(金)より全国公開