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ホロコースト生き延びた建築家の半生描く『ブルータリスト』移民の両親持つエイドリアン・ブロディが語る

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ライター:#佐藤久理子
ホロコースト生き延びた建築家の半生描く『ブルータリスト』移民の両親持つエイドリアン・ブロディが語る
『ブルータリスト』© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures
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「ブルータリズムというものが、いかに戦争の影響を負っているか」

――ラースロー・トートの建築は「ブルータリズム」と呼ばれる様式ですが、本作の経験はあなたの建築に対する視点を変えるようなものになりましたか。

以前から建築とインテリア・デザインに興味はあったんだ。だから少しは知識があったけれど、ラースローを演じたことで、さらに建築に対して洞察力をもたらされた。たとえば、ブルータリズムというものがいかに戦争の影響を負っているか。打ちっぱなしのコンクリートの荒々しさ、巨大な壁、ミニマルなシンプルさといったものに、戦争の傷跡を彷彿とせずにはいられない。もちろんこの映画のなかでも、ラースローの負った痛みが、彼の建築様式のなかに表れていると思う。

『ブルータリスト』© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures

――ラースローと彼のパトロンである著名な実業家ハリソン(ガイ・ピアース)の間柄はとても複雑です。この関係をあなたはどう解釈しますか。

ハリソンにとってラースローは、自分の権力や富をもってしても決して持ち得ないもの、「才能」に恵まれた人物であり、そこには愛と軽蔑と嫉妬が入り交じった複雑な感情がある。そしてハリソンはそんなラースローを所有したい、意のままにしたいという欲望があるんだ。

『ブルータリスト』© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures

――ガイ・ピアースとの共演は初めてですが、いかがでしたか。

彼は素晴らしい俳優で、人間としても素晴らしい人だ。彼とのコラボレーションはとても刺激的だったし、映画のなかと同じように刺激的な会話をすることができた。彼がこの映画で果たした役割はとても大きい。そのことを祝福したい。とにかく共演するのはわくわくするような体験で、機会があったらぜひまた共演したいと思う。

『ブルータリスト』© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures

「異なる人物を演じ、まったく違う旅を経験できる。そこにどっぷりと浸かりたい」

――あなたはこれまでとても多彩な役柄を演じてきましたが、個々の役柄から得られるものとは何でしょうか。

俳優の仕事の素晴らしい点は、まったく異なるキャラクターを演じられること。異なる時代、異なる物語、辛い話も美しい話も、それらを通してまったく違う旅を経験することができる。自分はそこにどっぷりと浸かりたい。それが自分自身を人間的にも文化的にも、とても豊かにさせてくれると思う。

『ブルータリスト』© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures

――先ほども話が出ましたが、『戦場のピアニスト』から20年以上が経ったいま、再びこのような個人的な繋がりを感じる作品に巡り合ったことは運命的とも言えると思います。ご自身でキャリアを振り返り、どのような感慨を抱かれますか。

本当にとても恵まれているとしか言いようがない。20年以上のあいだ、俳優としのみならず、人間としても成長できて、すべての経験がいまの僕を作りあげている。これまで長い旅のなかでやってきたひとつひとつのことが糧となって、今回のようなとても複雑でニュアンスに満ちた物語を演じることができたのだと思うし、ブラディのたぐいまれなビジョンをサポートすることができた。

そして自分がティーンの頃にこの仕事を始めたときと同じ愛、同じ情熱、同じ好奇心を仕事に対して持ち続けていることに、感謝の念を抱くよ。

『ブルータリスト』© DOYLESTOWN DESIGNS LIMITED 2024. ALL RIGHTS RESERVED. © Universal Pictures

取材・文:佐藤久理子

『ブルータリスト』は2月21日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

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『ブルータリスト』

才能にあふれるハンガリー系ユダヤ人建築家のラースロー・トート(エイドリアン・ブロディ)は、第二次世界大戦下のホロコーストから生き延びたものの、妻エルジェーベト(フェリシティ・ジョーンズ)、姪ジョーフィア(ラフィー・キャシディ)と強制的に引き離されてしまう。
家族と新しい生活を始めるためにアメリカ・ペンシルベニアへと移住したラースローは、そこで裕福で著名な実業家ハリソン(ガイ・ピアース)と出会う。
建築家ラースローのハンガリーでの輝かしい実績を知ったハリソンはその才能を認め、彼の家族の早期アメリカ移住と引き換えに、あらゆる設備を備えた礼拝堂の設計と建築を依頼した。
しかし、母国とは文化もルールも異なるアメリカでの設計作業には多くの障害が立ちはだかる。
ラースローが希望を抱いたアメリカンドリームとはうらはらに、彼を待ち受けたのは大きな困難と代償だったのだ――。

監督・共同脚本・製作:ブラディ・コーベット
共同脚本:モナ・ファストヴォールド
出演:エイドリアン・ブロディ、フェリシティ・ジョーンズ
   ガイ・ピアース、ジョー・アルウィン、ラフィー・キャシディ

制作年: 2024