女性CEOとインターン男子の「エロティックな駆け引き」を生々しくスリリングに描く『ベイビーガール』の衝撃
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中年世代の欲望と危機感、次世代のクレバーな目線
本作を観て、同じくキッドマン出演で激しい性描写でも物議を醸したS・キューブリック監督作『アイズ・ワイド・シャット』(1999年)を想起する人も多いだろう。四半世紀を経て激しいセックスシーンを披露したキッドマンに感嘆させられるとともに、ハリナ・ライン監督の「女性視点バージョンの『アイズ・ワイド・シャット』」という発言に膝を打つ。
『ベイビーガール』© 2024 MISS GABLER RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
ロミー(女性)視点を徹底しているが、もちろんサミュエル(男性)が邪悪な存在というではなく、新卒パリパリの男子らしい必死さ、脆さがベースにある。だからこそ社会的な頂点にいる女性との駆け引きに絶妙な滑稽さも生まれ、さらにサミュエルだけでなくロミーの娘や会社の部下(=次世代の若者たち)のリアリスティックな視点と醒めた許容性がファンタジックな方向に舵を取らせない。とくにソフィー・ワイルド演じるロミーの秘書エスメと、娘の一人を演じるエスター・ローズ・マクレガーに要注目だ。
『ベイビーガール』© 2024 MISS GABLER RIGHTS LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
荒っぽくリズミックな劇伴が随所に挟まれ、なんとなく『AKIRA』の芸能山城組を思い出していると、そこに“あえぎ声”や男女の吐息らしき音/声がサンプリングされていることに気づき、妙に納得。あるシーンで流れるLe Tigreの「Deceptacon」からも、監督の意図が汲み取れるかもしれない。とにかくレディコミ気分で観ると猛烈な平手打ちを喰らう、しかし不思議な包容力もある映画だ。
『ベイビーガール』は3月28日(金)より全国公開中
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